文部科学省の有識者会議は14日、政府が創設した10兆円規模の大学ファンドで支援する「国際卓越研究大」について、東北大が認定基準を満たしたと発表した。
支援対象の第1号となる。学部の留学生比率を25年後に2割にするため、半数を留学生とするカリキュラムを一部で始めるなど、大胆な国際化に向けた組織改革が評価された。
文科省はまず24年度に100億円程度を助成する方針で、世界最高水準の研究大学をつくる計画が動き出す。
東北大の冨永悌二学長は「日本をけん引する研究大学として、最終的な認定に向け全学一丸となって取り組んでいく」とのコメントを出した。
大学ファンドは資産を株式や債券で運用し、利益を支援対象である複数の国際卓越研究大に最長で25年にわたり分配する制度だ。支援額の上限は合計で年3000億円をめざす。
東北大は半導体や材料科学、バイオ分野など成長分野の研究力を伸ばすことなどを計画に盛り込み、世界トップレベルの研究大学を目指すとした。
25年後に論文数を現在の3.5倍、他の論文への引用数が上位10%になった本数を約9倍に増やす。
スタートアップは8倍超の1500社にするほか、民間企業との連携を深め、約86億円規模の研究資金の受け入れ額を約959億円にする目標を掲げた。
文科省は23年9月、同省の有識者会議が「体制強化計画の磨き上げなど一定の条件を満たした場合に認定する」との留保付きで東北大を候補に選んだと発表した。
有識者会議はその後、東北大が提出した計画書の改訂版を審査し、研究力向上の道筋や国際化、ガバナンス(統治機能)強化などについて「認定の水準を満たし得る」と判断した。
大きく力を入れるのはグローバル化の推進だ。学部段階からの変革が重要だとし、27年度からまず日本人100人、留学生100人を対象とした「ゲートウェイカレッジ」を創設する。
入学後半年は徹底した英語教育を実施。交換留学しやすいよう1年を4学期に分けるクオーター制を導入するなど、新たなカリキュラムとする。学部段階の留学生比率を現状の2%から10年後に9%、25年後には20%とすることが目標だ。
外国人研究者比率は9%から25年後に30%を目指す。実現に向けて地元自治体と連携して海外人材が住みやすい街づくりを目指す。
仙台市と「国際化共同推進センター」(仮称)をつくり、医療機関に専門相談員を配置したり子どもの就学手続きを英語化したりする。
ガバナンスの強化で大規模国立大に設置することが義務付けられた合議体「運営方針会議」については、過半数を学外委員とし、議長も学外とする。
外国人比率を2割程度とすることで、大学経営にグローバルな視点も組み込む。
研究力向上には、各研究科を束ねる「高等大学院」を27年度に設置し、全学的なマネジメントによる人材育成を進める。
専門職スタッフを1000人増員して支援体制を拡充し、研究時間の確保にも努める。25年後には博士課程の学生数を現在の約2700人から6000人に増やす。
国際卓越研究大として助成を受けるには、24年10月に施行される改正国立大学法人法に基づき運営方針会議を設置。
その後、文科相が体制強化計画の認可を判断する。東北大には24年度中に100億円程度が助成される見込み。2度目の公募は東北大が正式認可された後の同年度内に始まる見通しだ。
大学ファンドの22年度の運用成果は604億円のマイナスだった。株式の配当や確定した損益を合算した損益計算書上の当期利益は742億円で、21年度の繰越欠損金を引いた680億円が助成原資となる。23年度の成果は7月にも公表される見通しだ。
(大元裕行)
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日経記事2024.06.14より引用