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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

刑事司法「改革」1 毒まんじゅうを丸呑みした日本弁護士連合会は、あの上西小百合議員より劣っている。

2015年07月04日 | 刑事司法のありかた


弁護士魂
土屋公献 (著)
現代人文社

学徒出陣、そして敗戦…。激動期から今日まで、弱者の立場から社会正義の実現に邁進してきたザ・弁護士土屋公献先生(私が東京弁護士会にいたころの日弁連会長)が、その半生と弁護士活動を語る。

扉の裏に掲げられた短歌

「余生をばどう生きようと勝手なり ならば平和へ生命捧げん」

 

 

 今の国会には安倍政権ならではの問題法案が続々と提出されています。

 うちのブログでは戦争法案や労働者派遣法改悪・残業代ゼロ法案のことを主に書いていますが、ひときわ恐ろしい異彩を放っているのが刑事司法「改革」関連法案と呼ばれるものです。

 この「改革」では、大きく分けて以下の4つの「改正」が含まれています。

1 取り調べの一部可視化

2 通信傍受法=盗聴法の拡大

3 司法取引の導入

4 証人調べの一部制限

 これらの刑事司法「改革」は、自白の強要を防ぐため、全面的に取り調べ可視化を導入するのが目的のはずでした。

 なぜなら、この改革は、村木さんが違法捜査で逮捕・起訴された郵便不正事件や、菅家さんが強制的に自白させられた足利事件などのえん罪事件を検察庁が起こしたことをきっかけに法制審議会で議論され始めたからです。

 ところが、いつの間にか、取り調べを可視化するなら捜査権限も拡大しろと2・3が入ってきてしまいました。しかも、1の取調の可視化がきわめて不十分だということはすでに書きました。

「可視化義務付けの対象は、裁判員裁判対象事件と検察独自捜査事件で逮捕・勾留された事件だけということで、重大事件や特捜部が捜査する事件は含まれるものの、その対象事件の件数は年間10万〜11万件程度ある逮捕・勾留事件の3〜4%でしかないというんです。

 そうすると、残りのほとんどの97%の事件、その中には冤罪が多いとされる痴漢事件や、鹿児島県議選を巡る買収があったとして13人が起訴され、亡くなった方お一人を除いて12人全員が無罪となって確定した「志布志事件」のような、警察が手がけた公職選挙法違反事件は可視化の対象にならないことになります。
 
 こうなると、もうこれは警察庁、法務省に軒を貸して母屋をとられたと言うべきで、この刑事司法「改革」関連法案を成立させる意味は全くないと言えるでしょう。」

刑事司法関連法案の通信傍受法=盗聴法拡大、司法取引はもちろん、中途半端な取調べ可視化にも反対する。

 

 

 遅ればせながら、これからシリーズでこの刑事司法「改革」批判をしていきたいと思うのですが、2・3の問題点をざっとあげると以下の通りです。

 まず、2についてですが、そもそも、1999年に通信傍受法=盗聴法が制定される前は、盗聴捜査は通信の秘密を不当に侵害し、令状主義になじまないということで憲法違反の捜査方法とされていました。

 なぜなら、盗聴はその性格上、対象となる犯罪と無関係な会話まで警察が聞いて録音できてしまうので通信の秘密を侵害するからです。

 また、裁判官が令状を出すときに事前審査しようと思っても、これからどんな会話がされるか捜査機関にもわからないので令状請求の時に対象を特定できず、裁判官が捜査の必要性・相当性を判断できないからです。

 しかし、1999年に通信傍受法ができてしまったわけですが、この際、日弁連=日本弁護士連合会を中心に大反対運動を展開した結果、

1 盗聴の対象となる犯罪を組織ぐるみによる薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人に限定4類型に絞り込ませ、

2 NTTの職員が盗聴に立会しないといけない

と最小限に限定させることに成功しました。

 ところが、今回の法案は、盗聴対象の限定を外して、一般刑法犯である傷害・窃盗・強盗・詐欺・恐喝などにまで拡大してしまっています。

 ちなみに、特に刑法の犯罪で一番件数が多いのは窃盗で、実に一般刑法犯の4分の3を占めていますから、これに傷害だの詐欺だのを加えてしまうと、ほとんどの犯罪が盗聴の対象になると言えます。

