歴史の足跡

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歴史は語る・40・平安の文人在原業平

2014-12-07 08:12:08 | 例会・催事のお知らせ
四十、平安の文人在原業平(ありはらなりひら)

平安初期の多恨、多情の歌人在原業平は平城天皇の皇子阿保(あぼ)親王(しんのう)と桓武天皇の皇女伊登親王を父母として誕生をした。
七歳上の兄の行平がいた。天長三年(826)臣籍に降下された時にこれらの兄妹は在原朝臣の氏姓を与えられた。
業平は五男にして、後に右(う)近衛権(このえごん)中将(ちゅうじょう)に在五中将と言われた。古代でも名前を省略して通称として「在五中将」と呼ばれていたことになる。血筋的には申し分ないが、皇統外であったので比較的自由な立場で行動でき、振る舞うことが出来た。
父親王はあの承和の変で異常な密告者として、その後わずか三カ月後に世を去った。その時には業平は十八歳、さぞ肩身の狭い思いをしただろう。
この事件を境にして藤原良房は権勢を振るう様になった。嘉祥二年(849)ようやく業平は従五位に叙せられたのが二十五歳になっていた。
時は仁(にん)明帝(みょうてい)が亡くなって、文徳が即位し、良房が孫惟仁親王が皇太子になって、外戚として権勢を振るう中、対立候補の惟(これ)喬(たか)親王(しんのう)の生母静子が業平の妻の父有常の妹で、紀家と業平は惟喬親王が立太子になる事を望んでいただろうが、その望みも絶たれた。
業平の希望は断ち切られ、その後は貴公子業平として『日本(にほん)三代(さんだい)実録(じつろく)』の伝える所に寄れば「業平体貌閑麗、放縦拘わらず、略才学有り、善く倭歌を作る」と人物を評している。
好色で、放浪的で、秀でた和歌の天性を表していているのではないだろうか。
また時の権勢を誇った基経の妹高子とのロマンスは宮廷の噂になったのだろう。高子は清和天皇の妃であり、際どい恋ではなかっただろうか。
その他業平と伊勢の斎宮との恋にも浮名を流したと言う。業平の伝説には貴賎に関わらず情を交わした話が筆者の母の在所の河内地方にも語り残され大和から河内へと峠を越えて通う業平の伝説は残されている。「業平の河内通いの小提灯」が残されている。
平安時代の貴族の恋は通い夫で、摂関の女御の必須条件は帝に自分の娘に通って皇子を生ませることに懸っていたように、一夫多妻制の貴族世界では業平にとって都合の良い制度であったのは確かである。
基経の妹の高子との色恋沙汰は一種の計算づくであって、官人のとしての役職は「応天門事件」の前年で右馬頭の職位で十一歳年下の基経は四十才にして右大臣左近衛大将を堀川弟の祝いの席で
「さくら花ちりかいくもれ老いらくのこむちうなるみちまがふに」とやるせない心情を詠っている。
やがて官職の座から疎外され、五十三歳仁して右近衛中将となって、佐賀権守、美濃権守を兼任したが、他の兄弟とは差が付いたものであった。
生涯参議には付けず、世俗にまみれることになって行った。だが残された歌の数々は後世に広く影響と感銘を与え五十六歳の生涯を閉じた。
★在原業平(825~880)平安時代の歌人。三十六歌仙の一人。平城天皇の皇子阿保親王の五男、母は桓武天皇の皇女伊都内親王。天長三年(826)兄行平と共に在原姓を名乗る。官人としての出世は遅く、歌人としての道を歩む、最終官職は右近衛権中将で業平の事を「在中将」と呼ばれた。
紀名虎の娘を妻とし文徳天皇皇子で名虎の女所生の惟(これ)喬(たか)親王(しんのう)に親近、源融嵯峨源氏とも親しんだ。情深く、色を好んだのは有名、公家から一般庶民の女性まで色恋沙汰の伝説は多い。享年56歳である。

◆六歌仙
*在原業平
*僧正遍昭で父は桓武天皇の皇子良岑安世。蔵人頭に官職を務めたが、仁和元年(885)天皇の死に従い出家。比叡山で円仁・円珍に師事し僧正に上り詰めて七十賀(しちじゅうじゅうが)を賜る。
*文屋(ぶんや)康(やす)秀(ひで)、三十六歌仙の一人。二条后高子のもとで詠作や小野小町との交遊が知られる。
*喜撰(きせん)は宇治に隠遁したと言うこと以外詳細は不明。
*小野小町は小野宰相常詞の娘、小野常澄の女と言う説もある。
*柿本(かきのもと)人麻呂(ひとまろ)、時期としては草壁皇子没時の挽歌。明日香皇女没時の挽歌。宮廷儀礼などの専門歌人。*山部赤人(やまべのあかひと)、下級官人聖武天皇の行幸に伴う作が多い。

※西行や一休のように好胤説もあるが、両親とも血筋の良い業平は出世に不遇、持って生まれた歌人としての才能を発揮した。また多くの女性と関係を持ち「色男的存在」まるで源氏物語の主人公の光源氏のように、女性から女性に渡り歩き、叙情を優先させる詠風が「その心余りて言葉たらず。しぼめる花の色なくして匂い残れるが如し」と高い評価をうけた。






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