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習氏が北戴河会議で激怒 G20欠席、発端は長老の諫言

2023-09-05 12:47:24 | 国際政治・財閥




謎に包まれていた今夏の「北戴河会議」の雰囲気が明らかになりつつある。それは、習近平(シー・ジンピン)が、中国共産党総書記に就いてから昨年までの過去10年とは全く違っていた。

象徴的なのは、長老グループからの厳しい「諫言(かんげん)」と、それを受けて習が、自らの側近らを叱咤(しった)激励した「怒り」である。内政に混乱の兆しがあるといってよい。

これは4日午後、ようやく発表になった中国外交の異常事態でも明らかだ。インドで開く20カ国・地域(G20)首脳会議を習は欠席。代わりに首相の李強(リー・チャン)が出席する。中国トップとして習が一貫して重視してきたG20首脳会議を欠席するのは、就任以来初めてである。


            中国の李強首相


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複数の関係者らの証言を総合すると、この夏、河北省の有名な保養地である北戴河に共産党トップを経験した超大物といわれた長老はひとりも来なかった。それは当然である。

元国家主席の江沢民(ジアン・ズォーミン)は、2022年11月に96歳で死去し、前国家主席の胡錦濤(フー・ジンタオ、80)は、同10月の共産党大会の閉会式の場から、腕を支えられながら強制的に退場させられて以来、動静不明になっている。

曽慶紅氏らが「混乱避けよ」

本来、これは習にとって望ましい状況だ。実力のある、うるさい長老らが不在になったのだから。ところが、話はそう簡単ではなかった。むしろ、もっと複雑なことが今夏に起きていたのである。

折しも、中国経済は、「改革・開放」政策が本格化して以来、見たこともない未曽有の後退局面にある。恒大集団の苦境といった不動産不況が象徴的だ。若年層の失業率は、この夏から公表できないほどに悪化している。

中国軍は7月、明らかになった核・ミサイルを運用するロケット軍の司令官らの一斉失脚で混乱している。強硬な「戦狼(せんろう)外交」を主導してきた中国外務省でも大問題が起き、その余波が続いている。トップだった秦剛が理由不明のまま解任され、組織内に疑心暗鬼がなお広がっているのだ。

過去、中国共産党を支えてきた長老集団が、現状を心配するのは無理もない。「このまま政治、経済、そして社会の混乱が長引き、何ら有効な策も取れないなら、一般民衆の心が党から離れ、我々の統治そのものが危うくなりかねない」。そう真面目に思い始めたのである。

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実力を持つ長老である元国家副主席の曽慶紅氏(左)と、故・江沢民元国家主席


危機感を強めた長老らは、8月に開かれる焦点の北戴河会議に先立ち、独自に会議を招集し、現指導部に伝えるべき意見をとりまとめた。その場所は、北戴河ではなく、北京郊外だった可能性が高い。

そして、その長老らの「総意」を携えた代表者数人だけが今回、実際に北戴河入りした。共産党の統治を支える各重要部門の声を代表できる人物らである。彼らが、習ら現役指導部のメンバーと対峙した会合は、たった1日だけだった。

「これ以上、混乱させてはいけない」。長老の代表者は、習を前にして、従来にない強い口調の諫言を口にした。指摘された問題は、世界が注目する中国経済の低迷ばかりではない。政治、社会全般を含む広範な雰囲気である。

諫言の先頭に立ったのは、元国家副主席で江沢民の最側近だった曽慶紅だ。無名だった習が一気にトップになる道を開く上で、最も重要な役割を果たした曽慶紅も既に84歳になっている。

それでも、共産党の組織内に現在も陰に陽ににらみを利かせる実力者であることは変わらない。師事した江沢民が死去した今、長老を中心に幅広い人脈を持つ曽慶紅の役割は、逆に大きくなったという見方さえある。

世界に既に影響を及ぼし始めた問題は、まさにここから始まった。長老らから予想外の厳しい諫言を受けた習の内心が穏やかなはずはない。トップは別の場で怒りを爆発させた。それは、自ら引き上げた側近集団らの前だった。異様なその場面のほんの一端が、漏れ伝わってきている。

「不景気は鄧·江·胡三代の失敗」と激怒

「(鄧小平、江沢民、胡錦濤という)過去三代が残した問題が、全て(自分に)のしかかってくる。(その処理のため、就任してから)10年も頑張ってきた。だが問題は片付かない。これは、私のせいだというのか?」

習は言外に「長老らが指摘した『混乱』は、過去三代による『負の遺産』のせいであり、ツケである。自らの責任ではない」と言いたかったのだ。この発言は、過去三代に抜てきされた長老らに対する形を変えた反論でもあった。

