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Reoっちの駄文(ふつーの日常をハードボイルドに)

金融、サッカー、ボクシング、映画・・・そしてその他でふつーの日常を、楽しく読めるようにハードボイルドな読み物風に。

ニュルンベルクを一人…、を読み物風に

2009-09-08 17:49:45 | その他
『一人旅』
① 道連れなしに旅をすること。また、その旅。
② 男一人で実施すると、概ね暇すぎて、寂しすぎて、ついつい風俗に走ってしまう事。



携帯電話のアラームで目を覚ましたおれの目に映ったのは、いつもとは違う天井だった。おれの部屋の天井には、自慢の某化粧品CMの加藤あいちゃんポスターが貼られているはずだが、その日あいちゃんは見当たらなかった。『誰かにポスターぱくられたのか!?』と数秒うろたえた後に、おれは気づいた…おれは、この土曜日の朝を、ホテルの一室で迎えていた。


彼女と金曜日の夜からお泊りデート?否、そんな事は夢の中だけだ。おれは自身のボケに苦笑いを浮かべながら、この日の予定を思い浮かべた。おれは、ニュルンベルクと言うドイツの古都に、仕事で来ていた。中世の城壁に囲まれたこの小さな街に来たのは、これで二回目。前回は2006年ワールドカップの時に日本対クロアチアを観戦に訪れ、試合後に街を周らずに直ぐに仕事先のミュンヘンに戻っていた。今回こそは、少し城や古い街並みを歩いてみるか…ただでさえ友人など皆無なのに、海外に来て全く知り合いのいなくなったおれは、その暇さ加減に辟易しながらそう決断した。


週末でも平日と同じくらいの時間に起きるおれは、朝8時半のニュルンベルクの冷気に、声を失った。空気が乾いているからか、日本とは考えられないほどの朝と夜の寒さは、欧州の気候の厳しさを感じさせた。寒さに身をすくめながら、おれはホテルから峠にそびえ立つ城へ向けて、歩を進めた。古い石畳を一人歩くおれ、かなりハードボイルドだぜ…などと妄想しながら、まだ開店していない店舗に挟まれた通りを歩く。途中に古い教会や、広場のフリーマーケット、お菓子屋の前の行列に行き当たるが、当然ガイドブックなど持っていないおれには意味不明、完無視を決め込み城へと続く坂道を辿った。


城に辿り着く。丘から観る街並みは、なかなかの絶景だった。景色を楽しんだ後、満を持して城を周ろうとするが、思ったより小さく、約5分で終了する…気を取り直し、城の中に入ろうとするが、どうやらガイドのついたツアー客しか受け付けていないようだ。ハードな一人旅のおれは、踵を返し街に戻った。


ホテルを出て約2時間、おれは城と街の散策を、あらかた終了していた。その間に観た観光地ぽいところは、城一つ、教会三つ、噴水一つ、行列の出来るお菓子や一つ、ストリップバー二つ…街の店が開店する前に、おれのニュルンベルク観光は終了してしまった…もっとも、店が開店したとしても物価が高いヨーロッパでショッピングを楽しむつもりは毛頭なかったが。


おれは、仕方なく、映画館へと向かった。ドイツ語のガイドブックを必死に解読し、どうにか上映時間を調べる。とりあえずアメリカ映画、日本でも観たかった『G.I.ジョー』を観る事にする。


夜になり、おれは映画館へと向かった。すると、さすが他にやる事のない小さな街ニュルンベルク、映画館には長蛇の列が出来ていた。ビビリながらも、とりあえずドイツ人の巨体に紛れて列の最後尾に並ぶ…と思ったが、良く見るとちゃんとした列などない。謙虚な日本人を演じ次々と横から前に入られる中、遂にカウンターに辿り着いたが、その時には後ろに誰も並んでいなかった。


「…ふっ、さすがゲルマン魂だ…とりあえず、ワン・フォー・G.I.ジョーだ。」


英語は、通じた。だが、ドイツでは公開からもう1ヶ月くらい経っているのに、ほぼ完売。さすが何もやる事が無いニュルンベルク。おれは一人感心しながら、地下へと続く映画館の奥へと進んでいった。


