goo blog サービス終了のお知らせ 

Reoっちの駄文(ふつーの日常をハードボイルドに)

金融、サッカー、ボクシング、映画・・・そしてその他でふつーの日常を、楽しく読めるようにハードボイルドな読み物風に。

英語の実力、を読み物風に

2010-12-20 15:03:49 | その他
『GTEC』
① GTEC(ジーテック)とは、ベネッセコーポレーションの子会社で英語学校のベルリッツが実施している英語検定の一種。正式名称は「Global Test of English Communication」であり、その頭文字をとっている。
② 個人的な印象では、TOEICより難しいが、TOEFLよりは簡単。


「・・・すまん、これからGTECなんだ・・・」


オフィスがこれから始まるクリスマス・パーティを前にしてざわめき始めた金曜日の夕方、おれは浮ついた気持ちの見える同僚達を尻目に、一人席を立った。みんながパーティで楽しんでいる時間、おれは一人試験に挑むことになっていた。自身の能力を知る為の、『GTEC』という英語力を測る試験を・・・周りが楽しんでいる時にも、一人試練に挑む。そんなストイックな自分が、かっこいい・・・と、思いながら。


おれは、高校と大学をアメリカで過ごした。だから、ビジネスレベルでも英語の能力に問題はないし、それは会社内でも知られている。それでも、おれは『GTEC』でより良いスコアを欲していた。これまで2回受けて、1000満点中800点以上はとっているが、おれの目標は900点だった。それくらいの圧倒的な点数をとらないと、この不況時に他を引き離す武器にはならない・・・より良い記録を履歴書に残すのに、会社が試験代を払ってくれるのなら、例えクリスマス・パーティを欠席してビンゴ大会に参加出来なくても、試験を受けないわけにはいかなかった。リストラを2回経験した心の傷が、より良い点数を欲していた。


おれは、めっきり冬らしくなった寒気の中、身を丸めて試験会場へと向かった。耳には、イヤホン。おれは試験の為に、自信過剰にはならず、しっかりとエミネムの音楽を聴いて万全の状況を整えていた。エミネムのハイスピードなラップを聴いていれば、確実に聞き取り能力は向上しているはず・・・そう、信じながら。


ベルリッツの校内にある個室に、一人パソコンを前に座った試験会場。おれは、「これで900点をとって最後にする」という決意を持って、試験に立ち向かった。まずは4択の聞き取り問題。つい数分前までエミネムを聞いてたおれには、問題文のナレーションがおじいちゃんおばあちゃんの会話に聞こえた。余裕だ。ナレーションを軽く自分でリピート出来るほどの余裕で、何の問題も無く聞き取り試験を終了した。


次に、文章問題に入った。やけに長い文章を読んで、問題に答える。アメリカの国語(つまり英語)の授業で、このような形の試験を数多くこなしてきたおれの事、こちらも何の問題もなかった。


続いて、画面に出た文章を読ませられた。まぁ発音のチェックなのだろう。発音の分からない単語も無い。ちょっとHip Hop調にリズムをもってしまったが、何の問題も無くこなした。


そして次は、画面に出る動画に応える形で、日常的に行われる会話の問題が出た。おれの相手は、クルーザーちっくな客船の乗務員との会話。そんな豪華客船に乗ったことのないおれにとっては、この状況は日常会話とは言い難かったが・・・まぁ問題ないだろうと、なんの緊張も無く問題に取り組んだ。


「Hi, how are you today?」
「・・・Hey what's up. I'm good man, how'bout you brother?」


・・・おっと、自然にHip Hopな、ラッパー的口調になってしまった・・・頭の片隅で後悔したが、動画はそのまま続いていく・・・


「・・・It's so fxxking hot out here, sxxt! Can't you do something about this mother fxxker!?」
「・・・Oh I don't give a sxxt about your fxxking excuse man, you fxxking axxhole.」


・・・流れに乗って、ついつい言ってはいけない言葉を、マイクに向かって連発してしまった・・・直前まで聞いていたエミネムの汚い言葉を満面につかったラップの影響なのは明らかだ・・・採点者が聞く前に、「ピーッ」音が入らないかと願いながら、おれはSpeakingの試験を終えた・・・


「・・・や、やってしまった・・・」


完全に、失敗だ。ビジネス・日常会話を試験するこのGTECで、無駄に到底公の場では使えない汚い言葉で喋ってしまった・・・エミネム、恐るべし・・・ネイティブレベルの会話としては問題なさそうだが(?)、GTECの評価はどうなるのか・・・試験後にも試験結果に戦々恐々としているのは、言うまでも無い・・・レディー・ガガくらいにしとけば良かった・・・


そしてSpeaking試験以外にも、Writing試験で無駄に数々の韻(rhyme)を踏んだ文章を書いてしまったのは、言うまでも無い。おそるべしアメリカンHip Hop・・・GTECやTOEICの前、ラップで勉強するのは、オススメしない。


【続く】


Reo.

