赤ガエルのボンヤリ日記

クルマもカレラ、自転車もカレラ、
すべて前世紀生まれの乗り物を愛する、クルマバカオヤジの中身うすーい日記です。

行ってきました、「若冲と江戸絵画展」

2007-06-14 01:12:04 | とりとめなし
というわけで、(1週間も過ぎてますが)ようやく行ってきました、「若冲と江戸絵画展」 いやあ、よかったです。見といてホントよかった。感動しましたわ。

噂に聞く相国寺の120分入場待ち(参照:花龍さんの日記)に恐れをなして、名古屋でもすんごい混んでるんじゃないかとビビッて出かけたわけですが、さいわいこっちはそれほどのムチャ混みではなかったです。助かりました。
しかしそれにしても平日のお昼前にしてはかなりの人出、さすがは都会、この間の豊田市美術館とはずいぶん違う。

愛知県美術館に入るのは今日が始めて。

名古屋のど真ん中「栄」の久屋大通に面したとても便利な場所にある。やっぱ街は便利でいいねぇ。

美術館があるのはビルの10Fだが、ビル内はずどーんと吹き抜けになっていて、なにやらでっかいオブジェが。


それではチケットを買って入ってみましょう。

エントランスにはわりあい年配の人が目立ちます(江戸の日本画だからね)が、なかにはいかにも美術系学生風やら、"今日は母と一緒に栄でお買い物です"風なお嬢さまもちらほら。ちなみに美術館で若い女性を見ると、もうそれだけでぼくの脳内ポイント+50点です。

会場内は決して混みあってはいないけど人出が途切れることもなくで、まずは自分の好きなペースで好きな位置から眺められていとよろし。

とりあえず動きが自由とみてあまりじっくりと粘らずにコースを一回りしてしまう。あらかたどこになにがあるか当たりを付けておいて、出口で半券にスタンプ押してもらっていったん退場。ミュージアムショップを覗いて昼食も済ませて一息ついてから再入場。今度は気持ちに引っかかったものを中心にちょっと時間掛けて拝見。

期待していた森狙仙(そせん)の猿の画、猿猴狙蜂図梅花猿猴図の二幅は期待したとおり猿の表情がとてもよかった。特にふわっとした毛の質感が本物よりふんわりしてそう。(この"本物より"ってとこがキーポイント?)

そして看板の若冲、やっぱり定評のある鶏の画は細密さと鮮やかさとが群を抜いてる。
ポスターにもなってる紫陽花双鶏図はやっぱりニワトリ目つき凶悪! 
描かれてるのはオスとメスのカップルのはずなのに、どうにもこのふたり?仲良しには見えない。
オンドリは首や尾の羽根を逆立ててメンドリを睨みつけてるし、持ち上げた左足はケリでも入れてやろうか?という風情。
メンドリは首をすくめて防御一方の姿勢でコーナーに追い詰められた形?
トサカのぶつぶつから羽根のグラデーションまで完璧に描きこまれてるし、細部は異様なまでにリアルなのに、画全体を見たときの印象は、
「リアルすぎて?現実から離れてる」というものだった。

フランドルの静物画とも20世紀のスーパーリアリズムとも違った、遠近感が抜けた不思議な細密さ。
伝統的な造形描写と新奇さが同居してバランスが取れてる奇妙さ。
なんだか見てると目がくらくらしてきそう。

お次に登場するのが今回の最大の看板作品、「鳥獣花木図屏風」 左隻 右隻 が壁面をおおっている。
さすがに注目度も高くて、展示スペースの前には近くから見つめる人、ソファに座ってじっくり眺める人とさまざま。一番観客の集まりがよかったのがこのコーナー。

で、じっくりと拝見してみると。
他のもそうだけど、よくまあここまで大がかりなものを描いたもんだなあ・・・と。

なんでこんな大きな画面いっぱいにポチポチを(一隻43000以上)くりくりと塗るのか?
画面に出てくるオウムもインコもヒクイドリまで、全部本物に忠実に書いている。こんなもん江戸時代に姿を知るだけでも大変だったんじゃないのか?
なんでこんなにまでして他と違う新しいことをせにゃいかんのか?
クリエイターってのはいろんな意味で大変だ・・・創造力のない身には想像もつかないパワーが要るんだろうねぇ。

続いて若冲や曽我蕭白の水墨画があらわれて、色彩にチカチカしていた目がちょっと一息という感じ。

残るコーナーは「江戸の画家」と「江戸の琳派」
こちらに来ると色彩も目に優しく、題材や構図もびっくりするような奇抜さはないけどある意味安心して鑑賞できる。

酒井抱一の十二か月花鳥図には、クレマチスの元祖、カザグルマとおもわしき花の姿が。ただカザグルマにしては花色がかなり濃い。地域によって色の変化が激しい種類だから、これくらい青い系統が茶花用に栽培されていたのかも知れぬ・・・などと他の観客とは若干ズレた妄想をしばしめぐらせる。

見たいと思ってた暁斎の「達磨図」は予想通り?というか予想以上に衣のすばやい筆さばきがよかった。ピーンと張り詰めたような緊張感と、一発で形を決めてしまう鮮やかさにはまいった。

鈴木其一の群鶴図屏風も、其玉の「杜若白鷺図」も、きれいな色と余白とのバランスが目に優しくて見ていていい気分になりそうな画。



さて、昼メシ挟んで2回会場をぐるぐるして、歩き回ったりジーッと眺めたりでけっこう疲れたりもしたけれど、最終的にぼくが一番よかったなぁと思った作品はといえば、
「鶴図屏風」「花鳥人物図屏風」の屏風2双。特にひとつに絞るなら「花鳥人物図屏風」をマイベストに推したい。

鶴図も花鳥人物図も、シンプルな一筆の流れで鶴や人物の輪郭がびたっと表現されているうまさに参った。デフォルメや簡略化と同時に、鮎はきっちり鮎の形が描かれているしニワトリの造形も一発の筆さばきで決めている。鶴や人物はしゅっと描いた楕円形でしっかり形ができてしまってる。

ちなみになんだかどうにも気になったのが「鶴図」に描かれた鶴たちの、どうにもやる気なさそうなまなざし
これはあの凶悪なニワトリのガン付けマナコとはまったく違う。なんだかもう眠いというか、
「もーオレ、どーにもやる気ないから」
といった半分ふてくされたような?風情が可笑しい。

そのまなざしにはなんだか見覚えがあるような気がして仕方なかったのだけど、しばらく見ていて気がついた。
「らんま1/2のパンダの目だ」 (知ってる人にはわかってもらえるか?)


帰りにミュージアムショップにて展示会の図録と「小学館ウィークリーブック No,13」を購入。持ち帰って図録を見直すと、いいなと思った物をじっくり思い返したり、気づかなかったことを教えられたりして楽しい。
小学館の雑誌のほうは薄いけど今回展示以外のさまざまな作品が紹介されていてこれまた見てて楽しい。
ただしこれを見るとやっぱり相国寺の展示を見に行くべきだったかなあと思えてくる。これは逆効果だったかも。

いずれにしても、今回のプライス氏のコレクションがこれだけまとまって日本に里帰りする機会は当分ないだろう。まず今回はこのコレクションを見られたことでよしとしよう。


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