ワルツ氏㊨は下院議員時代に共和党が強い農村地域で議席を維持した=ロイター
【ワシントン=坂口幸裕】
米主要メディアは6日、米民主党のハリス副大統領が11月の大統領選をともに戦う副大統領候補に中西部ミネソタ州のティム・ワルツ知事を指名すると報じた。
農村部や白人の票を掘り起こし、勝敗を分ける激戦州での勝利につなげる狙いがある。
ハリス氏は黒人女性、アジア系として大統領をめざす。ワルツ氏の起用は、非白人や女性の支持に強みを持つハリス氏を補完できる。
ワルツ氏は現在60歳。中西部ネブラスカ州ウエストポイント出身で、17歳で陸軍州兵に入隊した。米チャドロン州立大を卒業後、ネブラスカなどの高校で教壇に立った。中国で英語を教えた経験もある。20年以上従事した州兵の幹部を務めた。
教員時代に出会ったグウェン夫人と1994年に結婚。夫人の地元であるミネソタ州に移った。高校でフットボールのコーチを務め、州大会で優勝に導いた。
2006年の連邦議会下院選で劣勢を伝えられていながら共和党候補に勝利。18年の州知事選に出馬して初当選した。
現在2期目で、全国民主党知事会の会長を務める。公立学校の給食無償化や労働者の有給休暇拡大などリベラルな政策に取り組んだ。
ワルツ氏が知事を務めるミネソタ州は民主優位の「ブルーステート(青い州)」と位置づけられる。大統領選では1972年に共和党のニクソン氏が勝利したのを最後に、民主の連勝が続く。
ハリス氏がワルツ氏を選んだ背景には、下院議員時代に共和が強い農村地域で議席を維持し、都市部に強い民主の弱点を補える可能性があるとの計算が働く。隣接する激戦州の中西部ウィスコンシン州などでの浸透を見込む。
米メディアは「中西部の裏庭でのバーベキューで出会うような男」と表現する。
西部カリフォルニア州出身でインド系の母を持つ黒人女性という多様性を体現するハリス氏と対照的に、伝統的に共和が地盤とする白人が多い農村部の票を取り込む狙いがある。
ワルツ氏が候補に急浮上した要因として、トランプ前大統領やその支持者を「奇妙な(weird)やつら」と呼んでSNSを通じて一気に広がったことも大きい。
民主支持層を中心に浸透した。ハリス陣営もトランプ氏や副大統領候補のJ・D・バンス上院議員を攻撃する際に多用し始めた。
副大統領候補には東部ペンシルベニア州のジョシュ・シャピロ知事の名前も挙がっていた。
ユダヤ系のため、パレスチナ自治区のガザ情勢を巡りパレスチナに同情的な有権者に配慮し、同氏の起用を見送ったとみられる。
分析・考察
これまで激戦州のペンシルバニアのシャピーロ知事やアリゾナのケリー上院議員の名前も出ていたが、やや知名度に劣るミネソタ州知事のウォルツを選んだのか。
いずれも白人男性が候補に挙がっていたので、誰が出ても「ハリス氏の弱みを補完する」ことになったが、全国的な知名度が低いというのがどう影響するのか、気になるところ。
元々学校の歴史の先生だったウォルツだが、自分が歴史の教科書に載る存在になるのかもしれない。
<button class="container_cvv0zb2" data-comment-reaction="true" data-comment-id="44677" data-rn-track="think-article-good-button" data-rn-track-value="{"comment_id":44677,"expert_id":"EVP01017","order":1}">42</button>
2024年に実施されるアメリカ大統領選挙に向け、現職のバイデン大統領やトランプ氏などの候補者、各政党がどのような動きをしているかについてのニュースを一覧できます。データや分析に基づいて米国の政治、経済、社会などに走る分断の実相に迫りつつ、大統領選の行方を追いかけます。
続きを読む