「…!?」


映画が始まった。映画の中で、アメリカ人がことごとくドイツ語を喋っている…おれは支払った10ユーロと2時間と言う時間に大きく失望しながら、ストーリー展開に想像を膨らませた。上映中終始目が点だったのは、言うまでも無い。さっぱり、意味不明だったが、とりあえず他の人が笑っているシーンでは一緒に笑っておいたのは、これまた言うまでも無い。海外では吹き替えが当たり前なのか…おれは傷ついた心を抱え、映画館を後にした。





【続く】


Reo.

息子の家出、を読み物風に

2009-08-27 19:11:25 | その他
『家出』
① 帰らないつもりでひそかに家を出ること。「都会にあこがれて―する」「―人」
② 外出すること。
③ 大概ブタの貯金箱を割って現金を取り出してから実行すること。


「・・・今日も、暑いな・・・」


湿り気を帯びた夏独特の熱気をまといながら、おれは服の中で汗が流れている事を肌に感じながら、自室へと入っていった。まずは窓やドアを閉め切ってのクーラー・・・これが、ここ最近のおれの一番の楽しみだ。上半身裸になり、クーラーの冷たい風を浴びながら、タオルで汗を拭く。そうしているうちに、いつもなら・・・


「・・・はにゃ?」


おれは、気付いた。挨拶が、無い。愛息ジュダーが、水槽の中にいなかった・・・


「・・・はっ!ジュダー!どこだー!出てこーい!」


我に帰ったおれは、早速部屋の中のどこかに隠れているであろうジュダーの捜索を始めた。いつ脱走・・・いや家出をしたのかは分からないが、過去に愛娘ポポが家出をし、その時の怪我と病気が元で亡くなった辛い過去がある。ポポの笑顔が頭をよぎる中、ジュダーに同じ思いはさせまいと、おれは必至に無駄な雑誌や本で溢れている部屋を探し回った。


部屋を見渡す。全ての箇所が、怪しく見える。ジュダーはカメとは言え、たかが体長10cm程だ、どこにでも行ける。更に、親のおれに似て身体能力は抜群、『水中のボルト』と呼ばれるほどだ。陸上歩行とは言え、どこまで進んだか可能性は無限だった。だが、運が良い事に、部屋のドアはずっと閉まっていた。部屋の中には、いるはずだった。


まず、枕を持ち上げる。いなかった。水槽横の餌や電源コードを除けてみる。いなかった。サッカーボールを持ち上げる。ボールは空気が抜けていた。ベッドの上の毛布を持ち上げてみる。汗臭かった。ベッド下の雑誌を片してみる。大人の雑誌ばかりだった。ベッド上のミッフィーを持ち上げてみる。今日も可愛かった。同じくチップ&デールの兄弟を同時に持ち上げる。眠そうだった。そして、スティッチを持ち上げる・・・


『ボトッ!!』
「・・・ん!?」


何かが、ベッドの下に落ちる音がした。ジュダーかもと思いながら、おれは細心の注意を払い、恐る恐るベッドと壁の隙間から下を見る。甲羅があった。おれは腕を伸ばし、噛まれる危険性を顧みずにジュダーを掴み持ち上げた。


ジュダーは、何時間も水の無い状態だったからか、いつもと違い甲羅の中に怯えたような表情で隠れていた。いつもなら、甲羅を掴んだら首を伸ばして噛み付いてくるのに・・・その弱りように悲しみを感じながら、おれはジュダーをこの胸に抱き寄せた。


「・・・ジュダー、息子よ・・・おれが悪かった、もう家ではするな・・・痛っ!!」


ジュダーに乳首を噛まれたのは、言うまでも無い。部屋に戻り上半身裸になった後そのまま、ジュダーの捜索に入っていたのを忘れていた。ジュダーを引っ張り、おれの乳首も引っ張られ、数秒後にどうにかジュダーを体から離したおれは、愛息を水槽に戻した。これからはもっと餌をやるぞ、そう心に誓いながら・・・


ジュダーに噛まれた乳首の痛み、必ずしも嫌いじゃなかったのは、これまた言うまでも無い。


【続く】


Reo.