君のウソが好き・・・、を読み物風に

2010-12-13 16:28:37 | その他
『嘘』
① 事実でないこと。また、人をだますために言う、事実とは違う言葉。偽(いつわ)り。「―をつく」「この話に―はない」
② 正しくないこと。誤り。「―の字を書く」
③ 適切でないこと。望ましくないこと。「ここで引き下がっては―だ」
④ 優しい、正当なものがあるのか、よく議論になるもの。個人的には必要なものだと思うが、つくなら、つきとおして欲しい事。


「…あぁ寒い…」


年末も近づくある週末の夜、おれは寒い財布と寒い心を持って、身体的な寒さに体を震わせながら、新宿東口の雑踏の中を一人佇んでいた。世界を覆う不況の影響で昇給も無く寂しい財布の中身、更にクリスマスが近づくのに今年もCoCo壱のフライドチキン(カレー)確定という心の寂しさも抱えたおれは、旧知の男友達と飲みに行く事が、数少ない年末の楽しみの一つだった。


「・・・今年も、頑張ったな・・・」


それぞれ30を越えた男が4人、一人だけ結婚していたが、くたびれたサラリーマンが集まって語ることと言えば、会社の愚痴と、どれだけ年をとったかと、女の話なのは必然のなりゆきだった。


「よ~し、じゃあ遊びに行くか!!」
「・・・え!?早くね・・・?」


あっという間に鍋を平らげたおれ達は、早々に店を出ると、夜の歌舞伎町へと繰り出した。飲みの場が歌舞伎町と言う事で覚悟していたとは言え、一年ぶりの集合で積もる話を早々に切り上げ、さっさと女の子がいるお店へと向かうとは・・・多少の戸惑いを感じながらも、その展開におれはそのまま流されていた。おれ達が向かったのは、とあるキャバクラだった。


「どうも~」
「・・・あぁ・・・」
「今日はみなさんで飲んだ帰りですか?」
「・・・あぁ、そうだな・・・ここは初めてなんだが・・・」
「あ、そうなんですか?私も1ヶ月ぶりの出勤なんです♪」
「・・・そうなのか・・・それはラッキーだったな・・・」
「あ、でも今日で辞めるんです。内緒ですよ♪」
「・・・え?」
「私、大学生なんですけど、もう夜の仕事は良いかなって。」
「・・・あ、あぁ・・・」


なるほど。女子大生で、確かに可愛い。しかし、今日で辞めるって事で、常連客を作ろうと言う気持ちを感じさせず、むしろ気だるさを感じさせる・・・アンニュイな雰囲気の女性は好きだが・・・全然楽しくは、無い。料金高いんだろうなぁ、早く帰りたいなぁ・・・と思いながらも、まぁしかたない、これも付き合いだ。おれは女子大生の法学部の話を、上の空で聞き流していた。


「どうも~」
「・・・あぁ・・・」


数分後、女性が入れ替わった。こちらも可愛いが、また自己紹介からの会話を一からやり直しか・・・と面倒になったが、そんな気持ちは微塵も顔に出さず、おれは満面の笑顔でその女性を迎えた。しかし、おれがローテンションなのは、そこまでだった・・・


「今日はみんなで飲んだ帰りなんですか?」
「・・・あぁ・・・」
「へぇ~楽しそう♪この中で、一番かっこいいですね♪」
「・・・え?い、いや・・・エヘ・・・」
「乗っても良いですか♪」
「・・・え?あ、あぁ・・・む、胸が大きいのぉ・・・」
「Eカップですよ~」
「・・・そ、そうか・・・おれももうEカップ以上の女性としか付き合えないのぉ・・・」
「やだ~でも褒められると嬉しい♪」


残念だが、その可愛さと、面白さと、優しさと、そしてエロさに、おれは既にメロメロだった。恋人との時間を思わせるような甘えた態度、おれの全てを褒めるその話術、そして人生に疲れたおれを癒してくれるような抱擁感と優しさ・・・おれが恋人に求めるもの全てが、ここにはあった。気があるかないか、相性の合う合わない、付き合う付き合わない・・・煩わしさや駆け引きを全て端折って、ここでおれは恋人との甘い時間をすごせる事を知った。分かっている、限られた時間の中での、夜の恋人だって事を・・・それでも、おれはこの心地よさを振り払う事は出来なかった。