平成26年度 犯罪白書より。平成25年認知件数 窃盗 981,233件 窃盗を除く一般刑法犯 333,250件)。

 

 

 しかも、これまでの盗聴はNTTのような通信管理者の立会が必要だったのですが、警察庁・法務省がそれは邪魔だと言いだし、立会人を排除し、通信管理者に命じて全ての通信を暗号化し警察のコンピューターに伝送させ、暗号を復元して盗聴できるようにするのです。

 ある被疑者の携帯電話、電子メールなどが盗聴対象となると、その相手方とのやり取りが全部盗聴されますから、犯罪と無関係の通信が警察に「盗み聴き・盗み見」され、プライバシー侵害がさらに大規模となることは明白です。

 末尾の記事にあるように、なんとこれまでの盗聴でさえ、盗聴した85%の会話は犯罪と全く無関係だったことが明らかになっています。

 これから一般犯罪が対象となって盗聴がどんどん行われると、それを口実に警察が膨大な通信にアクセスできますから、市民の通話やメールや室内外での会話は、警察に全部筒向けとなってしまいます。

 さらに、刑事司法改革関連法案の第2の問題は、警察官、検察官が被疑者と協議し、「他人の犯罪事実」を供述することと引き換えに、自分の犯罪について不起訴や軽い罪での起訴など、便宜をはかってもらう「司法取引」制度導入です。

 これまでも、「共犯者」のウソの供述を証拠に、犯罪と無関係の他人がえん罪で刑務所に行かされた事件が多数起きており、自らが浮かび上がるために他人を陥れかねない共犯者の供述こそ、最も危険な「証拠」です。

 これを「司法取引」で利用すると、えん罪の危険は飛躍的に高まることになります。

司法取引には2種類あることがわかる。これがおとり捜査と結びつくと、あとで無罪放免になる「共犯者」がそそのかして、犯罪をする気がなかった人に「やる気」を起こさせ捕まえることさえ可能になる。



 刑事司法「改革」関連法案の危険性はおおまかにはわかっていただけたでしょうか。

 今回、問題にしたいのは、この法案に対する日本弁護士連合会の態度です。

 末尾の日弁連の会長声明を、早くからこの「新捜査法」に警鐘を鳴らしていた畏友森川文人弁護士に言われて、さっき読んで仰天したのですが、日弁連は取調べの可視化のわずかな前進と引き換えに、盗聴法拡大も司法取引も全部ひっくるめて、法案に賛成してしまっているのです。

 わたくし、ええええええ!!????と叫んで、目を疑ってしまったのですが、日弁連はこんな会長声明を2014年7月2015年3月5月と出しているのです。

「本法律案が、充実した審議の上、国会の総意で早期に成立することを強く希望する。」

 どしぇ~~!

 わたくし、この前の日弁連会長選挙で頼まれて、この会長さんが憲法に熱いとお聞きして、会ったこともないのに推薦人になってしまっているんですが!(大汗)

 会長声明曰く、

「また、本法律案には、通信傍受の拡大、捜査・公判協力型協議・合意制度のいわゆる司法取引制度の導入など、証拠収集手段の多様化も盛り込まれた。

当連合会は、通信傍受制度の安易な拡大に反対してきたところであるが、補充性・組織性の要件が厳格に解釈運用されているかどうかを厳しく注視し、人権侵害や制度の濫用がないように対処していく。

いわゆる司法取引についても、引き込みの危険等に留意しつつ、新たな制度が誤判原因とならないように慎重に対応する。」

 なんじゃこりゃ~~!

名作刑事ドラマ「太陽にほえろ!」で松田優作演じるジーパン刑事(デカ)が、助けてやったチンピラにいきなり銃で腹を撃たれて殉職するときの、ドラマ史上に残る名セリフがこれ。

「なんじゃ、こりゃ!」

松田優作はあえて格好の悪い最期を望んでこういうシーンになったという。



 日弁連会長は

「厳格に解釈運用されているかどうかを厳しく注視し、人権侵害や制度の濫用がないように対処していく。」

「新たな制度が誤判原因とならないように慎重に対応する。」

などと言っていますが、

そんなことが不可能だから反対してきたんでしょうが!

 盗聴や司法取引は密室で密かに行われるのに、どうやって注視したり、対処したり、慎重に対応したりできるんですか!

