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「求ム海外日系人」 推計3割増の500万人、企業先導役に 政界Zoom

2024-05-17 19:45:27 | 日本政治・外交

日本政府が世界の日系社会とのかかわりを強め始めた。

日本が経済成長の低迷や人口の減少で国際競争力を落としている現状を踏まえ、日系人が持つ力への評価を高めている。外交や国内の労働力不足の補完役として期待する。

 

「ふるさとに帰ってきたようだ」。岸田文雄首相が4日、ブラジルの最大都市サンパウロで日系人が主催した歓迎式典であいさつすると、大きな拍手が起こった。

1868年に最初の移民が労働者としてハワイに渡って以降、多くの日本人が就業や婚姻を理由に世界各国に移り住んできた。中南米も日系人の歴史が古い。

 

首相は大型連休中に訪れた南米のブラジルとパラグアイで日系社会とのふれ合いに努めた。

4月に国賓待遇で訪米した際もワシントンで「全米日系米国人慰霊碑」に献花した。日系人とのかかわりを重要な外交日程に位置づけている。

 

 

推計調査を強化

首相の南米訪問の1カ月ほど前、外務省は海外の日系人の数や分布に関する推計を初めて詳細に公表した。

日本国籍の有無にかかわらず、日本人の血をひき、永住目的で海外に居住している人を日系人として数えた。

 

各国の日本大使館が、管轄国の統計、在留届の永住者数、各種調査、その国・地域に特有な事情などを総合的に勘案して推計した。

 

 

2023年10月時点で約500万人いた。ブラジルが270万人ほどで5割強を占め、米国が150万人と続いた。欧州にも12万人、中東に2000人、アフリカに900人を確認した。

前回18年に推計を公表した時は380万人以上と発表しており、数字の上では3割増えた。

 

現地の出生や移民の増加だけでは説明できない。外務省は推計の詳細の公表に向け、従来以上に日系人の数を捕捉しようと、各大使館に調査の強化を指示していた。

ブラジルでは推計を出すうえで人口増加率を加味した。日系社会が相対的に高い経済力を持つことから同国全体の割合より多く見積もるなど実態に近づけた。

 

外務省が世界の日系人の動態を精緻に調べ始めた背景に日系人が持つ力への期待がある。1つは現地での人脈をいかした日本の発信だ。

首相は南米滞在中、3年間で中南米の日系人1000人規模の交流事業を実施すると表明した。

主に若い世代に来日の機会を設け、日本の魅力を発信してもらう。地域の日系人インフルエンサーに働きかけ日本の好感度を高める取り組みも検討する。



 

企業の水先案内人

外交で国際世論対策は重要な位置を占める。韓国は外国の自国コミュニティーの発信にたけるとされる。

中南米は重要鉱物や食料の一大生産地で、日本として経済安全保障の観点から関係を強めたい地域だ。

 

中国が広域経済圏構想「一帯一路」のインフラ支援を通じて影響力を広げている現状で、日系社会と連携して巻き返す。

日系人は日本企業が外国でビジネス展開する「水先案内人」にもなり得る。日本の文化や商習慣を理解し、現地でネットワークを張る日系社会は、特に経営基盤が弱い中小企業が海外に進出する際に頼りになる存在だ。

 

日系人に期待するもう一つの役割は国内の労働力不足の補完だ。日本は人口減少で中長期的に働き手が減り続けるなか、各国と海外人材の獲得競争にさらされる。

日系人は一般の外国人よりも国内で就労する条件が緩やかであるほか、言語や文化への理解も相対的に高く、日本政府には国内で働いてもらいやすいとの期待がある。外務省幹部は「専門的な技術を持つ高度人材にも目を向けたい」と話す。

 

かつて日本政府と日系社会のかかわりは現地への定着の支援が主だった。いまは日本の国際競争力の低下も背景に、日系人の力を借りる取り組みの軸足を移している。

首相周辺は「日系社会は経済や政治の面で必ずしも本国と思惑が一致していない」と明かす。日本と日系社会がどうウインウインの関係を構築できるかが試される。

 

 

日本への帰属意識、どう維持?

日系社会では世代交代が進み国・地域によっては3世、4世に中心が移りつつある。現地に浸透し、日本にルーツを持つことを意識しない人もいる。

国への帰属意識を持つうえで大きな要素になるのは国籍だ。日本は現在、国籍法で日本と他国の国籍を持つ「二重国籍」を原則認めていない。

 

例えば日本人と外国人の間に外国で生まれた子どもが、日本とその国の両方の国籍を持っている場合、20歳までにどちらかを選ぶ必要がある。

 

 

日系社会で二重国籍を認めるべきだとの声は根強い。世界各地の日系人が交流する「海外日系人大会」は23年の大会宣言で「海外で生まれ育った子どもが日本人・日系人としてのアイデンティティーを保つには国籍法の改正が必要だ」と訴えた。

大会を主催する海外日系人協会の水上貴雄事務局次長は「日本国籍を持たないことで日本への帰属意識が薄れていくと危機感を持つ日系人もいる」と話した。

 

世界では二重国籍を認める国は多い。人口動態を扱う独立機関ワールド・ポピュレーション・レビューによると、調査した87カ国のうち、なんらかの形で複数国の国籍の保有を認める国は全体の8割ほどだった。

ドイツは労働力を確保し、国際競争力を維持するため、23年に二重国籍の容認にカジを切った。韓国も11年に国籍法を改正し「国籍唯一の原則」を転換した。

 

二重国籍には納税国の整理などの課題はあるものの、日本政府内には日系社会とのかかわりを強めるうえで議論を避けて通れないとの見方がある。

 

 

記者の目 日本の魅力を高めたい

岸田文雄首相はサンパウロで日系人に「100年以上前に海を渡り国の発展に貢献してきた勇気とご苦労を思うと胸が熱くなる。同胞の皆さんを誇りに思う」と語りかけた。

日本の首相が南米を訪れる機会は限られ「日系人にアイドルのような歓迎を受けた」(首相周辺)。現地に溶け込む苦労を知る世代の感慨はひとしおだっただろう。

 

日系人も代を重ねれば、現地への帰属意識が強まり、日本への関心が薄れる。首相は「ルーツに誇りを持てるように日本を光り輝く良い国にしていく」と強調した。

日系人の力を借りるには日本側も努力を求められる。日本の魅力をもっと高めると同時に日系人への理解を深めたい。地球の至るところで日本を支援してくれる「応援団」に関心を寄せることから、新たな時代の協力策は生まれる。

(川上進平)

 

 

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今村卓のアバター
今村卓丸紅 執行役員 丸紅経済研究所長・グローバル総括部長

ひとこと解説

多くの日本企業の海外進出を支えてきたのも現地に永住する日本人とその次世代の日系人の皆さんです。

駐在した米国で深く実感しました。

進出日系企業のスタッフや同企業の弁護士や会計士など役割はいろいろ、その貢献は記事の水先案内人を超えています。

自らの現地での苦労と努力を活かし、進出日系企業が現地の社会へ溶け込み、よき現地企業へ進化する過程を主導し、加速させる重要な役割を果たしてきています。

3世、4世になっている国では政治家、重要閣僚になる日系人もいます。

日本の外交も頼りにしているのでは。 今後は企業の現地法人と本社での幹部登用、二重国籍、日本の政府や経済界が貢献を称える。急いで進めるべきだと思います。

 (更新)
 
 
 
日経記事2024.05.17より引用
 
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少子化の対策として、良いアイデアじゃないでしょうか。
 
 
 

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