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Reoっちの駄文(ふつーの日常をハードボイルドに)

金融、サッカー、ボクシング、映画・・・そしてその他でふつーの日常を、楽しく読めるようにハードボイルドな読み物風に。

おもいっきり親切な中国人おばさん達・・・、を読み物風に

2011-03-08 15:17:13 | その他
『親切』
① 相手の身になって、その人のために何かをすること。思いやりをもって人のためにつくすこと。また、そのさま。「人の―にあずかる」「―を無にする」「―な応対」
② (深切)心の底からすること。また、そのさま。
③ おれがもっぱら女性に対してのみすること。


「・・・やっと帰れる・・・」


金曜日の夕方、一週間の上海での仕事を終えたおれは、上海プドン国際空港のターミナルにいた。中国タクシーの荒い運転や、降りる前に人々が乗ってくるエレベーター、中華料理の油まみれ感に疲労を感じていたおれは、少しホッとした気分でベンチに座っていた。


「・・・おっ・・・!」


おれの左に、携帯電話をいじりながら静かに座る女性。綺麗系の美女を目ざとく見つけたおれは、チラチラと横目に見ながら、この今をトキめく長友佑都似のイケメン・ビジネスマンに気付かないか、期待してフライトを待っていた。


しかし・・・驚異的な面白さのサイトなりメールを見ているのか、その美女はおれに見向きもせず、ずっと携帯電話の画面とにらめっこしている。業を煮やしたおれは、得意の行動に出た。


「・・・あぁそうだ、出張で疲れたし、コーラでも飲もうかな・・・」


意味の無い発言で、注意をひこうとする。美女は、まだ反応しない。


「・・・そうだなぁ・・・自販機で買うか・・・」


美女を横切るように、おれは目の前にあった自販機へと向かう。小銭は全てチップで処分していたので、やむなく札をだした。すると・・・


「・・・えっ・・・!?」
「ペラペラペラペラペララー」
「・・・お、おーけー・・・」
「ペラペラペラペラペラペラペラペララー」
「・・・い、いや、大丈夫だって・・・」


なぜか知らないが、自販機を前にするおれを見つけた中国人のおばちゃん二人が、おれに近寄ってきた。自身の仕事であるはずの掃除を中断し、おれを日本人と分かりながら二人で相手してくれる。


「ペラペラペラペララー」(予想:かれ日本人よ~困ってるみたいね)
「・・・い、いや、分かるって・・・」
「ペラペラペラペララー」(予想:分からないなんてまぁ可愛い、まだ少ないものね)
「・・・掃除に戻れって・・・」
「ペラペラペラペラペラペラペララー!」(予想:こうやって、こうして、こうよ!)
「・・・」


どうやらおれがこの自販機の使い方を分からないと思ったか、札を入れるところと、ボタンの押し方、そして商品の取出しまで、懇切丁寧に教えてくれる・・・全ておれの分からない中国語で。いや、使い方分かるから。もっと複雑な自販機が日本にはあるから。ってか、英語で説明書いてあるから。別に困ってる素振りしてなかっただろ・・・


「ペラペラペラペラペラペラペララー!」(予想:おつりの小銭で、また買ってみれば!)
「・・・」


中国人の掃除のおばちゃん二人にからまれ、周りの日本人から注目の的のおれ。美女とも、やっと目が合ったが・・・めちゃくちゃ恥ずかしいだけだった・・・


「・・・はいはい、ありがとね・・・」


コーラを手に入れたおれは、そそくさとその場を後にした。この近くのベンチに座ってたら、更にからまれそうだ。それより、恥ずかしくてしょうがなかった。


ここを掃除したいのかな・・・と思ったおばちゃん二人は、そのまましゃべりながらどこかへ行ってしまった。おれにからんだのは、本当にただの親切心からだったようだ・・・


中国人は態度や行儀が悪いとか、自己中心的だというのは良く聞く。しかし、当然だが、中国人の中でも赤の他人に親切にしようという優しい人もいる。例え掃除のおばちゃんという、それほど高等な教育を受けていないだろう人でも・・・と改めて人種や国籍で人を判断してはいけないんだと認識したのは、言うまでも無い。


その後、二度と中国の自販機には近づくまいと心に誓ったのは、これまた言うまでも無い。


【続く】


Reo.