もう少し習発言の行間を読むなら「今も残る大問題を一つ一つ解決するのが、自分が登用してやったおまえたちの第一の仕事であり、責任でもある」という心の叫びが聞こえてくる。その叱咤激励には、強い怒りが含まれている。

習の不機嫌な様子を目の当たりにした側近らは震え上がった。なかでも、責任を感じたのは、共産党内序列2位である首相、李強だ。世界経済の足を引っ張りそうな大問題が次々と明らかになっている中国経済。それを仕切る司令塔、実務担当者は、李強その人なのだから。

中国経済が著しい不調に陥った原因のひとつは、対外関係の異常な悪化である。貿易が振るわず、対中投資も激減している。米国、欧州、日本など西側自由主義国家群との抜き差しならない不和は、中国の庶民の暮らしにも思った以上の打撃を与えた。

 


        上海で演説する習近平国家主席(2018年)

 

トップとして異例の3期目入りを果たした習。新型コロナウイルスを完全に封じ込める「ゼロコロナ」政策が成功し、中国経済も盤石と大宣伝してしまった手前、未曽有の危機への対応は遅れた。20年から顕著になった「民間大企業たたき」も企業活動の停滞につながった。

体面重視でインドG20を回避

こんな状況で中国と仲の悪いインドが主催するG20首脳会議に習が自ら出席すれば、メンツ、体面を失う恐れがある。主要議題となる世界経済の行方を巡る議論で、中国が世界経済の足を引っ張っている構造が陰に陽に取り上げられるかもしれないからだ。

「権威あるトップを今、行かせるのは危ない」。これが習の側近集団の判断である。そして、この危うい局面では、中国経済の実務責任者である李強が、習の身代わりとしてインドに行くのが妥当、という結論になった。

習は、北戴河会議が終わった直後だった8月下旬、南アフリカで開かれたブラジル、ロシア、インド、南アとの5カ国(BRICS)首脳会議に出席した。だが、ここでも異例の行動をとっている。ビジネスフォーラムでの自らの演説を土壇場でキャンセルし、代読となったのだ。

こちらも、ビジネスサミットの会場で、思わしくない中国経済について習に直に問う「不規則質問」が万一、飛び出せば、メンツを潰されるとの心配があったから、という見方がある。

もう一つ、大きな要因は、最も重要な対米関係に打開のメドが立たないことだ。米商務長官のレモンドの訪中など、米中関係に緩和の兆しがあるとの見立てもある。だが、中国側からみれば、これは完全な誤解と言ってよい。

米国、中国双方とも、肝心の経済問題では譲歩できない。つまり、習政権とすれば、この厳しい局面で米大統領のバイデンと笑顔で会う理屈づけができないのだ。しかも、想定されていたのは、中国と国境で対峙するインドが主催する国際会議の場なのだ。

 


     2022年11月のインドネシアでの米中首脳会談=ロイター

これは、バイデン自身が習のインド入りに期待する発言をしても打開できなかった。そして、習が来ない雰囲気がさらに濃厚になると、バイデンは失望まで口にした。この流れでは、11月中旬、米カリフォルニアで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際、習が本当に訪米できるのかも、なお不透明といえる。

李克強前首相が引退後初登場

中国の内政は本当に複雑怪奇で興味深い。まさに「風が吹けば桶(おけ)屋がもうかる」というような不思議なことが起きる。それは、北戴河会議が終わった後の8月31日のことだった。

昨秋の党大会で、習によって完全引退に追い込まれた前首相の李克強(リー・クォーチャン)が、今年3月に首相から退任した後、初めて姿を現したのだ。しかも満面の笑みで。

5カ月ぶりに現れた場所は、中国北西部の甘粛省にある世界遺産、敦煌・莫高窟。突然の登場に興奮状態だった中国の女性観光客らは、黄色い声で声援を送った。「総理、総理〜。ニーハオ」と。

既に総理=首相は、今回、インドに習の代行で行く李強に交代している。だが、そんなことはお構いなしに甲高い声で「総理〜」と叫んでいる。その映像は、関係者らによって中国のSNSで広く流布されたものの、やはりすぐに削除された。


深圳で鄧小平像に献花する当時の首相、李克強氏(2022年8月、中国中央テレビの映像から )

 
このエピソードからわかるように、中国国内では李克強のイメージがいまだ良いままなのだ。元気な李克強への「やらせ」でないリアルな黄色い声。いまの中国政治を象徴する場面である。

今年初めて長老の仲間入りした李克強は、北戴河会議を前に長老らのみが集まった重要会合に出席していたのは間違いない。

かたや、李克強を完全引退に追い込んだ側の習は今夏、異例の長期間、公の場に出てこなかった。長老からの厳しい諫言を受けて、裏で対応策を練るのに忙しかったのである。(敬称略)


中沢克二(なかざわ・かつじ)

1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。
 
 
 
日系記事  2023.09.05より引用
 
 
 


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