赤ガエルのボンヤリ日記

クルマもカレラ、自転車もカレラ、
すべて前世紀生まれの乗り物を愛する、クルマバカオヤジの中身うすーい日記です。

今年の3冊 【活字編】

2007-12-29 23:51:01 | こんな本を読んだ
今年も早いものでもうすぐ終わり。ちょうどいろんなところで今年一年を振り返る企画が行われている。恒例の?今年読んだマイベスト本はなにか、リストアップをしてみることにした。

その1:『メディア・バイアス』 著:松永和紀 光文社新書(No,298)


今年上半期のマイベスト。あるある・みのもんたに始まり、一応はまともと思われているメディアまで、現在のマスコミに広く蔓延する問題点をとてもわかりやすく解説してくれている。あえて問題点を挙げるとしたら、本来この本を読むべき人はみのもんたは見てもこの本は買いそうにないことか?

まず何がよいかというと、説明の正確さとわかりやすさのバランス感覚がとてもよい。
食品に限らず自然界で起こる現象の因果関係はとても複雑であって、正確な説明をシンプルに表現するのはとても難しい。細かく説明したら付いていけないし、はしょりすぎては正確性が落ちる。とかく他人に説明するってのは難しいもの。それをこの本ではちょうどいい按配でぼくたちに教えてくれる。

この本で指摘されていること、「○○は健康に良い、××は悪い」という単純二分思考の危うさ、効能・副作用から都合のいい箇所だけを抜き出して騒ぐ愚かしさ、「昔は良かった・正しかった」というこれまた単純なだけの思考停止のトリック、どれもこれも常日頃のメディアやぼくらの間で見かけるものばかり。

白と黒、+と-、2つに分けるだけの単純思考をいましめ、功と罪を両にらみしつつその時々での最善解を見つけていく、そんな"大人"がすべきものの見方をしっかり教えてくれる良書としてイチオシです。
ぜひ買って読んでください!

とあえて言うのは、有益な情報を手に入れるためには、供給側に対してわれわれもそれなりの対価を返さなければならないと思うから。
"おもいっきり"クズな番組の視聴率を上げるくらいなら、真っ当な情報を経済面からバックアップしなけりゃ自分自身の将来が危ないですよ。ホント。

その2:『流れる星は生きている』 著:藤原てい 中公文庫BIBLIO20世紀


その名は昔から聞いていた。作家・新田次郎の妻にして夫より先に流行作家となった藤原ていの大ベストセラー。ぼくらは直接接していないが、戦争直後の時代にはとてもよく知られた本だったらしい。
新田次郎は好きな作家で昔いろいろ読んだので、その妻である著者の描く家族のドラマには関心があった。古い作品なので本の形でお目にかかる機会がなかったのだが、中公文庫で再刊となり手に取ることができた。

昭和20年8月9日夜、旧満州で気象台の課長であった藤原寛人(のちの新田次郎)と妻のていは、ソ連参戦の報を聞いてほとんど着のみ着のままで満州から日本に向けて逃避行を始める。職場を見届けようと残った夫と別れ、背中に1ヶ月の赤ん坊、両手に幼い息子2人を引きながら、彼女はひたすら祖国を目指して逃げる。
どんな苛烈な目にあおうとも、この母は決してあきらめず前へ前へ進んでいく。息子が瀕死の重病となろうとも、同胞の日本人に欺かれて置き去りにされようと、常に自分で最善と思う方向に向かってもがきながら、運命の扉を無理やりにでもこじ開けていく。
(ジフテリアで死に掛けた息子に、高価な血清を与え救ってくれた朝鮮人医師の姿は感動的だ)
全編通じてそうやって過酷な現実を乗り越えてきたという迫力と、母親という存在の強靭さ、あわせ持つか弱さとがいやおうなしに胸に突き刺さってくる。
さらにこの母の強さが如実に現れているのは、自分自身にとってもつらく暗い出来事でさえ、逃げることなく書き綴っていくその姿だろう。