飛行機の紳士、を読み物風に

2011-03-07 15:45:05 | その他
『紳士』
① 上流社会の人。
「有名―の商議場たるが如く」〈織田訳・花柳春話〉
② 上品で礼儀正しく、教養の高いりっぱな男性。ジェントルマン。「―淑女」
③ 成人の男性。「―服」
④ おれ


「・・・あっ、失礼します・・・」


久々の海外出張、日本への帰国便でおれは、非常に残念な事に3人並びの真ん中の席になってしまった。いや、隣の人物がまだ分からない状況の時は、まだ良い。「両隣女性で両手に花・・・」状態を夢想し、大きな期待と共に席に着ける。しかし・・・フタを開けてみれば、おれの両隣は初老のおっさん二人。一方、一つ前の列は、なかなかの美女三人・・・おれは自分のくじ運の悪さを呪い、座るなり爆睡モードに突入した。まぁどうせ3時間だけのフライトだ。


「・・・あの、お仕事ですか?」
「あ、えぇ。そちらも?」
「・・・はい、1週間だけだったんですけどね、久々の海外出張でした」
「そうですか、大変ですね。でも、とても優秀そうで・・・」
「・・・いえいえ、そんな事はありません」
「実はうちの娘、もう22歳なんですが・・・箱入り娘で出会いが無く・・・」
「・・・はぁ・・・」
「あなたのような人を是非紹介したいと思っていた、会ってやってくれませんか?」
「・・・え、私で良いんですか・・・!?」
「えぇ。あぁ写真があるんですが、見た目は悪くないと思うんですが・・・」
「・・・おぉ・・・綺麗な人ですね・・・是非、お会いしたい・・・」


というような会話が隣のおっさんとあるわけもなく、おれは一人ぼーっとしていた。すると、ふと気付いてみれば通路側に座るおっさん、なかなかのオシャレさんで、結構かっこいい。半分以上が白くなった長髪を丁寧にまとめ、セクシーなジャケットとジーンズという格好は年齢を感じさせないスタイル。そして優雅に足を組み、ハードカバーの本を読んでいる姿は、なかなかのダンディさを醸し出していた。


「・・・おぉ紳士だな・・・」


何かしらの自己啓発本を読んでいる事をチラ見しながら、その紳士から溢れるオーラにあやかりたいと、おれは彼の動きを注意深く見ていた。辣腕経営者か、アナリストか。おれみたいなサラリーマンではないにせよ、あんな風に年をとりたいな・・・と。





数時間後、食事の時間がやってきた。国際線では、例え3時間のフライトでも、しっかりと機内食が用意されている。


「・・・(やべっ、トイレ行きたいな・・・)」


空港で現地通貨を使いきろうと、ガンガンジュースを飲んでいたのが祟った。3時間のフライトだったらいつもは一回もトイレに行くことはないのだが、ちと今回はダメそうだった。しかし隣は紳士風の人だし、優しいだろう。食事のトレーが片付いたら、トイレ行かせてもらお!と思いながら、おれは黙々と食事に徹した。すると、中国人のキャビンアテンダントが、飲み物を提供しに周ってきた。


「・・・ほな、コーラで」


お酒を嗜まないおれは、いつも通りコーラを注文。英語の発音で言ったらコーヒーが出てきそうになって焦ったが、まぁ問題ない。


「赤ワイン、レッドワイン」


となりの紳士は、さすが紳士でハイソ、ワインを注文していた。おれのコーラとは格が違う。すると、ワインを入れる通常の小さめのコップを直ぐに空けると、その紳士はすぐさま次の注文を口走った。


「もっと大きいグラスでくれよ」
「これですか?」
「違うよ、紙コップじゃないよ、ビール入れてたやつだよ」
「ビールですか?」
「違うよ!赤ワイン、レッドワインを、大きいやつで!」
「ダメです、無いです」
「なんで無いんだよ、ちゃんと仕事しろよ!このコップだよ!!」
「少々お待ちクダサイ」


隣の紳士は、満足いく量の赤ワインを貰えないからか、それとも相手が中国人CAだからか、唐突に高圧的な態度をとりだした。CAは奥にあるコップを貰う為、他のCAに声をかけ、その傍らその紳士に対応していた。


「少々お待ちクダサイ」
「ちゃんとサーブしろよ!」
「少々お待ちクダサイ」
「ちゃんと出せよ」
「少々お待ちクダサイ」
「・・・」
「少々お待ちクダサイ」
「・・・」
「少々お待ちクダサイ」
「邪魔だよ、進めよ」


CAは突然の、それもちゃっちいクレームにビビったのか、なぜか「少々お待ちクダサイ」を連発しだした。全然紳士じゃないじゃないか・・・おれも、その男の小ささと気の短さにビビった。


「・・・ちょっとオシャレで一角の人物風に見せてるが、全然小さな人間だな」


なんて事は言えるはずも無く、おれは隣で縮こまっていた。紳士とか立派な人とか、見た目じゃ分からないんだな・・・という教訓を得ながら。ビビってトイレへ行く為に席を立ってもらう事も出来ず、ちょっと漏らしてしまったのは、言うまでも無い。


「・・・ふっ、やっぱりおれはこんな年のとり方したくないな・・・」


とかっこつけながら漏らしたものが、大か小かは内緒なのは、これまた言うまでも無い。


【続く】


Reo.

