石川先生とレッスンのお約束をした時の話。
10時からでお願いしたのですが、先生から念押しのように一言。
「1分たりとも早く来ないでね。」
わかってますとも(笑)
思わず、懐かしい思い出が頭をよぎり、噴き出しそうになりました。
何を思い出したかというと、学生の時の話。
私たちのほとんどは、約束の時間の10分~15分前に玄関前で待機、時計の針が約束の時間になったと同時にチャイムというのが当たり前と教わってきました。
親友がトランペットの先生のレッスンの伴奏で、同じようにレッスン室の前で待機、時計の針が0になったと同時に、トランペットの子と一緒にノックして部屋に入ったのに、扉を開けた瞬間に
「1分遅い!!!」
と、ものすごい勢いで怒鳴られたんですって。
先生の腕時計は1分進んでいて…
その門下では、○○先生の時計を盗め!というのが、合言葉のようになっていて、怒鳴られないためには常に先生の時計を盗み見しとけ、という門下あるある話(笑)
ちなみに、「飛べ、飛べ飛べ、〇〇ちゃ~ん♪」という門下ソングのある先生です!
でもこれ、特別、理不尽な話…っていうわけではないんです。
自分が現場で働くようになってよくわかることなんですが、音楽家にとって時間は命。
玲子先生には、「1分1秒も無駄にしている時間はないのよ」と言われ続けていたし、指揮者の矢崎彦太郎先生にも「限られた時間の中で最大限の成果を出すのがプロの仕事」と教わりました。
音楽家は、稽古や合わせといった本番以外の仕事でも、現場に出たらそこでもう演奏をしなければいけません。
それ以前に自分の練習をしておかなければ、仕事にならないのです。
レッスンにしても、授業にしても、レクチャーにしても、膨大な資料を読み込み、調べ、考え、練習もして、現場に出る。
時間はいくらあっても足りません。
私ですら、レッスン前は最低30分、基本的には1時間お迎えの準備の時間を作ります。
現場に出るときも、指定時刻の1時間前には現場に着いて、コーヒーを飲みながら30分くらいの準備時間をとってから部屋に入ります。
今から自分のすべきこと、相手のこと、求められていること、前回のことなどを考え、その場にあった対応を心がけます。
ほとんど無意識にこういう切り替えをしているので、そのためにはちょっとした時間が必要なのです。
音楽家にはいろんな顔があります。
演奏は内なる自分と見つめあう時間。
自分ですら知らない新たな自分を探っていくことになります。
誰かと会って話をした後は、最低でも1時間は間を置かないと、とても自分の練習はできません。
自分と向き合うって、実はとても難しい。
さて、話が逸れましたが、音楽家にレッスンして頂くということは、貴重な時間を自分のために割いていただいて、その先生の様々な研究と経験の成果を分け与えていただいてるということ。
つい甘えが起きてしまうこともありますが、これだけは絶対に忘れてはいけない、といつも自分に言い聞かせています。
たくさんの先生方に支えられてここまで音楽をやってくることができました。
自分なりの成果が出せるよう、今年はもっと本気で頑張ります。