夏の終わり、を読み物風に

2009-08-24 17:52:52 | その他
『プール』
① 人工的に水をためた遊泳場。水泳場。
② 海に行けない、もしくは淡水で泳ぎたい時に行く場所。水難事故の危険が少ない為か、子供を連れた家族連れが海より多い印象。なので、ナンパには不適かも。


「・・・夏が、通り過ぎていく・・・」


天高く昇った太陽に目を細めながら、日曜日の晴れた昼、おれはそう呟いた。もう、8月も後半に入っていた。冬生まれながら夏男なおれは、8月が残り少なくなるにつれ、焦りと、そして悲しみを感じ始めていた。いや、今まで秘密にされていたが、実はおれは夏生まれなのかもしれない。その証拠に、今まで好きになった女性は、9月、8月、7月と夏生まれだけだ・・・


そんな事を考えながらも、おれはしっかり海パンとタオルを持ち、海へ行く準備はしていた。東京に住んでいて海に行けるのは、1年のうちに8月しか無いと考えて良い。つまり、週末は僅か4回・・・社会人になり夏休みが無くなると、色々な予定を鑑みて多くて3~4回しか海に行けない事になる。おれは今年、まだ一回しか海に行っていない。更に、皮が剥けて、驚きの白さに戻ってしまっていただけに、2度焼きは必須だった。しかし・・・その日おれは、東京都の西、多摩地区は立川でボランティア活動に参加する必要があった。西東京から湘南などの海に行くのは、あまりにも遠すぎる・・・焦りが、おれの体を支配し始めていた。


「・・・そうだ、東京サマーランド行こう。」


東京サマーランド、それは、西東京は八王子からバスで行く、遊園地に屋内屋外プールが一体になった、巨大テーマパークだ。立川から八王子なら、電車でものの10分だ。おれは、心ここにあらずのままボランティアを終え、小走りで八王子へと向かった。時刻は12時過ぎ、真昼間なのに曇り空に変わって来た事に、不安を感じ始めていたが・・・


八王子駅に降り立ったおれを待っていたのは、東京サマーランド行き直行バスを待つ、長蛇の列だった。昼を大きく回ったこの時間にまだ多くの人が行こうとしている事に驚きながら、おれは10代の少年少女が多数を占める面々と一緒に、バスに乗り込んだ。


「・・・な、長っ・・・」


バスに乗って30分。直行なのに。どこに連れて行かれるんだと思いながら、おれはその東京の外れなのに駅からバス30分という驚異的な利便性の欠如に、驚愕していた。バスに乗り込むときに席に座ったから良いものの、混雑したバスで30分も立っていなければいけない他の客の顔を見ると、同情心を感じざるを得なかった。席を譲る気など、さらさら無かったが。


「・・・天気悪っ・・・」


やっと山間に佇む東京サマーランドに着き、490円と言う驚きの金額をPASMOで支払うと、おれはすぐに空を見上げた。分厚い雲が、山を覆っている。太陽の暖かい光は、ほとんど届いていなかった。これで日焼けできるか・・・?重なる不安を胸に、おれは建物の中に歩を進めた。


「・・・高っ・・・」


プール利用料は、3500円。乗り物のフリーパスをつけると、4500円。乗り物など全く興味の無かったおれは、それでも高く感じる3500円を渋々払い、入場した。そんな高額を払いながら、まさかコインロッカーで400円を取られるという事を知らないまま。


「・・・多っ・・・」


チケットを渡し、入り口から中に入ったおれは、建物の中を一望しただけで、驚愕した。多い、非常に多い。いや、プールやアトラクションの数では、無い。その人の多さに、おれは驚いていた。プールを埋め尽くす群集、空きスペースがあればそこは通路でもレジャーシートを敷いて座る人々、売店に並ぶ列は大人気のラーメン屋を想像させた。