 弁護士ができるのは、全部、違法捜査が行われた後のチェックだけで、弁護士が弁護人などとして介入するのは人権侵害が行われた後です。

 また、事後のチェックだって、網羅的に違法捜査全部を摘発することなんて全く不可能です。

 日弁連は、取り調べの一部可視化が「アンコ」だと称して、猛毒まんじゅう全体をいきなり丸ごと食っちまえというのです。

 それは

「本法律案については、多くの制度がひとつの法案に盛り込まれていることに批判もあるが、答申にも述べられているとおり、複数の制度が一体となって新たな刑事司法制度として作り上げられているものである。」

からだというのですが、たとえば、盗聴は通信傍受法の問題だから、これは分けて反対すると言えばいいじゃないですか。刑事訴訟法の改悪だって、取調べの可視化には賛成するが、司法取引などには反対だと言えばいいだけのこと。

 戦争法案と同じで、政府が全く問題が違う法案をまとめて出してくるのが問題なのに、その土俵に乗って、一括して賛成か反対しかないので賛成って、どゆこと!? 

 見損なったわ、日弁連!

 20世紀に弁護士になった人間は、かつては弁護士会に対する絶対の信頼があったんですがねえ。日弁連が世論だの政治の駆け引きだのを気にするようになってから、本当にダメになってしまいました。

 弁護士の仕事は少数者の人権を守ること、たとえ犯罪を犯した人でも被告人の権利を守ることであり、常に市民社会の中で少数派になることの覚悟が必要な仕事のはずなのに。。。

そういえば、わたくしの刑事訴訟法の授業では、この「太陽にほえろ!」(ショーケン演じるマカロニ刑事が一番好き!)や藤田まことの「はぐれ刑事純情派」とか水谷豊の「相棒」とかを題材にしてきたのですが、違法捜査のオンパレードですな、日本の刑事ドラマ(笑)。

「24」ほどじゃないけど(爆)。

そして、捜査機関と対峙するはずの日弁連がもはやジーパン刑事並みの瀕死の状態。

 

 

 そして、この問題を調べていたら、衆議院本会議を「仮病」でサボって秘書とどっかに行って大問題になった、あの元維新の上西小百合議員が、BLOGOSでまともなことを言っているのに二度驚きました。

 彼女はこの関連法案が審議されている衆院法務委員会に所属していたんですね。

 彼女はこう書いています。

「ただ私は改正法案が「取り調べの全面可視化」をすることを否定し、個人情報漏洩の温床となり易い通信傍受の範囲を大幅に拡大いている点などから究極において今回の改正法案に全面的な賛成をすることに躊躇を感じています。」

 上西さんでさえ(失礼)、全面的に賛成をすることに躊躇を覚えているのに、弁護士がなあ。

 彼女はその理由として、取り調べの可視化が全く不十分だとも述べています。

「憲法では有罪とすべき証拠が被告人の自白だけであったならば有罪とはならない旨の規定もありますが、密室での取り締まりは被疑者や参考人を精神的に圧迫し、恐怖さえいだいて無実の者が犯してもいない逮捕事実、要するに有罪を認める例は古今東西しばしば見られてきたことです。

その冤罪をなくするためには前述のように完全可視化、つまり全部の取り締まりをするべきなのに、改正法案は「必ず可視化すべき事件」を裁判員裁判の対象となる殺人罪などの凶悪犯や政治家の汚職に代表される検察庁の特捜部が直接する捜査など極一部に限られているのです。」 

橋下徹維新の党最高顧問に使い捨てにされる上西小百合議員 「政治の天才」は醜聞議員を必ず除名にする

上西だけじゃない橋下維新のトンデモ議員 ひき逃げ、LINEでの中学生恫喝、婚約者へのDV、体罰・セクハラ

この人の方が日弁連よりまともって、どゆこと!?