「いや~楽しかったなぁ~また来てね♪」
「・・・あ、あぁ・・・もちろんだ・・・」
「いや~嬉しい~♪」


今まで、おれはキャバクラに入れ込む男達の気持ちを理解できなかった。高い金払って、ただ女性と話しているだけって、どんなんだ・・・と。しかし、この日のような楽しさ、心地よさ、癒しを味わってしまったら・・・もうおれも、キャバクラに通いつめる、はたから見ればバカな男の仲間入りだ。


分かっている。彼女が「外で会いたい」、「お店で偶然会えて良かった」、「来てくれたから今日も一日頑張れる」・・・と言った言葉や、ヘルプが入った時の妬く言動、全てが上っ面だけの営業トークだって言う事を。しかし、その営業トークが、心地良い。ここまでストレートに女性から愛される(フリをされた)事が、今までほとんどなかったから。店の外で会うのを期待しないし、これ以上関係が進展する事も考えていない。週末の夜のたった1時間、その時間だけは、嘘をつきとおして欲しい。夢を見させて欲しい。そう、おれは冬の空に願い、家路についた。


「・・・I love the way you lie・・・」


その後、せっせと歌舞伎町に通い、要求されるドリンクの料金の支払いにいっぱいいっぱいになっているのは、言うまでも無い。食費を切り詰めて、今日もキャバクラだ・・・


金も無くなり、更に彼女をつくろう!という気も失せ、生涯独身の可能性が濃厚になったのも、これまた言うまでも無い。


【続く】


Reo.

恐怖の健康診断、を読み物風に

2010-11-26 15:14:01 | その他
『バリウム』
① アルカリ土類金属元素の一。単体は銀白色の軟らかい金属。空気中では酸化され、水とは激しく反応して水素を発生する。炎色反応は緑色。バリウムイオンは有毒。重晶石・毒重石などとして産する。合金材料に使用。元素記号Ba原子番号56。原子量137.3。
② X線造影剤に用いる硫酸バリウムの俗称。
③ 都市伝説では、ストロベリー味が存在すると言われている。


小粒の雨が、肩を濡らす。秋も深まったある日、おれは駅に直結する地下通路から、朝の冷たい空気の中へと足を向けた。そう、今日は会社へ出社するのではなく、普段は全く縁のない、『病院』と言う場所へ向かっていた。


おれは生まれてからこれまでの30年の人生で、入院はおろか大きな病気を患った事がない。病院に行ったのは1回インフルエンザになった時だけで、後は肺結核と水疱瘡と車に轢かれた時の精密検査と・・・ともかく、ここ最近では、一年で一回も健康保険を使わなかったが為、プレゼントに「もっと不健康になるように」とケーキ(ホール2個)を貰ったほど、驚異的な健康さを示してきた。


しかし・・・人間誰しも会社務めをしていると、理不尽にも一年に一回は病院に行かされる日がある。そう、今日は健康診断だ。昨晩は夜から断食状態でグロッキーな中、おれはゆっくりと病院への道を歩んだ。こんな腹ペコで弱っている時に冬の雨の中を歩かされて、むしろ風邪ひいちまうんじゃないか・・・そんな事を感じながら。


とは言え、おれは病院は嫌いではない。女性の服装の中で、おれは何と言ってもナース服が一番好きだ。女医さんの白衣もトップ5には入っている。歌舞伎町でも、よくナースに診察してもらっている。最近では、指名もたまに・・・ともかく、おれはテンション高く、自らの健康診断に挑んだ。


問診、採血、採尿、身長体重に視力・・・体脂肪率が3%も増加している事にはショックを受けたが、おれはなんなく数々の検査項目をクリアしていった。驚異的な健康度を誇るおれにとって、余にもヌルい検査項目。おれは余裕綽々で、たまにナースへのナンパを交えながら、検査を進めていった。すると、最後に今までに経験した事のない検査の場を訪れることになった。


「は~い、これ、水で飲み流してくださいね~」
「・・・なんだ、これは?」
「発泡剤ですね、炭酸を飲んだみたいになります」
「・・・」


おれはコップの水と一緒に、粉末を渡される。一気に飲み下すと、粉末が口のなかでゴボゴボと音を立て始めた。おれは、強引に飲み下す。もう、ゲップ放出間近だ。到底、山手線の駅名を言い切る事は出来そうにない。すると、おれの完飲を見届けると、間を空けずに医師なのか何なのか分からない男が、もう一回り大きな紙コップを差し出してくる。