群集に圧倒されながら、おれは気を取り直してロッカールームへ向かう。男子更衣室のロッカーは、空きは無し。男女共同という意味不明なロッカールームでは空きはあったが、着替える必要があったおれは下半身を露出して捕まるのは避けたかったので、更衣室のロッカーが空くのを待って、プールへと向かった。


大人が入るのに充分な深さのプールは、屋外に流れるプールと、屋内に波のプールと、二つあった。日焼けをしたいおれは、行列の作る流に乗り、まずは外に出た。


外に出る。寒い・・・午後を回ってから徐々に増え始めた雲は、もうすっかり太陽を覆い隠していた。しかし、3500円とバスで駅から片道30分というコストを既に支払っていたおれは、元を取り返す為にプールに飛び込んだ。人が多くてタオルを敷いて寝るスペースも無ければ、ウォータースライダーに30分も並ぶ気力も無い・・・プールに入る以外に、オプションは無かったわけだが。


「・・・寒っ・・・」


とりあえず、流れるプールを一周した。人が多すぎるし、寒い。早々に飽きたおれは、屋内のプールに挑戦してみる事にした。屋内のプールは、確か波のプール・・・


「・・・!!」


そのプールを観ると、波も無いのに数百人の人々が所狭しとプールに浸かっている。動くスペースも無いまま、みんな何かを待っていた。そんな異様な光景を眺めていると、『波まであと10分』というアナウンスが流れる。何をそんなに勿体ぶっているんだとの思いを抱きながらも、その肌と肌の密着度に興味を示したおれは、驚異的な混雑さの中からスペースをどうにか見つけ、プールに入り込んだ。


「・・・痛っ・・・」


波が始まると、そのスペースのなさから、浮き輪を持った面々が波に抵抗できずに突っ込んでくる。プラスチックのヒラヒラに日焼けした敏感肌を攻撃され、早々に辟易してきたが・・・


「・・・早っ・・・」


約5分、早くも波は止まった。プールから出ろとアナウンスが流れる。波はまた15分後らしい。おれは、もう帰る事にした。費用対効果?入場料3500円と片道490円のバス代と400円のロッカー?ここにいても疲れるだけだ、値段の分楽しむなど到底出来ない。


「・・・天気悪いし、遠いし、高いし、人が多すぎだし、二度と来ないぞ・・・あぁ海に行きたかった・・・」


やっぱりおれは海男だなと再認識し、おれは新宿方面への電車へと乗り込んだ。しかし、プールで金を使いすぎ、大好きな大人の遊びはお預けになったのは、言うまでも無い・・・


「・・・来週末こそは、海へ・・・」


そう決意しながら、唐突な海外出張が入り、おれの夏は早くも終わりを迎えたのは、これまた言うまでも無い・・・


【続く】


Reo.

洗濯外干しの恐怖、を読み物風に

2009-08-17 15:49:41 | その他
『洗濯』
① 衣服などを洗って汚れを落とすこと。
② 日常の仕事などから離れて気分を一新したり、からだの疲れをいやしたりすること。「命の―」
③ 全自動洗濯機だ!と油断し、洗剤を入れ忘れて数時間後に乾燥済みの水洗いされた服が出来ないよう、気をつける必要がある家事


「・・・降水確率は、10%か・・・」


インターネットで大人のサイトを見ている余暇に、おれは翌日の天気予報を調べた。当然、翌日のデートの天気が心配だから・・・では無い。部屋に、山積みにされた洗濯物が溢れていたからだ。


「・・・久々に、外で干すか・・・」


おれは、全自動洗濯機を持っている。おかげさまで、梅雨時でも、冬でも、いつでも乾燥機で洗濯物を乾かす事が出来る。しかし、洗濯物を外で乾かす事が出来なくなっては、万が一将来結婚した際に愛する妻に愛想をつかされてしまうと心配したおれは、久しぶりに洗濯物を外に干すことにした。夕方になり太陽も傾き始めていたが、夜の間も干しておけば、朝の太陽で昼前には乾くだろう・・・そんな思惑を抱きながら。しかし、なぜかおれは、嫌な予感を感じていた。梅雨も明け、夏本番。テレビでは怪談特集なども始まっている。夜の洗濯物には、何かが憑きやすい・・・とは聞いた事は無いが、超常現象など信じないおれでも、何かの前触れを感じているのを否定する事は出来なかった。


