歴タビ日記~風に吹かれて~

歴タビ、歴史をめぐる旅。旅先で知った、気になる歴史のエピソードを備忘録も兼ね、まとめています。

平城宮跡さんぽ~長屋王のこと

2022-12-31 06:59:00 | 奈良県
12月に奈良を旅したおり、
ちょこっとだけ平城宮跡を歩きました。

その「歴タビ」記事の前に、まずは、ちょこっと長屋王について
備忘録を兼ね、まとめておきたいと思います。


【長屋王事件】
奈良・平城京で起こった長屋王事件

長屋王(ナガヤオウ)が、聖武天皇の皇太子・基皇子(モトイノミコ)を呪詛し、
死に至らしめたと嫌疑をかけられ・・・
結果、神亀6(729)年2月12日、
聖武天皇から死を命じられ、自死した事件です。


(建部門<東院南門>平城宮跡歴史公園)


【長屋王事件のゆくえ】

基皇子は、聖武天皇と妻・光明子との間に、ようやく誕生した男子。

聖武天皇は、この子を、わずか生後30日で
皇太子に立てたほど喜んだだけに・・・
1歳足らずで亡くなったことは、どれほど衝撃だったか・・・

しかも、それが呪詛による死と聞けば、
頭に血が上るのも無理なからず。
天皇とはいえ、まだ27歳の若い父親ですから・・・

呪詛の密告を受け、2日後には、長屋王を自死させてしまったのです。
どう考えても、もう少し調べておくべきだったはず・・・

案の定、
数年後、長屋王無罪とわかります。
当時、この事件が冤罪だったことは、公然の秘密となったのでした。



(朱雀門を眺める。平城宮跡歴史公園)


【「大化の改新」の影響】
ここで少し、時代をさかのぼり・・・

皇極天皇4年(645年)の「大化の改新」。
立役者は、中大兄皇子大海人皇子中臣鎌足
それぞれ、後の天智天皇天武天皇藤原鎌足です。

わたしたちにとっては、遠い遠い昔のできごとですが、
長屋王の事件があった頃からいえば、80余年程前のこと。
令和のわたしたちが終戦の頃を思うのと同じくらいでしょう。
平城京の頃と、今は平均寿命が違いますがw)

長屋王の時代は、「大化の改新」の曾孫の世代、
まだまだ、その関係者には生々しかったはず・・・


大化の改新からあと、藤原京・平城京の時代は、
兄・天天皇系が皇位を継いでいました。
(ご参考までに、下の系図をご覧下さい)

の娘・元明天皇、孫・元正天皇
どちらも曾孫の聖武天皇が即位するまでの
「中継ぎ」的な女性天皇でした。


(遠山美都男『天平の三皇女』33頁より)


【長屋王の血統】
一方の長屋王は弟・天皇の孫ですが・・・

妻は元正天皇の妹・吉備内親王天皇の孫です。
つまり、二人の子どもである、膳夫(カシワデ)ら4人の男子は、
の曾孫であるだけでなく、の曾孫なのです。

聖武天皇の子である基皇子は、の系統ではありますが、
母は臣下の藤原氏出身の光明子
そもそも、聖武天皇自身も、母親は、同じく藤原氏宮子なのです。

血統的には、息子や妻も含め、
長屋王が皇位を継承してもおかしくありません。

そのことが、藤原氏長屋王を危険視させた・・・
長屋王自身が息子の皇位継承を願った・・・

などなど、あれこれ想像をかきたてられ・・・
1300年後の今も、フィクションが誕生するのでございます♫



【「長屋王事件」を扱ったフィクション】
わたしが読んだフィクションは、
里中満智子『長屋王残照記』(講談社)葉室麟『緋の天空』(集英社)

里中版の長屋王は、あくまでもクリーン。
高潔な人物です。
自分の血筋を意識すればこそ「皇室の藩屏(ハンペイ=護る人・立場)」として
まっすぐに生きようとします。

一方で葉室版では、高潔な人柄は長屋王の息子・膳夫に凝縮され、
父の長屋王は、息子の膳夫に皇位を継承させようと
腹黒い企みすら実行します。
といっても、私利私欲からではなく、台頭する藤原氏を抑えるためです。

もっとも、この「皇室の藩屏」の意識は
長屋王に邪心がなくとも、一方で不遜と誤解を与えかねないこと
だったと指摘されることでもありました。(瀧浪72頁)

結果として、それが「長屋王の変」につながったのでしょう。



【プロローグ!?】
えんえんと、ここで長屋王について語ったのは・・・

これからアップしたい記事、平城京めぐりのプロローグなのです。
葉室麟『緋の天空』に刺激を受けまして・・・
記事を更新した暁には、またお訪ねいただけると嬉しいです。

まずは、本日も、おつきあいいただき、どうもありがとうございました。

****************************
本記事は、以下の図書を参考にまとめましたが、
わたしの勘違いや思い違いもあるかと存じます。
素人のこととお許し下さいませ。

◆参考
●瀧浪貞子『光明皇后』中公新書
●遠山美都男『天平の三皇女ー聖武の娘達の栄光と悲劇』河出文庫
●里中満智子『長屋王残照記』講談社コミッククリエイト
●葉室麟『緋の天空』集英社文庫

この記事についてブログを書く
« 藤原京は優美に~古代の都へ | トップ | 「どうする家康」~三河ことば♪ »
最新の画像もっと見る

奈良県」カテゴリの最新記事