東京都議会で4日、顧客による著しい迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を防ぐ全国初の条例が可決、成立した。
2025年4月に施行する。カスハラの禁止を明記したが罰則はない。都は従業員の保護につながる具体策などを示したガイドライン(指針)を作り、実効性を確保する。
条例ではカスハラを顧客などから就業者に対する「著しい迷惑行為」であり「就業環境を害するもの」と定義した。
顧客には言動に注意するよう求めたほか、事業者に対しては「必要かつ適切な措置を講ずるよう努めなければならない」と努力規定を明記した。
流通・サービス業などの労働組合でつくるUAゼンセンが210組合から回答を得た3月までのアンケート調査によると、直近2年間でカスハラ被害にあった人の割合は46.8%に上った。
最も印象に残っている迷惑行為としては、「暴言」や「威嚇・脅迫」などがあがった。
迷惑行為を受けた就業者のうち50.5%は「嫌な思いや不快感が続いた」と答えた。睡眠不足や心療内科などに通院する要因となった人もいた。
都は休職や退職の理由にもなるカスハラへの対策は急務として条例制定に動いた。
25年4月から施行される(4日、東京都議会)
東京都のほかにも、三重県や埼玉県、北海道がカスハラ防止のための条例制定に向けて動いている。
国は労使の代表者らが入る労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)で法制化に向けた議論を進めている。
今後は条例が企業側の従業員保護の取り組み向上につながるかが焦点になる。
東京商工リサーチが8月に実施したカスハラに関する調査では、回答した5651社のうち「特に対策は講じていない」企業の割合は71.5%にのぼった。
都は条例の施行にあわせて、従業員向け相談窓口や顧客への対応マニュアル、研修体制の整備など企業が参考にできる具体的な取り組み事項などを掲載した指針を示す。
カスハラに該当する行為も例示する。理念的な内容の条例を補完し、実効性確保につなげる。
小池百合子知事は4日の記者会見で「(顧客と働く人が)お互いに尊重しあうことが大きな理念だ。
快適な消費生活や事業の継続に寄与する独自の規範として有効に機能すると考えている」と述べた。
SOMPOリスクマネジメントでハラスメント対策などを専門にする西彩奈グループリーダーは、「自社でどのようなカスハラが起きているかを分析することは、サービスの見直しや生産性の向上にもつながる」と話している。
日経記事2024.10.04より引用