「・・・なんか嫌だな・・・怖いな、恐ろしいな・・・」


ジャーッ!ピーッ、ピーッ、ピーッ!!空虚な音が、静まり返った家の中に響く。何かの前触れを思わせるその音は、ただ洗濯が終わった事を知らせるシグナルと知っていながらも、なぜかいつもより不気味に感じられた。


ミシッ、ミシッ・・・暗くなり始めた夕刻の廊下を、外に向かって歩く。自分以外は誰もいない家が、ここまで暗く寂しいものなのかと思いながら、洗濯物を持ちゆっくりと歩を進める。先には、おれを吸い込むのをまつような闇が、窓一杯に広がっていた。


「・・・なんかおかしいなぁ、なんかいるのかなぁ・・・」


外に出ると、嫌な汗がおれの背中を濡らす。不吉な予感を感じながら、おれはさっさと終わらせようと、急いで洗濯物をハンガーにかけ、並べ吊るした。何かがいる・・・そんな雰囲気を感じながら、おれは逃げるように部屋へと戻った。


「・・・こんな日は、さっさと寝よう・・・」


夜の闇に耐えられなくなったおれは、その後サッカーを一試合観て、映画を一作だけ観終わると、早々に寝た。霊感は強い方ではないはずだ、明日の朝には嫌な予感は無くなっているだろうと期待しながら・・・





翌朝、おれは9時くらいに起きて映画をもう一作観終ると、洗濯物を部屋に取り込んだ。ハンガーに吊るしていたポロシャツを纏めて部屋に持っていき、早速整理しようとベッドの上に並べた。


「・・・ふっ、嫌な予感は、気のせいだったか・・・」


おれは、一人安堵の吐息を漏らした。やはり、この世界に、超常現象などあるわけがない。祟りや霊など・・・


「・・・ん!?・・・う、うわぁ~、ぎゃぁぁぁぁぁぁー!!!」


おれがふとベッドに置いた洗濯物に視線を移すと、ポロシャツの背中に、異様な物体が浮かんでいた。グレーのポロシャツと同じような色で気付かなかったが、それは・・・どデカイ蛾だった。おれは驚きのあまり、部屋を飛び出した。


「・・・嫌だなぁ、怖いなぁ・・・」


ギーッ。冷静さを取り戻し、おれはドアを開け部屋へ恐る恐る戻った。恐怖の化身であるその携帯電話サイズの驚きのデカサの蛾は、夜行性だからかおれの驚きの声に全く動じず、変わらずにおれのポロシャツで熟睡していた。


おれは、足りない頭で対策を考えた。こんなデカイ虫、叩いて潰すのは願い下げだ。なんせ、なんかの汁でおれの100円ショップで購入したポロシャツが台無しになる可能性がある。おれは、部屋にあった小型掃除機を手にとった。これで吸い込めば、もう暴れられる事もあるまい。


ブゥォーン!ブゥォーン!試運転を重ね、おれは恐る恐る掃除機のノズルを怪物に近づける。もし目覚めから醒めて飛翔されれば、おれはそこで終わりだ。ゆっくり、細心の注意を払い、おれは近寄っていった。


ブーンンンンン・・・スポンッ!数秒の粘りを見せた後、モスラは掃除機に吸い込まれていった。一件落着だ。これでおれの家にも、平穏が戻った・・・と思ったその時、おれはある事に気がついた。その小型掃除機、紙パック方式ではなく、吸引したゴミはそのままの状態で内部に残るようになっている・・・さらに悪いニュースは続き、ゴミの量が見られるよう、掃除機のゴミが入る部分は半透明になっていた・・・


「・・・嫌だなぁ、どうしようかなぁ、見たくないよう・・・」


おれは、恐る恐る、片目ずつ半透明の掃除機の機体から野郎を見てみた。パタパタパタ!最悪だ、あの小さい筒を通った筈なのに、まだまだ健在だった。困った。ここで掃除機を開ければ、モスラは飛び立つだろう。下手すれば、おれに恨みを持ち襲ってくるかもしれない。体長10cm以上ありそうな巨体だ、おれの命が危ないかもしれない。


パタパタパタ・・・おれは、掃除機の内部に超巨大蛾を放し飼いにし続けたのは、言うまでも無い。今日も夜になると、パタパタパタと・・・


その後、この心霊体験に懲り、おれは外で洗濯物を干すのを止めたのは、これまた言うまでも無い・・・


【続く】


Reo.

