「…じゃあ、セルビアにするか…」
社内で展開さている、ワールドカップ優勝国を当てる賭け。仕事が暇な状況を有効活用し胴元になっていたおれは、巧く職権を乱用し、8人参加の中で3番目の指名権を得ていた。ブラジル、スペインと鉄板優勝候補が指名されていく中、おれは1巡目にイングランド、そして2巡目にセルビアを選択。生まれた日本と育ったアメリカの戦い含め、おれはワールドカップ開幕を興奮しながら待っていた。
「…待ち遠しいな…仕事が暇だから、毎日早く帰って2試合くらい観れるし…」
「あ、ちょっと来てくれる。」
ほぼ毎試合観ようという思惑を抱え、ワールドカップ開幕後の至福の時を夢想している時、おれは上司に呼び出しを喰らった。おい待て、今各国代表のメンバー表を見ていたんだ…と言う口から出掛かった文句を胸にしまい、おれは上司の元へ向かった。担当している仕事の都合上ここ数ヶ月ずっと暇だっただけに、もしかしたらまたリストラ…とも思ったが、まぁそれはそれだ。逆に来週からのワールドカップは、全試合堪能できる。
「…どうしました?」
「うん、ちょっと来週から出張行ってもらおうと思ってて。」
「…ん?」
「まずはドイツで、その次の週は中国で、で次の週にスウェーデン。」
「…え?」
「なんで来週から3週間なんだけど、お願いね。」
「…」
ここまで数ヶ月も放置プレーで暇を持て余していたのに、ワールドカップの開幕に合わせて海外出張とは…それも、約4週間のワールドカップ期間のうち、しっかりと3週間も被せて来るとは…その極悪非道さに、驚いた。
家族もいない。彼女もいない。友達もいない。趣味はなし。仕事後のCoCo壱カレーとサッカーだけが人生の唯一の楽しみのおれから、なんと4年に一度の待ちに待ったワールドカップ期間中に、両方とも奪い去るとは…その理不尽さに、おれは涙目になりながら、目の前の上司に訴えた。
「…はい、喜んで…」
…こんな時にも、おべんちゃらが無意識に出てしまうとは。おれは悔しさと悲しみを押し殺し、海外出張の準備に入った。良いさ、海外でナンパしまくってやる、と開き直ったのは、言うまでも無い。
とは言うものの、チキンハートで一回も女性に声を掛けられたためしが無いのは、これまた言うまでも無い…
来週から、海外出張だ。更新はうちのジュダー(カメ)に任せるので、あしからず。(ニータンにも出来るので、問題無いだろう)
【続く】
Reo.
社内で展開さている、ワールドカップ優勝国を当てる賭け。仕事が暇な状況を有効活用し胴元になっていたおれは、巧く職権を乱用し、8人参加の中で3番目の指名権を得ていた。ブラジル、スペインと鉄板優勝候補が指名されていく中、おれは1巡目にイングランド、そして2巡目にセルビアを選択。生まれた日本と育ったアメリカの戦い含め、おれはワールドカップ開幕を興奮しながら待っていた。
「…待ち遠しいな…仕事が暇だから、毎日早く帰って2試合くらい観れるし…」
「あ、ちょっと来てくれる。」
ほぼ毎試合観ようという思惑を抱え、ワールドカップ開幕後の至福の時を夢想している時、おれは上司に呼び出しを喰らった。おい待て、今各国代表のメンバー表を見ていたんだ…と言う口から出掛かった文句を胸にしまい、おれは上司の元へ向かった。担当している仕事の都合上ここ数ヶ月ずっと暇だっただけに、もしかしたらまたリストラ…とも思ったが、まぁそれはそれだ。逆に来週からのワールドカップは、全試合堪能できる。
「…どうしました?」
「うん、ちょっと来週から出張行ってもらおうと思ってて。」
「…ん?」
「まずはドイツで、その次の週は中国で、で次の週にスウェーデン。」
「…え?」
「なんで来週から3週間なんだけど、お願いね。」
「…」
ここまで数ヶ月も放置プレーで暇を持て余していたのに、ワールドカップの開幕に合わせて海外出張とは…それも、約4週間のワールドカップ期間のうち、しっかりと3週間も被せて来るとは…その極悪非道さに、驚いた。
家族もいない。彼女もいない。友達もいない。趣味はなし。仕事後のCoCo壱カレーとサッカーだけが人生の唯一の楽しみのおれから、なんと4年に一度の待ちに待ったワールドカップ期間中に、両方とも奪い去るとは…その理不尽さに、おれは涙目になりながら、目の前の上司に訴えた。
「…はい、喜んで…」
…こんな時にも、おべんちゃらが無意識に出てしまうとは。おれは悔しさと悲しみを押し殺し、海外出張の準備に入った。良いさ、海外でナンパしまくってやる、と開き直ったのは、言うまでも無い。
とは言うものの、チキンハートで一回も女性に声を掛けられたためしが無いのは、これまた言うまでも無い…
来週から、海外出張だ。更新はうちのジュダー(カメ)に任せるので、あしからず。(ニータンにも出来るので、問題無いだろう)
【続く】
Reo.