 

 

 この刑事司法「改革」法案について、民主党は6月30日にこの刑事司法「改革」案の対案をまとめました。

 民主党がまとめた対案では、政府案に盛り込まれている司法取引の導入について、捜査を受けた人が自分の利益のために嘘の供述を行う危険性が高まるとして認められないとしています。

 また、電話やメールなどの傍受についても、政府案では警察官のみで可能になるため、現状のまま、対象の犯罪の拡大を認めず、事業者の立ち合いが必要だとしています。

 一方で、取り調べの可視化については、 取り調べ全過程の録音・録画(可視化)を義務付け、裁判員裁判事件と特捜部などが手掛ける検察の独自事件を対象とした政府案に加え、容疑者が自ら申し出た時についても可視化の対象に加えています。

 さらに、身柄を拘束されていない場合は取り調べを受ける本人が録音をできるようにするとしています。

 また、政府案が幅広く認めている可視化の例外については、災害によりやむを得ない場合と容疑者が拒否した場合に限定しています。

 民主党でさえ、取り調べを録音録画する場合は全面可視化、しかも被疑者が申し出たら全面可視化、身柄拘束されてない被疑者の録音認める、司法取引×、盗聴法拡大×と言っているわけです。

 上西議員ももう維新から離れて無所属ですから、この民主党案に賛成するんじゃないですか。

 日弁連もどうしてこれくらいのことが言えないのでしょうか。あれほど刑事事件に命を燃やしている立派な先生がいっぱいいるのに、そういう人が先頭に立って妥協しろと言っている。

 正論が通る弁護士会はどこに行った!




関連リンク

現代の治安維持法と闘う会


憲法と人権を守る日弁連をめざす会事務局長 武内更一弁護士の講演

「狙われている治安立法 政府・法務省のたくらみは何か」

 

 うちからもリンクさせていただいている森川文人弁護士の御苑のベンゴシ 森川文人のブログより

 

「しかし、私は「取り調べの録音・録画は可視化ではない」と言い続けています。「録音・録画≠可視化」と言っているわけです。」

『「誰が」録画するのか?「誰が」録画したものを再生できるのか?という点に私はこだわらざる得ません。』

「実際は、私の知る限り警察も検察も、決して公平ではなく、自分たちに都合の悪い証拠を自ら出すことはありません。経験済みです。」

「私は弁護人として、多くの公安事件、争いのある事件を国家権力=警察・検察と闘った経験からして・・・取り調べの録音・録画を、私たちにとって「可視化」とは呼べません。」

何故、取り調べの録音・録画は「可視化」ということになるのか?


 『茶色の朝』(フランク・パブロフ)で、最後、主人公はこうつぶやきます。
 「抵抗すべきだったんだ。でも、どうやって? 政府の動きはすばやかったし、俺には仕事があるし、毎日やらなきゃならないこまごましたことも多い。他の人たちだって、ごたごたはごめんだから、おとなしくしているんじゃないか?
 だれかがドアをたたいている。こんな朝早くなんて初めてだ。・・・」

政府の狙いは、誰にでもある弱さ(臆病、怠慢、保身等)につけ込んで、政府に異議を唱えることを萎縮させ、仲間を裏切らせ、疑心暗鬼に追い込み、人の繋がりをなんとしても破壊する、ということだと思います。

いまや、「茶色の朝」は、「焦げ茶色の午後」になりつつありますが、このまま、「真っ黒な戦時体制下の夜」を迎えるわけにはいきません。なんとしても、この法律をさせないよう頑張りましょう!

焦げ茶色の午後    あなたは、自由に考え、発言出来ている?


『この「司法取引」を「利用」すれば、政府の意向、つまり戦争協力や原発の再稼働に反対する人たちは、デモやビラ配りに際し、「転び公妨」(警官が何もされていないのにワザと転んで逮捕する伝統的手法)で参加者を一人逮捕することにより「反対派組織」全員が公務執行妨害で逮捕出来るかも?

 ともかく、ウソで他人を売って、それを貫けば、自分が処罰されないってことであれば必死に頑張って罪を逃れようとする虚偽証言者が増えるでしょうね。
 裏切りと仲間売り渡しの相互密告社会・・・私たちはそんなに強くない・・・警察と対等に「取引」できる人はいるのかな・・・
 まだ、法(案)です、成立はしてません。日弁連は腰砕けですけど、私たちは全力で反対しましょう!

司法取引・・・あなたは誰かに密告される?

