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Reoっちの駄文(ふつーの日常をハードボイルドに)

金融、サッカー、ボクシング、映画・・・そしてその他でふつーの日常を、楽しく読めるようにハードボイルドな読み物風に。

クリスマス・プレゼント、を読み物風に

2010-01-06 15:53:55 | その他
『プレゼント』
① (スル)贈り物。進物。また、贈り物をすること。「指輪を―する」
② 女性が喜ぶ、と思って男性が頻繁に準備するが、気の無い相手からのプレゼントはゴミになるだけなので、食べ物などの消費物が良い。


時計の二つの針が、円の頂点を静かに指し示す。20日土曜日に入った事を確認したおれは一人、これからの長い冬休みに思いをはせた。


会社の業績悪化から、経費削減の為オフィスを閉めたいと20日から年明け4日まで、約2週間の冬休みをもらったおれは、旅行などの予定が全く無いまま、一足早いクリスマス休暇へと突入した。


遊びに行く?
友達がいない。


一人旅?
京都への一人旅で、その寂しさに耐えられない事を知った。


「…ふっ、久々にゆっくりする時間を持ったんだ、楽しむか…」


おれは静かに、埃にまみれたPS3に、先日購入したばかりの“ファイナルファンタジー13”を投入した。少なくとも出社するまでは、クリアする事がないよう祈りながら…


しかし…今年一年の行いが珍しく良かったからか、クリスマスを目前におれに幸運が巡って来た。今年は平日のクリスマス・イブとクリスマス当日、『おれは冬休みだ、どこにでも行ける。きみの仕事が終わった後、どこかで食事しないか?』と言う誘い文句が実を結び、おれは一人の美女を25日クリスマスの夕食に誘い出す事に成功した。


クリスマスとなると、当然レストランでは特別ディナー。否が応にも舞台は盛り上がり、気持ちは高ぶってしまう。おれはこの機会をより特別なものにしようと、一人テンションを高めていた。


「…よし、クリスマス・プレゼントを用意しよう…」


おれは、悩んだ。いくらクリスマスとは言え、初めての二人だけでの夕食、金に糸目はつけないとは言え高価な物を贈ったら、その本気度に逆にひいてしまうだろう。だが、後に残らないお菓子とかを贈るのも、ちょっとクリスマスの雰囲気に反している…おれは駅前の花屋に寄り、クリスマス用にデコレーションされた小さな鉢植えの植物を買った。いらなくなっても捨てるのにそれほど罪悪感を感じる事も無く、好みとかもあまり関係ないプレゼントの定番、それでいてお手ごろ価格。おれはそんな小物を小脇に抱え、カップルが闊歩する通りを一人心躍らせながら、待ち合わせ場所に急いだ。


少しの緊張と、大きな喜び…おれは6年ぶりの美女とのクリスマス・ディナーを、夢の中にいるように感じながらすごした。前菜から始まり、スープにメインにデザートのフルコース。夢の終わりが近づくのを感じたおれは、そっと用意していたクリスマス・プレゼントを差し出した。


「…せっかくのクリスマスだ、プレゼントを用意したよ。メリークリスマス…」
「あっ、わたしも」
「…えっ!?」


まさか貰えるとは思わなかったプレゼントに戸惑いながら、ゆっくりと手渡された袋を開けると、それはなんとシクラメンの鉢植えだった。それも、おれが用意したものの5倍くらいの大きさと豪華さ…おれは自身のプレゼントの情けなさに恥ずかしさを感じながらも、そのプレゼントを用意してくれた気持ちに、心から感動した。


シクラメンを持って、一人家路を歩く。冬の寒さも、中より火照っているおれの体の前では、全く厳しさを感じさせなかった。クリスマスのディナーを共にしてくれて、さらにプレゼントまで用意してくれた…これは、完全におれに惚れているではないか…!


