稲盛和夫氏(京セラ名誉会長)の『生き方』(サンマーク出版)
「1万部売れればビジネス書としてはベストセラー」と言われる中国で,日本人経営者による書籍が27万部の大ヒットを記録している。稲盛和夫氏(京セラ名誉会長)の『生き方』(サンマーク出版)がそれだ。
中国人の平均所得は月収3万円程度。そうしたなかで「生き方」は26元(約400円)で販売されていていかにも高いだけに,まさに「異例の大ヒット」である。
「生き方」といえば,日本では04年8月に発売されて以降,現在までに発行部数75万部を達成しているロングセラー本。海外では,韓国,台湾,米国,メキシコ,ブラジルなど世界9カ国で翻訳され,中国では08年に発売された。
なぜ中国で売れているのか。稲盛氏が塾長を務める勉強会「盛和塾」事務局の池田成男氏によれば,稲盛氏が中国で注目され始めたきっかけは2007年,米フォーチュン誌の「世界の大企業ランキング500社」において,稲盛氏が設立した京セラ,KDDIの2社が同時にランクインしていたことだった。
また,中国を代表する実業家・アリババCEOのジャック・マーが,「師と仰いでいることが有名になった」(中国の出版社関係者)ことも人気に拍車を掛けた理由の一つだ。
人気は著作だけにとどまらない。今年6月には盛和塾が中国・北京に進出。11日から12日にかけて北京の国際会議センターで行われた勉強会には,日本の企業家250名が参加したのに対し,中国企業家の参加者は950名に達した。勉強会終了後には稲盛氏との写真撮影やサインを求める人が殺到し,「まるでアイドルが囲まれているような騒ぎになった」(池田氏)というから驚きだ。
「生き方」の中国版タイトルは「活法」。稲盛氏の別の著作も,シリーズとして販売。たとえば,『成功への情熱』(PHP研究所)は『活法2』,『人生の王道 西郷南洲の教えに学ぶ』(日経BP社)は『活法3』と題して,それぞれ8万部,10万部と部数を重ねている。稲盛ブームはとどまるところを知らないといえそうだ。
生き方 価格:1,785円(税込、送料別) |
◆
デフレの正体 藻谷浩介著 人口変動から解く日本の課題
日本の総人口は戦時期を除き、明治維新から一貫して増えてきたが、2005年を境に減少に転じた。減少の勢いは今後さらに強まる。著者は15~64歳の生産年齢人口に着目し,この層は総人口より10年早く減少局面に入ったとし,筆者は,この層を「消費年齢人口」と言い換えた方がぴったりくると指摘している。
日本がデフレに覆われて20年。グローバリゼーションの深化のなかで、その時々の経済運営のまずさがデフレからの脱却を遅らせた面は否めない。デフレの根幹に人口減少による市場縮小があるなら伝統的な政策だけでデフレを克服するのは遠い道かもしれない。
長寿化で相続を受ける人の平均年齢は今や60代後半に上がっている。相続を受けた高齢者も将来への不安がぬぐえず、その財産は死蔵されがちだ。 金融資産を甦(よみがえ)らせるには超高齢者から若い世代へ直接、移しやすくする策が鍵を握る。いわば相続の「中抜き」だ。それが軌道に乗せられれば、年金などの世代間格差も和らぐのではないか。