 

 

今世紀に入って日本で一番変わったのが自民党と日弁連かもしれません。

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冤罪を生まない刑事司法へ (GENJINブックレット)
水谷 規男 (編集), 現代人文社編集部 (編集)
現代人文社

志布志事件、氷見事件、足利事件、郵便不正事件、布川事件…2000年代に相次いだ、再審無罪事件の数々は、「冤罪を生まない」刑事司法改革という大きな課題を突き付けた。社会の関心の高まりの一方で、改革のために作られた法制審議会の「新時代の刑事司法制度特別部会」では、取調べの可視化をはじめとする数々の改革項目が後退していると言われている。本書では、「特別部会」での議論を検証するとともに、「冤罪を生まない」刑事司法改革のために、何が必要かを提起する。

 
それでもボクは会議で闘う――ドキュメント刑事司法改革
周防正行 著
岩波書店
 
周防監督の孤軍奮闘は頭が下がるとしか言いようがない。
“場違いなところに来てしまった…”映画『それでもボクはやってない』で日本の刑事裁判の不条理を描いた監督が、思わぬ縁で法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」の委員に選ばれた。えん罪をなくすための改革を求めて闘った、葛藤の日々を自らつづる。異色のノンフィクション。



法務委員会で質問台に立ちました。(刑事訴訟法の改正案)

みなさん、こんばんは。

衆議院議員 うえにし小百合です。 
http://uenishi-sayuri.com/

法務委員会では刑事訴訟法の改正案が議題になっていますが、要するに、警察署や検察庁での被疑者等の取り調べの様子を録音・録画する、所謂「取り調べの可視化」「司法取引の導入」「通信傍受の拡大」が三本柱となっております。

私も原宿警察署・東京地検・東京地裁等へ視察に伺い、日々現場の状況や技術に関する説明を受ける他、幅広く有意義な意見交換を行わせていただく等しております。







去る6月9日、私は刑事訴訟法の改正案に『取り調べの可視化』というテーマを中心に質問をさせていただきました。

ただ私は改正法案が「取り調べの全面可視化」をすることを否定し、個人情報漏洩の温床となり易い通信傍受の範囲を大幅に拡大いている点などから究極において今回の改正法案に全面的な賛成をすることに躊躇を感じています。

そのような立場から、上川法務大臣や山谷国家公安委員長に対する質問を用意して臨みました。





憲法では有罪とすべき証拠が被告人の自白だけであったならば有罪とはならない旨の規定もありますが、密室での取り締まりは被疑者や参考人を精神的に圧迫し、恐怖さえいだいて無実の者が犯してもいない逮捕事実、要するに有罪を認める例は古今東西しばしば見られてきたことです。
その冤罪をなくするためには前述のように完全可視化、つまり全部の取り締まりをするべきなのに、改正法案は「必ず可視化すべき事件」を裁判員裁判の対象となる殺人罪などの凶悪犯や政治家の汚職に代表される検察庁の特捜部が直接する捜査など極一部に限られているのです。 


年間の実績をリサーチし再検討し直すとは言われていますが、郵便不正事件、足利事件など捜査権力の証拠捏造や不正確な証拠(足利事件の場合はDNA鑑定)などで取り返しの付かない結果を招く違法捜査により、なんの罪もない善人が突然犯人に仕立てられ、取り分け足利事件では長期間服役をし、袴田事件では死刑囚として長年社会から隔離された例を国民は目の当たりにしている訳ですから、本当にそれ等の反省がなされているのか甚だ疑問です。

また足利事件で有罪の大きな決め手になったのは今から約25年前の事件当時には、まだまだ科学的な根拠の乏しかった、粗雑なDNA鑑定鑑定のデータであったように、不適切な証拠や事案から有罪判決が下ったり、所有者に不告知のまま車にGPS(位置探索)装置を取り付けるという違法な手法が有罪の決め手となった例も続いていますから、その対策や立法の動きなどを質問し、冤罪壊滅のための提案を様々いたしました。

また可視化に対しては、録音機や撮影機が当然必要です。
そして、そのためには予算措置が必要ですが、前述のような状況を改善するためにも惜しむわけには行きません。 
来年度から検察官は、一人一台の録音録画機が購入され、警察署でも一台でも多くの購入ができるように来年度予算要求があるそうです。

*******************************

今回の私の法務委員会の質問にも多くの皆様方が応援のお手紙、メールやお電話を下さいました。
本当に励みになり、感謝の念に堪えません。

人権擁護のためにも警察署でも完全配備が実現することを目指し、今後もしっかりと法務委員会の質問台の場で国民目線の提案型の質問を行って参る所存でございますので、皆様方の忌憚のないご意見を是非お寄せいただければ幸いです。