「…ふっ、来年こそは、幸せな一年になりそうだ…」


…いつも通りの、勘違いの妄想だったのは、言うまでもない。


クリスマス・ディナー以降、めっちゃ長い冬休みを、その美女とは音信不通のまますごしたのは、これまた言うまでもない。おれのディナーの時の言動があまりにもキモかったからか、はたまた最初から別に気は無かったのかは、今となっては謎のまま明確になる事はないだろう。


「…ふっ、今年は雲一つ無い晴天続きだ…いい年になりそうじゃのぉ…」


2010年1月3日、長い引きこもり期間を終え、見事出社前にファイナルファンタジーをクリアしたおれは、晴天の空を眺めながら希望に願いを込めた。上空を見上げながらも、溢れる涙は頬を伝いこぼれ落ちたのは、またまた言うまでもないだろう。隣では、夢の残り香の如きシクラメンが、おれを元気付けるように咲き誇っていた…


明けましておめでとうございます。2010年も、よろしくお願いいたします。


【続く】


Reo.

ハッピーバースデー独唱、を読み物風に

2009-12-15 17:01:15 | その他
【独唱】
① [名](スル)一人で歌うこと。ソロ。「開会式で国歌を―する」
② 一人で歌っているだけの事を、かっこよく言った言葉


おれの目の前で部屋を明るく染めているテレビ画面では、ようやくテレビ朝日の『お試しかっ!』を終えようとしていた。つまり、時刻は0時10分頃…日付は、既に変わっていた。


携帯電話を、チラ見する。開く必要は、無い。なぜなら、0時を回る大分前から、おれはメールの着信を期待し電話を握り締めていたからだ。だが、なぜか0時を15分も過ぎた今も、着信は来ない…日付が変わった途端に、『わたしが一番最初にお祝いしたかったんだ♪』と言って連絡をくれる女性を期待していたおれの心は、再びあっけなく砕かれようとしていた。


1時を回り、さすがに諦めたおれは、枕のへそを噛みながら毛布を頭までかぶり、一人寂しく眠りについた。涙?いや、流してはいない。おれはまた一つ歳を重ねた、強い子なのだから…


最後に誕生日を祝われたのは、いつだっただろうか。彼女がいた頃は、当時のおれには勿体無いほどの数万円クラスの鞄なり財布をプレゼントされていた。しかし、そんな時期が徐々に記憶の奥へと消えていきながらも、おれを祝ってくれる女性に会う事はなかった。せっせせっせと意中の女性に誕生日をアピールしているのに、だ。


翌日、おれの鳴らずの携帯は、相変わらず終始無反応だった。脳内でのイメージ的には、既に5~6件のおめでとうメールがおれの受信ボックスを圧迫しているはずだったが、月の使用料が無料通話分を超えたことが無いおれの携帯は、相変わらず期待通りの動作に終始していた。


「…ふっ、そんな年もあるさ…せっかくの誕生日だ、今日は豪華に一番好きなものを食べよう…」


同僚の誰一人からも『おめでとう』と言われずに会社を出たおれは、一人バースデーカレーを食べにココイチへと向かった。特別な今日は、トッピング二つだ…ここ5年くらいは、このココイチで一人誕生日を祝っているのは、言うまでもない。


「…ハッピーバースデー・トゥ・ミー、ハッピーバースデー・トゥ・ミー、ハッピーバースデー・ディア・オレ、ハッピーバースデー・トゥ・ミー…」


一人カレーの前で歌っていると、変なおじさんを見るかのように店長に睨まれたのは、これまた言うまでもない…こうここ数年の恒例じゃないか、許してくれよ…と思いながら、おれは寒さに耐えるように背中を丸め、誰も待っていない家への帰路を急いだ。きっといつか素敵な女性がおれの誕生日を祝ってくれる…そんな欲張りな願いを思い浮かべながら。


【続く】


Reo.

女医の美しさ、を読み物風に

2009-12-08 16:09:24 | その他
【女医】
① 女性の医師。
② お店ではオプションとして存在するケースもあるが、ナースと比べ需要は低い。


駅前のビルの3階へと向かうエレベーターの中、おれは既に、緊張で汗だくになっていた。前回この口腔外科に来た時は、口に粘液のう胞が出来ていると診断され、切断が必要と言われていた。そう、今日が手術日だった。


粘液のう胞とは、簡単に言えば口の中の唾液腺が膨らんで水泡のようになる症状だが、そんな変な出来物がおれの内唇に出現したのは、もう1ヶ月も前の事だった。最初は口内炎かとも思ったが、全く痛くない。水ぶくれぽいので、足の豆を潰すかのごとく何回か潰してみたが、何回も再生し膨れてくる。痛くはないので深刻ではなかったが、邪魔なのと女性に対して見栄えが悪いので、遂におれは口腔外科にお世話になる事を決断していた。