騙される一方で、著者自身も他の同胞を欺いたり裏をかいたりしてなんとか家族4人の生きる糧をつかんできた。苦しい状況の中では子ども3人すべてを救うのはムリではないか?あきらめるならいちばん衰弱した背中の娘ではないかと悩んだことも隠さず記している。赤ん坊だった娘は大きくなって母のこの本を読み、自分が母を苦しめた事実と、母が自分をあきらめる筆頭候補に考えたという事実とをしって衝撃を受けたという。それは衝撃も受けるだろう。娘は自殺を考えたり、母に反発して関係をうまく築けなくなったりもしたという。(母の晩年になって娘のわだかまりも解けて関係が改善された様が、娘の著作に記されているという。それを知ってこちらも心のつかえが取れたような気がした)

藤原家は父も大きい人だったが、母は本当にでっかい人だったのだ。
これだけの母がありながら、まあこんな風どうにもできが悪いのは一体どうしたことでしょう。

ダメなせがれなんぞどうでもいいが、この母のこの渾身の一作、必読に値します。

その3:『無人島に生きる十六人』 著:須川邦彦 新潮文庫
 子どもにやろうと思って買ったんだけど...

大人が読んでも大変面白い。なにより明治時代にこんな痛快な"サバイバル"を成し遂げた男たちが実在したことと、それを伝える"少年冒険譚"が書かれていたという事実に感動。子どもは読もうとしないけど、オヤジは夢中になってあっというまに読んじゃいました。暮れになって見つけたヒット作。

明治31年5月20日、ハワイから日本に帰ろうとしていた帆船、龍睡丸はミッドウェイ近くの暗礁に座礁、船長以下16人の乗組員は草しか生えていないサンゴ礁の小島に漂着した。9月3日に全員無事救出されるのだけど、それまでの3ヶ月あまりをこの16人の海の男たちは、見事としか言いようのない共同生活を営んでみせる。

井戸を掘る
見張り台をつくり交代で救援船を探す
小屋を立て雨水をためて水を確保する
ロープをほどいて魚網をつくり魚を採る
海がめを捕まえロープでつないで放流して"牧場”とする。
別の島を見つけて食料(海がめ・野草)・材木などの資源を本島に送る(植民地?)
塩を効率よく作るため海綿を使う
植民島でみつけた果物を食べてビタミン補給
さらに果物の苗や種を本島に移植
島に住むアザラシと仲良くなり交流を楽しむ
スポーツ、演芸会などの娯楽の場を設ける
若者への読み書き・語学・航海術・生物の授業を行う
その他その他...

すばらしいリーダーとこれまた頼りになる補佐役がいて、グループを的確に統率しつつメンバーがそれぞれの持つ能力を充分に発揮し、決して悲観せず常に前向きに自分たちの置かれている境遇をよりよいものにしようと協力する。ちょっとできすぎじゃないかというくらいの見事な団結ぶり。

もちろんこの本はあくまでも"正しい少年向け健全冒険物語"であるので、実際の無人島生活がこんなに正しく美しいことばかりだったとは思わない。あたたかい海域での遭難であり、荒れる冬季を前にして救出された幸運も、彼らの生存を楽にしたのだろう。以前読んだエンデュアランス号のシャクルトン隊とは置かれた状況が違いすぎる。
それでも航路から外れ救援のめどもない一隊が、ここまで結束して生活を実りあるものにできたということには素直に敬意を表したいし、少年読み物としてきっちりまとめられたこの1冊にも素直な気持ちで感服した。

いろいろあったこの1年だけど、最後にこの1冊に出会っていい気持ちで終われそうです。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ご無沙汰です (アルファのS)
2008-01-01 16:12:02
赤ガエルさん、

明けましておめでとうございます。

〇〇〇部のSです。近ごろは会議で顔を合わせませんけどお元気でしょうか?



またお会いしたら仕事ぬきの漫画話しましょう!
返信する
おひさ! (赤ガエル)
2008-01-02 18:45:08
おひさしぶりです。元気にしてますか?

>仕事ぬきの漫画話しましょう!

いいですねぇ。ぜひ!
ところでアルファはまだ壊れてないの?
返信する

コメントを投稿