被疑者取調べの全過程の録音・録画の義務付けをはじめとする刑事訴訟法等の一部を改正する法律案は、2015年5月19日、衆議院で審議入りした。

有識者委員が参加した法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」で約3年間の議論を経て全会一致で取りまとめられた答申に基づく本法律案は、被疑者取調べの録画の対象範囲が裁判員裁判対象事件及び検察独自捜査事件に限定されているものの、対象事件については全過程の録画を義務付けるものである。さらに、本法律案には、被疑者国選弁護制度の勾留段階全件への拡大、証拠リストの交付等の証拠開示の拡大、裁量保釈の判断に当たっての考慮事情の明確化、犯罪被害者等及び証人の保護措置の創設等の改正が含まれている。

また、本法律案には、通信傍受の拡大、捜査・公判協力型協議・合意制度のいわゆる司法取引制度の導入など、証拠収集手段の多様化も盛り込まれた。当連合会は、通信傍受制度の安易な拡大に反対してきたところであるが、補充性・組織性の要件が厳格に解釈運用されているかどうかを厳しく注視し、人権侵害や制度の濫用がないように対処していく。いわゆる司法取引についても、引き込みの危険等に留意しつつ、新たな制度が誤判原因とならないように慎重に対応する。

本法律案については、多くの制度がひとつの法案に盛り込まれていることに批判もあるが、答申にも述べられているとおり、複数の制度が一体となって新たな刑事司法制度として作り上げられているものである。

当連合会は、長年にわたり、刑事司法改革を訴え、全件全過程の被疑者取調べの可視化に取り組んできたが、この刑事訴訟法改正により、複数の重要な制度改正とともに供述調書に過度に依存せず、取調べの適正な実施に資する制度が本格的に導入されることで、全体として刑事司法改革が確実に一歩前進するものと評価している。本法律案が、充実した審議の上、国会の総意で早期に成立することを強く希望する。

えん罪を生まない刑事司法制度の確立は当連合会の真に求めるものである。その実現には、理念に則った弁護実践とともに、制度の適切な運用と不断の見直しが不可欠となる。当連合会は、市民・関係者、全ての弁護士、弁護士会とともに、改革をさらに前進させるために全力を尽くす決意である。

  2015年(平成27年)5月22日

日本弁護士連合会      

 会長 村 越   進 

 

 

通信傍受85%が事件と無関係 8万8千回、通知なし

2015年06月05日 03時00分

 2000年施行の通信傍受法に基づいて、組織的な薬物犯罪などの捜査で通信傍受が計約8万8千回行われ、うち85%は事件とは無関係な内容だったことが4日、分かった。無関係な通信傍受は当事者に通知されない。国会で審議中の同法改正案は、現行法が4分野に限定した傍受対象の犯罪に詐欺や窃盗など9分野を加える内容で、知らない間に通信傍受されるケースが格段に増えるのは確実だ。

 現行法は、傍受対象を組織ぐるみによる薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人に限定。法務省が運用状況を毎年、国会に報告している。14年までの15年分を同省がまとめ、改正案を審議する衆院法務委員会で説明した。

 それによると、捜査機関は283件の傍受令状を裁判所に請求し、281件で認められた。8万7814回の電話やメールを傍受したが、事件と関連があったのは15%に当たる1万3499回のみ。傍受によって計525人を逮捕した。

 一方、85%の7万4315回は事件と無関係で、大半は容疑者と家族らの日常会話とみられる。11年のある銃刀法違反事件捜査では、傍受した2721回が全て事件と無関係だった。

 通信傍受法は捜査機関に対し、事件に関係する傍受内容だけを記録にまとめ、傍受相手に30日以内に通知するよう義務付けている。通知を受けた人は記録消去を求めて不服申し立てができる。無関係な内容は捜査機関の記録から削除され、容疑者と通信相手には通知もされない。削除に通信事業者ら第三者の立ち会いはなく、捜査機関を信用するしかない。裁判所には無関係な部分も含め全記録が一定期間保管される。