その決断は、正しかった。緊張しながら訪れたこの駅前の歯科に、口腔外科医としておれの前に現れた先生は、かなりの綺麗さで眩しく輝いていた。おれはさりげなく名札をチェックし、診察後のマスクを外した顔を凝視する…おれは、どうやら恋に落ちたようだった。


そう、おれがエレベーターの中で緊張していた理由…それは手術が恐いからではなく、美しい女医さんに再び会えるからだった。


「調子はどうですか?」
「…すこぶる良い…」


診察台に横になり、おれは丸々と太った粘液のう胞を見せ付ける。切除するには、のう胞は膨れていたほうが良いらしい。先生からの手術を受ける為に気合でのう胞を膨らませてきていたおれは、静かに先生に触られるのを待った。


「じゃあ麻酔しますね」
「…あぁ…」
「ちょっと痛いですよ」
「…え?麻酔注射の前に、麻酔してくれないか…」
「はい、では治療を始めま~す」
「は~ひ(はい)」


顔には布をかけられて接近する先生の顔を眺められないのは残念だったが、おれは先生に口を縦横無尽に触られている事に興奮し、心拍数を下げるのに必死だった。すると、そこに野太いおっさん声が現れた。おれは訝しく思いながらも、二人の会話に聞き耳をたてた。


「じゃあ治療を始めますよ。まず、ここからここまで切ろうか」
「はい」
「そうやって持ってたら切れないよ、こうだよ」
「はい」
「はい、じゃあやってみて」
「こうですかね」
「そうそう」
「あっ、切除箇所が小さすぎですかね…」


…ちょっと待て、おねえちゃんは研修医か!?大丈夫なのか!?という不安が頭を過ぎると思ったが、おれは思いのほか冷静だった。自制出来てないようなメタボな男の研修医が担当なら、おれもノーサンキューだろう。しかし、あの美しい女医だったら、多少の医療事故も受け入れられる。むしろ、もっと痛めつけてくれという感じだ。麻酔のおかげで、何も感じなかったが。


「痛くないですかー?」
「はいひょうふ(大丈夫だ)」
「もう少しで終わりますからね」
「ひゅっくりひゃっへ(ゆっくりやってくれ)」
「何かあったら言ってくださいね」
「ひょうひょっほひはふいへ(もうちょっと近づいてくれ)」
「んー分からないなー」
「ひぇんひぇひはひれひはなー(先生は綺麗だな…)」
「はい、動かないでくださいねー」
「…」


何をやられているかさっぱり分からない中、おれは手術の間中、先生の胸が頭に当たらないか、全神経を頭部に集中させていた。そんなこんなで、切除後に傷口を縫う施術も含め、治療に費やした45分はあっという間だった。女医の胸が当たったか?いや、おっさんだったか女医に当たっていたのかも、判断は出来なかった。


「はい、お疲れ様でした。麻酔が取れるまで飲食は控えてくださいね」
「はひ、ははひはひた(はい、分かりました)」
「もう普通に喋っても大丈夫ですよ」
「…あぁ、そうだな。…この後の予定だが…」
「はい、明日消毒にいらしてくださいね」
「…その予定じゃないが…まぁ明日会えるなら、良いだろう…」


翌日、同じ時間に病院を訪れたおれは、メタボの男に消毒されたのは、言うまでも無い。おれの意中の女医とは、もう会えなそうだ…


その後、もう一度治療を受けようと、また口の中に粘液のう胞が出来るよう毎日祈っているのは、これまた言うまでも無い。


【続く】


Reo.