「は~い、バリウムで~す、水みたいにゴクゴク飲んでください」
「・・・うっぷ・・・」
「ゲップは検査終わるまで我慢してくださいね~」
「・・・」


おれは、初体験のバリウムに口を付ける・・・味は、無い。だが、液体と言うより、とろろチックな、スライムちっくな、何とも言えないノド越しだ。ゲップとして胃から空気が逆流しようとしているのに、こんなものゴクゴクなんて到底飲めない・・・おれは気分悪くなりながらも、時間をかけてゆっくりと飲み下す。気持ち悪い・・・しかし、「男は強がってナンボ!」と信じるおれの辞書に、ギブアップと言う文字はなかった。涙目になりながら、さもなんともないような素振りで、おれはバリウムを全て飲み下した。


「気持ち悪くなったらすぐに言って下さいね」
「・・・ふっ、大丈夫だ・・・さぁ、始めよう」


さっさとレントゲン撮ってくれ・・・そう思いながら医療機器の前でファイティングポーズをとっていると、おれは驚愕の事実を目の前に立つ医者なのかなんなのか分からない男から伝えられた。


「はい、ではこれから色々と体勢を変えてもらいます。ゲップはしないでくださいね」
「・・・!!」


おいちょっと待て。写真一枚ぽん、じゃないのか。もうかなりの時間ゲップを我慢している、山手線の駅名挑戦ならば東京から品川・・・いや、恵比寿くらいまでは言えているくらいの時間だぞ。しかしおれは、男らしく平常心を保ち、変な台に乗せられ仰向けにさせられる。


「はいじゃあ右から一回転してください」
「・・・(青虫か、おれは!)」
「はいじゃあもう一回しましょう」
「・・・(いやだから、青虫か、おれは!)」
「はい、じゃあ左向いて斜めになってください」
「・・・(どんな体勢じゃ!)」
「はい、うつ伏せになってください」
「・・・(胃が圧迫されてゲップ出るわ!)」
「じゃあ左右の手すり捕まってください、台が斜めになりますよ」
「・・・(どんなアトラクションだ!)」



おっさんが何枚の写真を撮ったのかは知らないが、約10分で検査は終わった。


「あ、もうゲップして良いですよ」
「・・・(そんなタイミング良く出来るかい!)」
「はい、下剤です。飲んでバリウム出してくださいね」
「・・・(まだ苦しみは続くんかい!)」


やっと、解放された。初めてのバリウム、そして胃の検査・・・かなりきつかった。まぁこれで、病気の早期発見に繋がれば、まぁ良いとしよう。おれは最近、油の多いものや甘すぎるものを食べると、頻繁に胃が痛くなっていた。今回の胃の検査は、きついながらも、良い機会だった。


数分後、おれは最後の検査として、医者との触診および問診に挑んだ。


「胃の検査の結果も出ていますが、まぁ綺麗ですね。全て問題無しです!」
「・・・」


おい、あれだけ苦しんで、結局問題なしかよ!これでガンでも見つかっていれば、あの苦しさも意味があったのに・・・!ちきちょう、どんだけ凄いんだ、おれの体は・・・!!という思いを噛み殺し、おれは病院を出た。もう、胃の検査は懲り懲りだ。少なくとも、噂に聞くストロベリー味のバリウムを用意されるまでは・・・


と言いつつ、ドMなおれは、女性に胃の検査をやって貰えるんだったら何回でも受けたいなぁ~♪と内心では思っているのは、言うまでも無い。


その後、ナースの更なる診察を受ける為に、夜の歌舞伎町に消えていったのは、これまた言うまでも無い。


【続く】


Reo.