バレンタインデー2011、を読み物風に

2011-02-15 16:16:38 | その他
『バレンタインデー』
① 2月14日。270年ごろローマで殉教したテルニーの主教聖バレンティヌスの記念日。ローマの異教の祭りと結びついて女性が男性に愛を告白する日とされるようになり、日本ではチョコレートを贈る風習がある。セントバレンタインデー。
② モテ男にはダイエット必要月間の始まり。おれにはイベントでもない。


「そろそろバレンタインデーですね~」
「…ふっふっふ・・・」
「あれ・・・?」


同僚の『バレンタインデー』と言う言葉に、おれは不敵な笑みをこぼす。去年のバレンタインは確か・・・「お世話になったから」と言われて貰ったチョコ1個。一昨年は確か・・・チョコ0個。そんな2月のビッグイベントに無縁なはずのおれがこぼす笑み・・・おれが女性の人気に縁がない事を知っているその同僚は、いたく不思議がっていた。


しかし・・・おれは、今年こそは貰える採算があった。ターゲットは行きつけのスターバックスの女の子。おれにメロメロなはずのその子は、遂に照れながらおれに愛の告白をする。そして、おれの多大な金銭的コストをかけたスタバ通いも、遂に報われる・・・女性が意中の男性に愛の告白をする・・・なんと素晴らしいイベントなんだ、バレンタインデーは!


「・・・まぁ手紙とか一緒に入ってて、連絡先とかくれるんだろうな・・・ふふっ・・・」


バレンタインの前の週は3日も連続で出勤していて、連日馴れ馴れしいおれと会話していたその女性。おれは、大きな期待を胸に、2月14日の朝を迎えた。


「・・・」


ドキドキ、ワクワクしながら、おれはスターバックスの入り口をくぐった。すぐにレジカウンターに目をやる。そこには、いつもの女性が・・・


「・・・!?」


い、いない。チョコレートを貰える貰えないどころか、そこに立っていたのは男だった・・・この朝の早い時間、そこのスタバでは男が働いている事は皆無なのだが、よりによってこの大事な日に・・・


「・・・」


おれは、パンを選ぶフリをして、キョロキョロした。例の女性がどこかにいる、もしくはレジの男が入れ替わるのを期待して。しかし・・・そいつは平然とレジで佇んでいる。何やってんだ、おまえは!?・・・いや、何やってるんだ、おれは・・・


結局、例の女性は、おれが店にいる間は現れなかった。その日の朝食は、少し塩辛い涙の味がしたのは、言うまでも無い。


その日、焦ったおれは3~4回その店に戻ったのは、これまた言うまでも無い。もう当分コーヒーはいらないぜ・・・


【続く】


Reo.

タイでも恋、を読み物風に

2011-02-01 13:47:32 | その他
『言語』
① 音声や文字によって、人の意志・思想・感情などの情報を表現・伝達する、または受け入れ、理解するための約束・規則。また、その記号の体系。音声を媒介とするものを音声言語(話し言葉)、文字を媒介とするものを文字言語(書き言葉)、コンピューターなど機械を媒介とするものを機械言語・アセンブリ言語などという。ことば。ごんご。げんぎょ。
② ナンパトークに必ず必要なもの。ロマンティックな口説き文句の為にあるもの。


「・・・雨、か・・・」


父親と兄貴・・・家族3人水入らずでのタイ旅行。旅行日程の最終日を迎え名残惜しく街を歩いていると、おれ達は運悪く突然の雨に打たれてしまった。ほぼ常夏で、この日も気温25度近くはあるとはいえ、今タイでは約2週間と言われる冬の季節真っ最中。なんでこんな冬の時期にタイに来たんだ・・・というツッコミは置いておき、おれ達は雨に打たれないよう善後策の必要性に直面した。


「あのカフェに行こう!」


単純かつ当たり前すぎる解決法、さすが兄貴。おれ達は雨宿りと時間稼ぎのため、近くにあったお洒落なカフェに入った。


「ワン ビィーア」
「・・・タイ アイスティー」
「ヌン コーラ」


唯一一人だけ、タイ語を喋るのが、家族の中にいた。その必要性に疑問を感じながらも、まぁ可愛いタイ人をナンパする為に必要なんだろうな・・・と納得しながら、おれ達はオーダーした飲み物が運ばれるのを待った。