退く理由、を読み物風に

2009-11-19 15:58:25 | その他
『退く』
① 後方へ下がる。後ろへのく。あとじさる。「大またで三歩―・く」⇔進む。
② 貴人・目上の人の前を離れて出て行く。退出する。また、その場所から去る。「御前を―・く」「控えの間に―・いて待つ」 / 試合などで、敗れてそこからいなくなる。「初戦で―・く」
③ 官職などを辞める。引退する。「現役を―・く」「政界から―・く」
④ (多く「しりぞいて」の形で用いる)置かれている状況を離れる。「一歩―・いて考える」
⑤ 譲歩する。引き下がる。「自説を固持して一歩も―・かない」
⑥ 勝てなそうな相手と諍いになった時に、必ずしなければいけない事。


その日、カップルが身を寄せ合いながら寒さに耐え忍ぶ中、おれは一人スタジアムで愛するチームが最下位相手に今期6勝目を献上する試合を眺めていた。本当に良い事ないな…そうつぶやきながら、おれは試合中に届いたメールに再度目を落とした。


『用事があって行けないです、ゴメンなさい』


夕食に誘ったメールへの返信…断られるにしても『また誘って下さい』なり『来週なら空いてるんだけど』を期待していたおれは、その何の迷いもないストレートな断りとタイミング、そして僅か一行という心のこもり様に、体が寂しさでより凍えて行くのを感じていた。意中の相手からの断りでなければ…さらに、これが8回目の断りでなければ、もうちょっと心は痛まなかったのに…そんな事を考えながら、マリノスの敗戦に肩を落とす面々に混ざり、おれも肩を落とし駅への道を歩いた。


『…一人で応援してたから負けちまった、今度は一緒に応援してくれ』


電車でヒマを持て余していたおれは、その日の試合前に一緒に働いていた女性にメールを送った。女性からの慰めが、どうしても欲しかった。


『きっと応援が足りなかったんですね!誘ってくれればご一緒しますよ』


返ってきた優しい言葉が、おれの心を温かく包んだ。おれはその優しさに甘えるように、メールを続けた。


『…もう腹が減ってきた、今度クッキー作ってくれ』
『はーい、今度作って持って行きます♪』
『…月島で働いているのか?今度もんじゃの店を紹介してくれ』
『良いですよ、おススメを紹介します♪私と一緒だと楽しいですか?』
『…もちろんだ』


おれの心は、暖かさを通り越し、熱いぐらいだった。この食い付き、完全に脈ありだ。今年は遂に「一人でクリスマス」を卒業だ。おれはその勢いと思いをそのままに、その女性をデートに誘ってみた。


『…今度の3連休、一緒に映画でも観に行かないか?ゆっくりしていると言っていたが、もしよければ是非…』
『月曜日なら大丈夫ですよ!他の日は予定が入っちゃって…』
『…そうか、忙しいんだな…翌日仕事でも、大丈夫なのか?』
『土曜日に彼とディズニー行って、日曜日は家族と…でも大丈夫ですよ♪』
『…』


ん…?えっ、いや、ちょっと、はっ、むむむっ…!?という言葉を飲み込み、おれは必死に動揺を抑えた。『彼』は『カレー』の変換ミスか?それとも、普通に恋人がいるのか?それでいて誘いに乗るのは、おれは危険度ゼロか?彼がいるから、一線を越えないと安心しているのか?「そんなの関係ねぇー!」とオッパッピーしちゃっても良いのか…?


電車の中でプチパニックに陥ったおれは、数々の思惑が頭の中を駆け巡る中、必死に冷静さを取り戻そうと努力した。恋人のいない意中の人は8回ほどおれの誘いを断り、恋人のいる女性は思わせぶりな態度を見せる…その世の中の無情さに苦しみながら、おれは自分の美学を貫く決断を下した。


『…忙しいんだな、じゃあ月曜日は休んだほうが良い。また今度にしよう』
『そうですね♪』


二人でどこかに行くと、おれは自分を抑えられなくなる気がする。それでいて彼女を奪い去るのは…おれは自身の経験から、例え知らない男でも、彼女に振られるあの辛さを味あわせる事はしたくなかった。


「…君を幸せにしたいとは思うが…君の周りに悲しみや痛みを広げる男にはなりたくない…」


と言いつつ、実はその戦闘能力不明のその彼氏が恐くて身を退いたのは、言うまでもない。


クッキー、もんじゃ焼き、サッカー観戦、映画…カラ約束だけが増える中、おれは二度と自分からはメールしないと心に誓い、動揺から3つほど乗り越した駅で電車を降りた。降りた途端に心が寒さで凍えたのは、外の空気にさらされたからか、それともまた一つ傷を負ったからか…


数週間後冷静になった後に、脈ありもなにも、自身が勝手に妄想してそう思っていただけだと気付いたのは、これまた言うまでもない。


Reo.

