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リンムーの眼 rinmu's eye

リンムーの眼、私の視点。

プロパガンダについて考えた

2007-03-27 | Weblog
20世紀は、「戦争の世紀」とも「映像の世紀」とも言われる。
「戦争」と「映像」について、共に考えさせられる展覧会を、飯田橋の印刷博物館で見た。



「モード・オブ・ザ・ウォー」展は、第一次世界大戦期アメリカのプロパガンダ・ポスターを紹介・展示する展覧会だった。
第一次世界大戦は、「戦争の世紀」の原点であり、すでに映像イメージはプロパガンダとして利用された。
モダニズムを体現し、大量消費される色鮮やかなポスターが放つメッセージは、力強く明確である。

「ENRIST(入隊せよ)」
「I WANT YOU FOR U.S. ARMY(米軍はあなたを求めている)」
「IF YOU WANT TO FIGHT! JOIN THE MARINES」(もし君が戦いたければ!海軍に入ろう)

このように呼びかける言葉が、ポスターにシンプルで堅牢なレタリングで添えられている。
一見、現代に通ずるポップなポスターのようだが、発しているメッセージは戦意高揚である。現在の視点でみると、なんともアイロニーに満ちた表現に見える。
軍服を着たブロンド女性のポスターがあった。彼女が「I WANT YOU」と呼びかける。
プロパガンダは性的イメージをも取り込んで、“誘惑”しようとする。

「戦争の世紀」を牽引したのはアメリカだが、アメリカは自国に戦争を持ち込んでいない。自国を戦地としていないアメリカの戦場イメージは、「海の向こうの戦争」を象徴的に表現した例が少なくない。アンクル・サムや白ワシなど、意識化のナショナリズムがシンボリックに描かれる。
バーチャルな戦争イメージは、現代にも通ずるものだ。
私たちは、「海の向こう」の映像イメージをTVやWEBを通して享受しているが、それが何らかのフィルターがかかった映像イメージであることを意識しなければならない。
9・11の映像を、私たちが象徴的なイメージとして共有しているのは、なぜだろう?
そのことに疑問を持たないのは、あるいは危険なことなのかもしれない。
21世紀に引き継がれた「戦争」と「映像」の課題について、私たちは再考してみなければならないだろう。

リンク;
東京大学大学院情報学環アーカイブ 第一次世界大戦期プロパガンダ・ポスター コレクション