数分の後、飲み物が運ばれてきた。ファンシーなおれが注文したタイ・ティー。しかし、おれの目が釘付けにしたのは、そんなオレンジ色な飲み物ではなかった。


「・・・か、可愛い・・・♪」


飲み物を運んでくるウエイトレスの一人、その女性は小柄で顔も小さく、おそろしく可愛い笑顔を魅せていた。そう、おれはこのタイの地でも、一目惚れしてしまった・・・


ドキドキしながら、おれは次の一手を考える。確かに家族と一緒だ。しかし、そんな事で行動を止めるおれでもない。何度と無く目が合い、その度に微笑んでくれる彼女にどんどんと魅了されたおれは、心の中で決心した。とりあえず声をかけよう。英語でのナンパは得意だ、その為にアメリカに留学してきたんだ・・・


「・・・ハ、How're you doing?」
「???」
「・・・あ、あれ・・・」
「@*&%@##」
「・・・」


英語で、これまで成功率100%である口説き文句を口にしたおれに、タイ語の返答が飛んできた。初めての経験だ・・・これは、困った。しかし、運が良いことにこの日のおれは、兄貴と言うタイ語を喋る秘密兵器を抱えていた。


「@#++&%」
「##$%*+」
「*+&$%#」
「・・・」


おいおい、おまえが必要以上に仲良くなるなよ・・・と思いながら、どうなったか兄貴に聞く。


「さっきからなんでニヤニヤしてるんだ、ってさ」
「・・・おいおい、そっちが目を合わせて微笑んで来たんだろう・・・」


どうやら、彼女はおれに「君が綺麗だからさ・・・」と言わせたいらしい。残念ながら、タイ語でそんな事は言えないが。


「英語は喋れないって」
「・・・くっ・・・!!」


もう無理じゃないか。どうやって口説くんだ・・・偶然にも雨が降り、偶然入ったカフェで、偶然このテーブルの担当になって知り合った二人・・・運命に引き寄せられた二人だったが、早くも終わりが近づいているようだ。おれは、胸の奥に波打つ悲しみを押さえ込んだまま、最後の願いを頼んだ。


「・・・じゃあ、日本に帰ったら自慢したいんで、一緒に写真撮ってって言ってくれ・・・」
「分かった。@*+&$#@」
「・・・@*+%&#・・・」


照れる彼女。しかし、言葉が通じないと言う困難がありながらも両想いの二人だ。当然、一緒に写真に写ってくれる事を承諾してくれた。





旅行先での最終日、それも言葉が通じないという困難・・・運命に翻弄された二人だが、それでも惹かれあった一瞬の恋を記憶に留め、おれは店を出た。その後、どうにかあのカフェにまた行けないか模索し続け、家族に呆れられたのは、言うまでも無い。


そして、この一葉の写真を見返すたび・・・「おれの腕太てぇなぁ・・・さすがおれ」と自画自賛してしまうのは、これまた言うまでも無い。


【続く】


Reo.

海外スクーバダイビングの悪夢…、を読み物風に

2011-01-13 17:16:01 | その他
『乗り物酔い』
① 自動車・船・航空機などに乗って気分が悪くなった状態。急停止・発進、旋回、動揺などの加速度の変化で内耳の平衡器が繰り返し刺激されると、自律神経が失調を起こし、顔面蒼白・吐き気・嘔吐(おうと)などの症状があらわれる。動揺病。加速度病。
② 乗り物酔いにかかるのは三半規管が正常・敏感である証拠・・・と自分に言い聞かせフォローすると、羞恥心も減少する。例:「どんだけ三半規管が敏感なんだよ、おれ♪」


「・・・あ、暑い・・・」


外資系の会社らしく12月も半ばを過ぎれば大半の社員がクリスマス休暇に入る中、『不良の補習』の如く一人遅れて休暇に入った不良サラリーマンのおれは、休みの翌日には日本を離れていた。そして、降り立った地で最初に感じたのは・・・常夏の楽園。タイはサムイ島に辿り着いたおれは、そのビル一つ無い空港のトロピカル感に感動しながら、今の日本では感じられない熱気を肌で味わっていた。夏男のおれは、その暑さがたまらなかった。


この時期のタイの気温は30度弱。とは言え、タイにも僅か2週間ほどだが冬はあるらしく、今がその時期だと言う。だが、久々の長期休暇でのタイはサムイ島滞在・・・おれは大量の荷物を持ち込んでいた。ダイビング器材フルセットだ。普段はタンクトップと短パンしか着ないおれが、柄にも無く大型のスーツケースをガラガラ引いて移動していたのには、そんな理由があった。パンツ5枚、タンクトップ5枚、そして後は全てダイビング器材・・・


