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ちぎれ雲

熊野取材中民俗写真家/田舎医者 栂嶺レイのフォトエッセイや医療への思いなど

岩尾別神社、長い間おつかれさまでした

2008-09-08 | 知床
9/6現在の岩尾別神社。ついに屋根も倒壊しました。


私の代表写真でもあり、写真展のタイトルバックにも使わせてもらった、ありし日の岩尾別神社


 タクシー運転手のSさんが「観光客を乗せた時は、道路から見える開拓の跡も説明するようにしているんだけど、神社は無くなっちゃったのかね? 神社がないんだよ。隣の馬頭観音は見えるんだけどさ。」と言うので、岩尾別神社を確認しに行ってきました。
 ・・・・?
 あれ、本当だ、無い・・・・!!?
 道路からでも注意すればよく見える神社の屋根がまったく見えません。たしかに、馬頭観音は今まで通り見えるので、ササが覆い隠してしまったというわけではなさそうです。まーじ? 一体何が起こったんだろう???
 薮をこいでナラ林の中に踏み入って行くのですが、目印の屋根がまったく見えないので、位置の見当がつきません。ササの中をジグザグに、この辺りと思う方向に向って進んでいくと、突然神社の跡に出て、残骸を踏みそうになって飛び退きました。
 よかった、無くなってはいなかった。
 でも、ああ、たしかに、これでは見えないはず。
 当時の原型をかろうじてとどめていた神社の屋根は、完全に倒壊して、見ただけでは何だかよくわからない材木の残骸になって地面に横たわっていました。この春までの雪か、夏の大雨でついに崩れたと思われます。折れて屋根に寄り掛かっていた木の枝も、落ちて残骸に突き刺さり、形がなくなるのも時間の問題かと思われます。
 また一つ形ある遺産が無くなったな、という気持ちとともに、思わず「おつかれさま」と口をついて出ました。言ってから自分でもびっくりして、
「そうだよ、本当だよ、おつかれさまでした。」
 神社の残骸に向って深々と頭を下げました。
 開拓者の人々が、知床五湖への道が拡張されるたびに2度も引っ越しさせて、大事に祈ってきた神社です。そして、この3年間、何度も何度も私の写真に写ってくれた神社でした。
 残念、というよりも、ああ、もういいよなぁ、こうやって、あとはササに覆い尽くされて、それでもう十分だよなぁ、という、それまで踏んばっていたものが解けて解放されていくような、すがすがしくさえあるような気持ちになりました。
 何でもかんでも「知床の大自然!」に結論づけけられることをイヤがる自分ですが、この時ばかりは、自然に還っていく姿があまりにもすうっと溶けていくようにまっとうすぎて、「知床の自然」もいいかも、と思った瞬間でした。


さらにありし日の貴重な写真。昭和40年代、山崎猛さん撮影


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