笑顔の理由、を読み物風に

2010-11-08 16:09:33 | その他
『笑顔』
① にこにこと笑った顔。笑い顔。
② もっぱら嬉しいときの顔だが、大人になるとコントロール出来るようになる。作り笑い。


「・・・う~む・・・」


周りの人達が、ビビって目を合わせないように、距離を置くようにしているのを感じる。通勤電車の中、眉間に皺を寄せ、怒ったような怖い顔で、おれはケータイ電話の画面を見つめていた。メール本文の内容に悩んでいたその時のおれは、初めてラブレターを書こうとしている小中学生となんら変わりなかった。ただ女性を映画に誘うだけ、それでもおれのチキンハートは、失敗した時のショックを想像し、メール送信を躊躇し、より完璧な文面を作ろうと試行錯誤していた。


心配するのも無理も無い十分な理由もある。おれはここまで女性と食事やデートに行って、8割方はその後に音信不通になっていた・・・いや、少し見栄を張ってしまった。9割5分方、音信不通になっていた。どうすれば誘えるか、どうすれば音信普通にならずに次もあってくれるか・・・モテない男の悩みは、多い。





デート当日、人々を祝福するような清々しい晴天の中、おれは少しの不安と、大きな期待を持って、待ち合わせ場所に赴いた。今年のビッグデイ・・・つまりクリスマスまでもうすぐだ。クリスマスに二人で過ごすくらい仲良くなるまでの猶予は、それほど多くはない。今日のデートに成功するかしないかは、連続お一人様クリスマス記録に終止符を打つ為には、非常に重要なところだった。・・・だが、雲一つない晴れ空とは逆に、おれの先行きの暗さは、デートの相手が軽く30分近く遅れて来た時に早くも感じられた。


「・・・あぁ全然待っていないさ。ちょうどそこの売店の新聞に面白そうな記事があったんでな、良い感じに読む時間が出来て良かったよ。」


怒っているところを見せずに、普通の受け答えで場を和ます。実際におれは全く怒ってなかった。ただ、おれと会う事への彼女の期待度の低さを感じ、悲しかっただけだった・・・


新宿の雑踏の中を一緒に歩き、昼食を食べ、映画を観る。彼女はめったにおれと目を合わせようとはしない。恥ずかしいからか?居心地が悪いからか?いずれにしろ、おべんちゃらが得意な、口八丁なおれの話術をもってしても会話が弾まない状況も含め、彼女がおれと一緒にいる事を楽しんでいないのは、明らかだった。


「・・・もう一箇所だけ、一緒に行ってくれないか・・・?」


帰りたいのは、分かる。今日も、映画に興味があっただけで、おれには興味はなかったのだろう。しかし・・・その場所で、おれが好きな景色を一緒に観れば、少しはこのデートも良かったな、おれと一緒にいるのも悪くないな・・・そう思ってもらえる。そう信じていた。それくらいの美しい景色が、そこにはあった。


「・・・!」


50秒程のエレベータを上がり、高層フロアに歩を進める。そこには、新宿と言う世界有数の大都市を見下ろす夜景が広がっていた。東京都庁の展望フロア、無料で夜景を楽しめるその場所は、高さや景色の面では東京タワーに遠く及ばないまでも、東京の夜景を楽しむには十分すぎる場所だった。


「・・・夜景って綺麗だよな・・・夜景を観ていると、おれは・・・」


大好きな景色の前で、大好きな人に、お決まりの口説き文句を展開する・・・その定番パターンに持って行こうと語りかけ彼女を見ると、彼女は夜景を前にしても眉毛を八の字にし、困ったような、悲しいような顔をしていた。夜景でさえ、彼女の心を少しも開く事が出来ない。おれは、語るのを止めた。潮時だった。


「帰るか・・・」





「昨日デートだったんですよね?」


翌日、友人から電話があった。おれのデート成功率の低さを知っているだけに、気になったようだった。


「・・・あぁ、まぁそうだが・・・」
「どうでした?今度は音信普通とかにはならないですよね!?」
「・・・彼女が見せた一番の笑顔が、おれと分かれて帰る時だったという事実が、その答えになっているはずだが・・・」


おれは、終始無口で浮かない顔だった彼女が最後に見せた一番の笑顔を、忘れる事が出来なかった。彼女が一番嬉しかったのは、おれから解放された時だったのだ。


そんなにつまらないなら申し訳ない、もう誘わないでおくよ・・・と言いつつ、ポジティブ・シンキングで再挑戦してやっぱり音信普通になったのは、言うまでもない。


これで今年のクリスマスも一人でココイチのカレーフラグが立ったのは、これまた言うまでもない。もちろん、フライドチキン・カレーだ。


【続く】


Reo.

