ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

カリフォルニア農業のお供

2021-11-13 | 自然の中で

Photo by Ryan Bourbour.

 

 

カリフォルニア州中部に住むわたしたちは、サンノゼやサンフランシスコなどの海辺沿の都市へ行く時、州フリーウェイのCA-152Wを使い、西へひた走り、パチェコ峠を越えてしばらくすると合衆国フリーウェイUS101に入りそのまま北上してそれぞれの目的地へ向かう。我が家の北側にある郡からパチェコ峠の山に入るまでは広大な農地が広がり、果樹、オリーヴ、くるみ、ピスタチオ、コットン、牧草、そしてレーズンの農地である。そこをいつも通っているうちに最近あることに気がついた。畑の周りには大抵いくつかの鳥の巣箱を上につけたポールが建てられている。夫に聞くと、フクロウ用で、フクロウに害虫・害獣を退治してもらうのだと言う。なるほど!最近日本でもよく耳にするSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)である。

北カリフォルニアの日本でもおそらく名前の知れたナパバレーのワイン醸造業者は、害虫駆除のために、超毒性の農薬から離れて、翼のある特別労働者に目を向けている。

特にメンフクロウだけでなく、タカやその他の猛禽類も、野ネズミやクマネズミなどのラット類を捕食し、葡萄園から害虫・害獣を退治してくれるので、カリフォルニア中の農家に歓迎されていると言う。科学者たちはこれらの戦略の影響を研究しているが、すでに超毒性のある農薬使用を離れて、こうした鳥たちによる将来有望な結果が見つけられている。

 

owlpages.com

フクロウや猛禽類用の巣箱がいくつか設置されている葡萄園

 

何年もの間、カリフォルニアのワイン醸造業者は、ナパの葡萄栽培が世界クラスのワインを産出し、ナパ固有の良いワインには特有の「なにか良いもの」が含まれているということを誇りにしてきた。

ところが、葡萄農家は、葡萄の木をむさぼり食らうネズミやハタネズミを駆除するために超毒性の「齧歯類駆除剤・殺鼠剤」 を使用していた。こうしたやり方は、猛禽類を使っての害獣駆除方法がより一般的になる1980年代まで、州の業界標準であった。

非営利団体の「ナパ・グリーン」によると、カリフォルニア州全体で化学物質を使用しない農業への転換傾向は、2005年以降の有機ワイン用葡萄の作付面積の3倍の増加を見た点に反映されており、有機作付面積の数は過去10年間で2倍になっているのだそうだ。

世界で最も効率的な害虫・害獣駆除業を盛んにするのはメンフクロウであると言う。メンフクロウは、7つの大陸のうち6つに生息し、毎年3,400匹の齧歯動物を食べることができる。このフクロウはよく農家の納屋に巣を作り、英語では納屋フクロウと呼ばれる。夜間畑に潜む害獣を捕食しているのを私も南加に住んでいた頃、何度か見たことがある。暗闇の中、運転する車のヘッドライトにふわっと浮き上がるように飛び立つこのフクロウはやけに大きく白く見え、まるで幽霊が浮かぶように見えた。

 


 

Courtesy of Humboldt State

メンフクロウ

 

カリフォルニア州立大学フンボルト校のマット・ジョンソン野生生物教授は、葡萄園での猛禽類の害虫駆除を研究し、その結果を研究するためのプログラムを数年前に開始した。大学院生のブルックス・エステスによる調査では、75人のカリフォルニアの葡萄栽培者の5分の4が、巣箱を作ることによって意図的にフクロウを自分たちの土地に招いていることがわかった。

「私たちは主に、300以上のメンフクロウの巣箱があるナパ・バレーで働いているのです」とジョンソン教授は彼の部門のウェブページに書いている。

「メンフクロウの巣箱を、問題を起こす小さな哺乳類がよく現れる正確な場所に設置します。フクロウはただちに、その地域を使って活動を始めます。」と地元の鳥類学者のジョンC.ロビンソン氏はベイ・ネイチャー・マガジン誌に語った。

ジョンソン教授と彼の大学院生たちは、巣箱が地面から少なくとも9フィート高く、太陽​​直射の反対に向けてあり、草地フィールドに隣接して、できれば森林地帯から遠く離れて建てられているのをメンフクロウが好むことを発見した。

初期の調査では、葡萄園主はメンフクロウを使用するだけでなく、罠なども使用していた可能性があることが示唆されているが、どれだけの化学農薬使用が回避されたかは不明であるそうだ。

フクロウの使用は罠による捕獲よりもはるかに安価であるため、そこに誘因がある。齧歯動物1匹あたり26セントであるのに対し、罠捕獲は8.11ドルである。 また、美しい種の野生動物が繁栄するのにも役立つ。

やや南のベンチュラ郡では、殺鼠剤の代わりに、タカ、ハヤブサ、フクロウなどの猛禽類を100近くの堤防やダムで使用している。これは、齧歯動物の巣穴が構造物に損傷を与える可能性があるのを防ぐためだ。 ベンチュラ郡流域保護局は、捕獲罠と比較して、運河1マイルあたり$216,000のコスト削減を報告している。

フクロウや猛禽類による害虫・害獣駆除は、ワインメーカーが生産コストを下げるのを助けるだけでなく、葡萄園をより緑化し、生態系をより健康に保つ。これは、定評のある有名なワイン葡萄栽培をする土地としての威厳を保つ結果にもなる。

人体にも有害な化学農薬がいつ葡萄やその他の農産物に混入するかわからないことがある故、自然界と折り合いをつけて害獣・害虫を駆除して、よりより食品を生み出していくことは、まさに農家にとっても消費者にとってもWinーWinの結果に繋がる。こうした科学者の研究は生産者、消費者そして環境にもありがたいことである。

 

 

Courtesy of Humboldt State

巣箱の設置も待ちきれないフクロウ:人間と動物の共存がお互いに良い結果を出している。

 

 

 


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