ドラクエの誘惑、を読み物風に

2009-08-14 19:16:58 | その他
『ドラクエ』
① ⇒ドラゴンクエストシリーズ


「・・・お先に、失礼します・・・」


愛用のゼロハリ・・・ぽいポーターの鞄を持ち、おれは席を立つ。時計の針は、既に18時を指していた。毎日がノー残業デーに生きるおれにとって、もう帰宅する時間だった。


「・・・!?」


愛想良く周りに挨拶をしながらオフィスを出ようとするおれは、同僚達の机の意外な共通性に気付いた。なんと、同僚達の机の上で、ニンテンドーDSが充電されている・・・平均年齢30歳以上のこの外資系企業のオフィスで、みんなニンテンドーDSを持っているとは。それも充電中・・・通勤中にどれだけゲームしたんだ!というツッコミを呑み込み、おれはオフィスを出た。





数日後、おれは爽やかにフットサルで汗を流した。青春まっしぐらにフットサルをプレーし、シャワーを浴びてフットサル場から帰ろうとすると、チームメイト達はおもむろに長方形の物体を鞄から取り出した。


「・・・おまえらもニンテンドーDSか!?」


と驚きつつも、協調性を大事にするおれは、とりあえず持っていた長方形の物体、携帯電話を取り出した。


「じゃあ『すれ違い通信』しようぜ!」
「・・・」


一人が、おもむろに意味不明な事を口走る。それを合図に、全員がDS本体を近づけあう。どうやら、何かの通信をしているようだ。仲間外れは避けたいおれは、とりあえず携帯電話の赤外線通信をONにし、円に加わった。おれの携帯電話は、終始無反応だった・・・


「今日、横浜駅で、瞬時に3人集まったよ!」
「みんな持ってるよな、本当に簡単に集まる。」
「・・・」


何が集まるか意味不明だが、とりあえず人の多いところでは簡単に集まるらしい。おれは、携帯電話の赤外線通信をONにしたまま、家に帰ることにした。その途上、チームメイトはみんなゲーム話で盛り上がり、おれは一人携帯電話のメールを読んでいた。と言ってもメールなど一日平均0.3通ぐらいしか来ないので、ずっと過去のメールを無駄に読んでいただけだが。


横浜駅に着くと、おれはドキドキしながら携帯電話を開いた。この混雑さだ、もうガンガンに通信しているに違いない。


「・・・」


おれの期待をよそに、携帯電話は『すれ違い通信』をした気配は全く無かった。むしろ、ここまで赤外線をONにしていたので、電池残量が少なくなっていた事にビビった。


数日後、おれは事実を知った。周りがよそよそしい原因は、どうやら『ドラクエ9』らしい。かなりの本数を売上げ、みんな通信して楽しんでいるらしい。仲間外れを回避したいおれも、是非欲しくなった。


「・・・よし、任天堂の株を買い、その利益でゲームを買おう。」


これだけゲームを売り上げているんだ、かなり株価も上がるんじゃないかと読んだおれは、さっそく任天堂株を購入した。その数日後、決算の下方修正で良い感じに株価下落したのは、言うまでも無い。


その数日後、証券会社のレーティングで格下げされ、さらに株価が下落したのは、これまた言うまでも無い・・・


「・・・ふっ、良いさ。」


その後、おれは一人携帯電話の赤外線をONにし、万が一『すれ違い通信』が成功するのを期待して日々を過ごしている。ゲームのドラクエ9が売れているのなら、任天堂株ではなく、スクエニ株を購入するべきだったと悔やみながら・・・


【続く】


Reo.