秋の始まりは恋の終わり・・・、を読み物風に

2010-10-26 16:35:25 | その他
『秋』
① 四季の第三。夏と冬の間で、9・10・11月をいう。暦の上では立秋から立冬の前日まで(陰暦の7月から9月まで)をいい、天文学では、秋分から冬至まで。昼が短く、夜が長くなる。この季節は涼しくさわやかで五穀や果物が実り、「秋たけなわ」「食欲の秋」などといわれる。しかし、一方では台風や前線の影響で雨が降りやすく、「秋の空」など変わりやすいことのたとえにされる。やがて木々は紅葉し、草花は枯れて、冬へ向かう。《季 秋》「―深き隣は何をする人ぞ/芭蕉」
② 盛りを過ぎること。終わりに近づいていること。「天下の―」「人生の―」
③ 和歌などで、男女の仲の冷める意味で「飽き」に掛けて用いる。
④ 冬まで夏服で頑張ろうか、秋服買っちゃおうか迷う季節。おれは迷わず今でも半袖。


「・・・ね、眠い・・・」


時計の針が14時を指そうと言う頃、おれは自身の瞼のその驚異的な重さに、一人驚いていた。無駄な抵抗と知りながらもおれは睡魔と闘いながら、それでも必死に起きているフリをする為、意味不明な文字列をタイプしていると、いつの間にかおれは意識を失っていた・・・昼寝へのカウントダウン、それは、3度目のリストラへのカウントダウンでもあるのだが・・・


ここ最近、おれは必ず昼食後、もしくは出社後の朝のミーティングで、必ず強い睡魔と闘っていた。そして、敗れガン寝していた。理由は、分かっていた。ここ最近の多忙さから・・・では当然ない。デートや仕事で帰りが遅いから・・・でもない。おれはこの夏から、以前より1時間早く起床し、スターバックスで朝食を摂っていた。それでも寝る時間は変えていないので、必然的におれの睡眠時間は約7時間から約6時間へと目減りしていた。週末も遅くまで寝ないおれは、その睡眠時間減少の影響を、徐々に深刻に受け始めていた。


「もう朝のスターバックス通いは止めた方が良いんじゃないですか?」


同僚が、おれの寝起きざまに助言をよこしてくる。人の恋愛に口を挟むとは、良い度胸だ。


「・・・何言っている、お前もおれのカップを観ただろう。ハート入りメッセージ貰ってんだぞ。」
「でも、毎日700円くらい使ってるんですよね・・・昼食は弁当400円なのに、厳しくないですか?」
「・・・でもな、もうちょっとで電話番号貰えるんだよ・・・きっと・・・


もうスターバックスの店員さんとは他人以上お友達未満な関係だ。友達以上恋人未満を経てば、もうラブラブまで直ぐそこだ。おれはしっかりと会社で昼寝をし、翌朝またスターバックスへと愛車(折り畳み自転車)を向けた。今日こそは、カップにメッセージと電話番号を書いてもらえる・・・そう信じて。


「おはようございます♪涼しくなってきましたね♪」
「・・・あ、あぁ、そうだな・・・」
「今日は何にしますか?」
「・・・そ、そうだな、じゃあ君のオススメでいこうかな・・・」
「じゃあ、キャラメル・マキアートですね♪」
「・・・そ、そうか・・・おれは美術に詳しくないが、そんなアートがあるのか・・・」
「(クスッ)何言ってるんですか、マキアートっていうコーヒーの種類があるんですっ♪」
「・・・あ、あぁそうか、もう若い人達の流行には疎くてな・・・じゃあそれをホットで貰おうか・・・」
「はーい♪店内用マグカップでお作りしても良いですか?」
「・・・あ、あぁ、おれはeco大使だからな・・・」


もうラブラブだ。ほぼ恋人同士ではないか。おれは個人的に超レアな、スターバックスでしか味わえない若い女性との会話にドキドキしたまま、おれの何とかアートが出来るのを待っていた。


「店内用マグカップでお作りのトールサイズ・キャラメルマキアートお出ししま~す」
「・・・あ、あぁ、ありがとう・・・」


おれは早速、カップを観た。今日のメッセージは・・・


「・・・こ、これは・・・!!な、ない・・・!!!」


カップを観たが、何のキャラクターも、メッセージも、ましてや電話番号も書かれていなかった。当たり前だ、そのカップ、陶器製のマグカップだ・・・ホットコーヒーの季節になり、おれへのメッセージは途絶えた。おれのスターバックスでの恋は、終わった・・・


マグカップを前に、一人茫然自失しているおれを見て、店員さんがまたドン引きしていたのは、言うまでも無い。


それでも淡い期待を胸に、まだ睡眠時間と少ない給料を削ってスターバックス通いを続けているのは、これまた言うまでも無い。


「・・・まだ分からん、メモを渡されるかもしれないではないか・・・!」


【続く】


Reo.