モテ期の訪れ、を読み物風に

2009-11-11 15:45:22 | その他
『もてる』
① 保たれる。維持される。「座が―・てない」
② 人気がある。人から好意をもたれ、よい扱いをうける。「年上の女性に―・てる」
③ もてるともてないの境はあいまい


「あ、すいませーん♪」
「…」


また、声をかけられた。この日だけで4人目だ。それも、これまで全て女子大生並みの若さときている。おれは、一般に人生で2度あると言われる『モテ期』を迎えたようだ。確か一回目のモテ期は…どうやら、これが一回目みたいだ。


「…しかし、なぜおれは、今日急にモテるようになったんだ…服装か?」





「おい、腹減ったな!どこかで食ってくか?」
「…あぁ、そうなだ…」


綺麗な秋晴れが気持ち良い土曜日の午後、4時間と言う長時間に渡るフットサルを終えたおれと仲間達は、シャワーを終えると早速飲む事と食べる事の相談を始めていた。


くたびれた恰好のいい歳をしたオヤジ達5人が、フットサル場のある目白の街並みを駅に向かってあるく。口にするのは、酒と女と金の話。かなり見苦しいところを見せながら歩くおれ達は、たまたまある大学の目の前を通りかかった。


「…日本女子大学、学園祭…?」
「おい、行こうぜ!」
「あぁ、行ってみようぜ!!」
「ビール売ってねぇかなぁ」


おれ達は、ただの一人の反論もないまま、未知の聖域である女子大のキャンパスに歩を進めた。一人ドキドキしながら、仲間達の後に続く。そんな時、おれはその日初めて、女性から声をかけられた。


「あの~、焼きそば、いかがですか?」
「…ん?…い、いや、おれはカレー派だが…」
「余って困ってるんですよぉ、買ってくれたら嬉しいな♪」
「…何個余ってるんだ?…買おう」


ビールを探しにキャンパスの奥へと進むチームメイト達に少し遅れ、おれは焼きそば4個を抱え後に続く。すると、おれはまた女性から声をかけられた。


「あ!ホットドック、どうですか♪」
「あ、あぁ…」


とある建物内のホールに並べられたテーブルに、おれ達は腰を下ろした。ビールがないのに残念がりながらも、ハードな運動の後で空腹を感じていたおれたちは、焼きそばとホットドックを軽く平らげていた。


「悪いな、買ってもらって。」
「…あぁ良いさ」
「でも良いじゃないか、女子大生に声をかけられて、話せたんだから」
「そうだぞ、こんな若い女の子と話せるなんて、普通は金払わなきゃいけないんだぞ」
「…あぁ、3ヶ月ぶりに、女性と話した」
「えっ…」
「…しかし、モテ期なのかな、こんなに女性の方から声をかけられ、逆ナンされるとは」
「…」


おれが自慢話を展開したからか、和やかな雰囲気は静寂に包まれ、空気が変わっていった。嫉妬か?どうやら、モテ期に入っているのは、おれだけなようだ。





「あ、すいませーん♪」
「…」
「パンフレット、買って行きませんか?」
「…いや、しかし、もう帰る…」
「明日のスケジュールも分かるし、抽選で景品が当たるんですよ♪」
「…いや、明日と言っても…」
「今日これだけ売りたいんです、お願いしますっ!」
「…で、何冊買えば良いんだ…?」


この日4回目の逆ナン、おれは自身の驚異的なイケメン度に辟易しだしながらも、少しの浮かれ気分と、大量の戦利品(フリーマーケットで買ったマグカップ、花屋で買った鉢植え、パンフレット3冊、リップクリーム3本、カロリーメイト3つ)を手に、女子大のキャンパスを名残惜しそうに後にした。久々の女性との会話で話し方が拙く、声をかけてきた女性の誰からも連絡先を聞けなかったのだけは、残念だったが。


翌日、早くもモテ期が過ぎ去り、女性から全く声をかけられなくなったのは、言うまでもない。


その後、1ヶ月たったにもかかわらず、まだ女性と会話を交わしていないのは、これまた言うまでもない。


【続く】


Reo.