セブン&アイHDがヨーカ堂などのスーパー事業について当初スケジュールを前倒しして売却を進める
セブン&アイ・ホールディングス(HD)がイトーヨーカ堂などのスーパー事業について、年内にも売却手続きを始めることが4日、わかった。
過半数の株式を売却する方針で、入札を受け付ける。
検討していた新規株式公開(IPO)より売却を前倒しし、コンビニエンスストア事業に集中する姿勢を明確にする。
セブン&アイは4月、スーパー事業のIPOの検討に入ることを決議したと発表していた。
2026年2月期までに構造改革で利益体質を改善させた上で一部株式を売却する方針だった。
カナダのアリマンタシォン・クシュタール(ACT)から買収提案を受ける中、コンビニ事業への集中を急ぎ企業価値を高める。
セブンはヨーカ堂や食品スーパーのヨークベニマルなどグループのスーパー事業を束ねる中間持ち株会社を設立する計画だ。
株式の売却先は海外の投資ファンドなどを想定している。10日に発表する2024年3〜8月期の連結決算に合わせて、スーパー事業について「持ち分法適用会社にすることを含め、戦略的パートナーとの連携を検討する」などと表明する方向だ。
セブンは株式売却後もヨーカ堂の一部株式は保有し続ける方針で、一定の関与を続ける考えだ。
ただ経営権は外部企業に委ねることとなり、ヨーカ堂にとって大きな転換点となる。
従来はヨーカ堂を含む首都圏の食品スーパー事業を今後2年で黒字転換させ、26年2月期にEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を550億円とする目標の達成を前提として早期のIPOをめざすと公表していた。
井阪隆一社長は「現在行っている抜本的変革の先にある長期的な成長のため、IPOの検討を始める」と説明。27年度にもIPOするスケジュール感を出していた。
ヨーカ堂の既存店売上高は8月まで12カ月連続で前年実績を下回るものの、「利益改善は進み、黒字化に向けて順調に推移している」(セブン幹部)という。一段の成長戦略を示すため、IPO前に株式を売却する方針に転換した形だ。
1990年代までヨーカ堂は日本の小売りをけん引する存在だった。祖業の衣料品を武器に売上高は一時1兆円を超えたが、2000年代からは「ユニクロ」などの専門店に攻め込まれ業績低迷に苦しんできた。
今回、ヨーカ堂の運営主体が変わることになれば国内の小売業にとっても大きな転換点となる。
セブンを巡っては、カナダのACTが7月、全株式を6兆円規模で取得する内容の買収提案をしたが、セブンは「企業価値を著しく過小評価している」などと回答した経緯がある。
セブンにとって収益面で課題となっていたヨーカ堂の売却に踏み切ることで企業価値を引き上げ、ACTの買収ハードルを高める狙いもある。
セブン&アイ・ホールディングス(HD)がカナダのコンビニエンスストア大手、アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けました。実現すれば海外企業による日本企業買収としては最大級となる見通し。ニュースの行方を追います。
日経記事2024.10.04より引用