「…ふっ、やはり今年も、一人でクリスマスか。」
12月24日の約1週間前から、おれは諦めムードに入っていた。今年も、また彼女をつくるのを忘れていた…いや、正直に言おう、今年も努力したが、彼女をつくれなかった。
「…ふっ、おれみたいな男に、彼女ができるわけないからな…」
だが、おれは心配していなかった。もう5年も彼女いなくて馴れているから…ではない。先日観たテレビ番組で、一人でクリスマス・イブをすごす方法を、教わっていたからだ。その番組によると、クリスマスを一人ですごすなら、まずは23日の夜から徹夜でゲームをプレイ。そして、そのまま平日の24日は会社へ出勤し、睡魔と必至に戦う。帰宅したら、眠気に負けて即爆睡。一人のイブを味わわず、起きて正気にかえったらもう25日だ。イブのカップルを観る必要も無く、一人悶々とする事もない。さすがテレビ、素晴らしいアイデアだ。
おれは、さっそく23日夜からPS3のサッカーゲームであるウイニングイレブンを、せっせとプレーしはじめた。日が昇る頃には、もうサッカーの試合内容などどうでも良くなったが、徹夜は成功した。
「…さて、出社でも…待てよ…おれは今、冬休み中ではないか…!ぬかったわ!!」
本来なら、ここで出社して、会社で睡魔と闘うはずだが…予定も無いのに、無駄に見栄を張って有給休暇を取得していた事を、忘れていた。
「…しかたない、副業に行くか…」
おれの副業…それは、献血だ。おれは早速家を出ると、献血前に朝食を食べようと、ミスター・ドーナツへと向かった。おれは、このミスドで店員の一人に一目惚れしてから、週末にここで朝食を摂るのを習慣にしていた。この日は週末ではなく、ましてや休日ではなかったが、そのお目当ての店員は、いた。
「…ふっ、君を観れた事が、おれにとっての最高のクリスマスプレゼントだ。」
そう独り言を、彼女に聞こえないように細心の注意を払いながら呟き、おれは彼女を凝視しながら、朝食を終えた。
献血所に着くと、早速問診だ。
「今日はお食事は何時頃に食べられました?」
「…ついさっきだ。」
「睡眠時間は、何時間ですか?」
「…寝ていない。」
「えっ!睡眠とられていないと、献血は断っているのですが…」
「………あぁ、睡眠か、6時間だ。」
おっと、忘れていた。しっかりとした睡眠と食事をとっていないと、気分が悪くなる可能性があるので、献血は出来ないのだった。おれは、睡魔に負けそうでグロッキーになりながら、必至にお目々パッチリ状態のフリをした。
「…ふっ、この血が、おれからのクリスマスプレゼントだ。」
今度は、はっきりと他の人に聞こえるように、ハードボイルドを心掛けて、言ってみた。だが、完無視されたのは、言うまでも無い。献血30回記念の粗品をクリスマスプレゼント代わりに貰い、おれはイブを睡眠してすごす為に、帰宅の途についた。
チキンも無い。ケーキも無い。そして、彼女もいないイブ。それでも大丈夫だ。夢の中で、全てが叶うから。
そして、おれは、一人のイブを前に、深い睡眠に入った。来年は、もっと良い一人のイブのすごし方を考えよう、とりあえずチキンは喰いたいかな、と思ったのは、言うまでも無い。
【続く】
Reo.
12月24日の約1週間前から、おれは諦めムードに入っていた。今年も、また彼女をつくるのを忘れていた…いや、正直に言おう、今年も努力したが、彼女をつくれなかった。
「…ふっ、おれみたいな男に、彼女ができるわけないからな…」
だが、おれは心配していなかった。もう5年も彼女いなくて馴れているから…ではない。先日観たテレビ番組で、一人でクリスマス・イブをすごす方法を、教わっていたからだ。その番組によると、クリスマスを一人ですごすなら、まずは23日の夜から徹夜でゲームをプレイ。そして、そのまま平日の24日は会社へ出勤し、睡魔と必至に戦う。帰宅したら、眠気に負けて即爆睡。一人のイブを味わわず、起きて正気にかえったらもう25日だ。イブのカップルを観る必要も無く、一人悶々とする事もない。さすがテレビ、素晴らしいアイデアだ。
おれは、さっそく23日夜からPS3のサッカーゲームであるウイニングイレブンを、せっせとプレーしはじめた。日が昇る頃には、もうサッカーの試合内容などどうでも良くなったが、徹夜は成功した。
「…さて、出社でも…待てよ…おれは今、冬休み中ではないか…!ぬかったわ!!」
本来なら、ここで出社して、会社で睡魔と闘うはずだが…予定も無いのに、無駄に見栄を張って有給休暇を取得していた事を、忘れていた。
「…しかたない、副業に行くか…」
おれの副業…それは、献血だ。おれは早速家を出ると、献血前に朝食を食べようと、ミスター・ドーナツへと向かった。おれは、このミスドで店員の一人に一目惚れしてから、週末にここで朝食を摂るのを習慣にしていた。この日は週末ではなく、ましてや休日ではなかったが、そのお目当ての店員は、いた。
「…ふっ、君を観れた事が、おれにとっての最高のクリスマスプレゼントだ。」
そう独り言を、彼女に聞こえないように細心の注意を払いながら呟き、おれは彼女を凝視しながら、朝食を終えた。
献血所に着くと、早速問診だ。
「今日はお食事は何時頃に食べられました?」
「…ついさっきだ。」
「睡眠時間は、何時間ですか?」
「…寝ていない。」
「えっ!睡眠とられていないと、献血は断っているのですが…」
「………あぁ、睡眠か、6時間だ。」
おっと、忘れていた。しっかりとした睡眠と食事をとっていないと、気分が悪くなる可能性があるので、献血は出来ないのだった。おれは、睡魔に負けそうでグロッキーになりながら、必至にお目々パッチリ状態のフリをした。
「…ふっ、この血が、おれからのクリスマスプレゼントだ。」
今度は、はっきりと他の人に聞こえるように、ハードボイルドを心掛けて、言ってみた。だが、完無視されたのは、言うまでも無い。献血30回記念の粗品をクリスマスプレゼント代わりに貰い、おれはイブを睡眠してすごす為に、帰宅の途についた。
チキンも無い。ケーキも無い。そして、彼女もいないイブ。それでも大丈夫だ。夢の中で、全てが叶うから。
そして、おれは、一人のイブを前に、深い睡眠に入った。来年は、もっと良い一人のイブのすごし方を考えよう、とりあえずチキンは喰いたいかな、と思ったのは、言うまでも無い。
【続く】
Reo.