「・・・ふっ、海外で一人ダイビングに参加、現地で一緒にダイビングする観光客ギャルと仲良くなって、そのまま・・・ふふふ・・・」


という思惑が無いとは言えないかもしれない。いや・・・むしろその思惑のみでおれはタイに来ていた。器材一式、それもショップの営業トークに乗せられて購入した無駄に高価な器材を持ち、かっこよくダイビングし初心者の女の子に手取り足取り。この期間に2日ダイビングに行って~合間はデートかな・・・そんな事を思い描きながら、おれは現地入りしていた。


ダイビング当日、おれは朝6時に起き、ホテルでダイビングショップからの迎えを待っていた。海外のダイビングでは(他のツアーとかでも)、大概ホテルまで迎えに来てくれ。かなり便利だ。朝食を食べる時間は無かったが、酔い止めの薬も飲んで、準備万端。おれは意気揚々と、重い器材を持って、車に乗り込んだ。


車で約10分。港に着いた。天候は、あいにく曇り時々雨。一応冬だけにしかたないのかもしれない。船に乗り込むと、おれは他の日本人(女性)が乗り込むのを待ったが、誰もいない・・・どうやら日本人はおれだけのようだ。更にガイドは角刈りのイカツイおっさん。早くもおれの思惑が外れた。しかし、本当におれの期待を粉々にしたのは、これからだった・・・


乗り込んだ船は、スピードボートと言う、かなりスピードの出る、小さい船。そんな船で約1時間。一緒に乗り込んだオーストラリア人やヨーロッパ人達と、おれ達は雨の中を出港した。すると・・・船はまぁ揺れるは揺れるは。スピードボートらしく波に乗っての上下動が激しく、更に天気が悪いので横揺れもある。しかし薬を飲んできただけに、おれは大丈夫。そう思っていたが・・・


「ぐはっ!!」
「・・・!!」


対面式のシートに体を預け、顔面蒼白な白人連中をボーっと見ていると、隣で一人の欧米人がギブアップし吐き出す・・・さすがの欧米人でも酔ってしまうほどの激しさだが、おれは大丈夫・・・だと思っていたが、徐々に気持ち悪さ、胃のムカつきが上に昇ってきた。しかし、船は全然ダイビング場所に着かない・・・さすがに1時間は、長い。ガイドのおっさんは寝てればOKと言っていたが、到底寝れないような揺れだ。


「着いたんで、準備しましょう」
「・・・」


ウエットスーツを着て、BCを着け、準備するおれ。しかし、もう限界に来ていた。そのBCとウエイトベルトの締め付けに耐えられる、おれは海へと向かい吐いてしまった。


「大丈夫ですか?早く海に入ってしましょう!」
「・・・うえっぷ」


そんな状態なのに、早々とおれを海にぶち込もうとするガイド。鬼か。と思いながら、陸も無いし、船で揺られてるのも辛いので、とりあえずジャンプ。確かに、海の中では酔いは薄れたので、この日一本目のダイビングを開始した。


「はい、船に上がって下さい」
「・・・うえっぷ」


船に上がり、器材を外した途端、おれは二回目の嘔吐。もうあかん、おれはダウンだ。しかし、ここから船は船上でランチタイムに入り・・・タイのグリーンカレーなど食べられるわけもなく、おれは横になってボーっとしていた。船はこのまま陸につけずに、2本目のダイビングを経て、1時間の航路を戻り、陸へ帰るらしい・・・おれは、気絶した。2本目のダイビングをせずに、ずっと意識朦朧の中、顔面蒼白で陸上に戻ったのは、もう夕方だった。


ギャルがいなかったのはもうどうでも良い。いやむしろ、ギャル達にこの醜態を見せずにすんだのは、助かったと言うべきだろう。薬を飲んだのに3回も嘔吐したという、この地獄のような時間。正直、入った海の中などほとんど憶えてない。雨でそれほど透明度はよくなかったし、楽しむ余裕もなかった。更に、あんな20kg近い重器材を、タイまで持っていったという事実・・・海外でダイビングするイケメン夏男、とは程遠い、完全な負け組みではないか・・・


その後、スピードボートにビビり、結局1週間サムイ島にいてもうダイビングはしなかったのは、言うまでも無い・・・


しかし、海以外の場所で、しっかりと恋に落ちたのは、これまた言うまでも無い♪


【続く】


Reo.