 改正案では傷害、放火、恐喝、児童ポルノ事件でも組織的犯罪の疑いがあれば傍受できる。犯罪との関係の有無は通信を聞いてみないと分からず、無関係な通信が傍受されるのは法律の構造的な問題といえる。法務省は「捜査に関係があるかどうか判断するため、極めて最小限、限定的に傍受しており、手続きを適正に踏んでいる」と説明している。

 ◆悪用防止へルールを

 ジャーナリストの大谷昭宏さんの話 プライバシー侵害は高価な物を盗まれるより重大な場合がある。犯罪と無関係な部分は削除しているという捜査当局の説明も第三者による検証はできず、根拠が示されていない。収集した情報の漏えいや悪用を防止し、処罰するルールが必要だ。

=2015/06/05付 西日本新聞朝刊=

 

 

取り調べの可視化拡大=刑訴法改正、民主が対案

 民主党は30日、衆院で審議中の刑事訴訟法改正案について、容疑者取り調べの録音・録画(可視化)の対象を広げることを柱とした対案の骨子をまとめた。政府案に盛り込まれた通信傍受の拡大や司法取引の導入には反対している。これに基づき、法案の修正を与党に申し入れる方針だ。
 政府案は取り調べ可視化を裁判員裁判と検察の独自捜査に限定しているが、民主党案は逮捕・拘留中の被疑者の申し出がある場合などに対象を拡大。通信傍受の対象拡大は「プライバシー侵害につながる」として認めず、司法取引も「虚偽の証言により冤罪(えんざい)を生む」との理由から導入見送りを主張している。 (時事通信 2015/06/30-21:25)


毎日新聞 2015年06月30日 22時36分

 国会で審議されている刑事訴訟法などの改正案について、民主党は30日、政府案から司法取引の導入と通信傍受の対象拡大を除外した独自案を発表した。

 司法取引は、他人の犯罪を解明するために協力すれば検察が起訴を見送ったり取り消したりできる制度。民主党は「虚偽の供述により無実の他人が巻き込まれる恐れがある」と批判していた。

 通信傍受の対象は現在、薬物犯罪など4類型だが、政府案では組織性が疑われる窃盗や詐欺など9類型を追加。NTTなど通信事業者の立ち会いもなくすため「プライバシーが侵害される」との懸念もあり、民主党案では現行のままとした。

 一方、取り調べ全過程の録音・録画(可視化)を義務付け、裁判員裁判事件と特捜部などが手掛ける検察の独自事件を対象とした政府案に加え、民主党案では容疑者が自ら申し出た時についても可視化の対象に加えた。

 政府案が幅広く認めている可視化の例外については、災害によりやむを得ない場合と容疑者が拒否した場合に限定した。(共同)

 

 

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4 コメント

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blog管理者様へ (西郷)
2015-07-04 14:21:46
>弁護士の仕事は少数者の人権を守ること、たとえ犯罪を犯した人でも被告人の権利を守ることであり、常に市民社会の中で少数派になることの覚悟が必要な仕事のはずなのに。

これは弁護士として基本であり、正しいことだと国民は誰一人として異論はないと思います。
しかし
天児都さんに対して弁護士は「日本弁護士連合会はあなたと立場が違うから弁護できない」と断りました。
詳細は書きませんが日弁連の体質に先生が驚くことに、一読者として私の方が驚きますよ。
返信する
皮肉 (リベラ・メ)
2015-07-04 15:55:52
“上西議員が”真っ当な発言、“日弁連が”〔毒喰らわば皿まで〕のような見解。これぞ皮肉と言わずして何と言う。
返信する
質問:会長声明の出し方 (ホタル)
2015-07-05 10:59:35
日弁連の会長声明は、内部の委員会などで議論や承認を行なって出されるのですか? それとも会長一人の権限と責任で決定して出すのですか? 

日弁連に所属されている宮武さんが「えー!」と驚かれているのを読んで、声明発表の手続きってどうなっているのだろうと、初めて気になりました。

宇都宮健児さんの時の会長声明は「よくぞ言ってくださった」というものが多く、日弁連は信頼できるという印象を持っていたので、何の疑問も浮かびませんでした。




返信する
各地方の弁護士会では (raymiyatake)
2015-07-05 11:20:47
関連する委員会が案を練って、代議員会で承認を得て、会長声明を出します。

日弁連の場合も、今回なら刑事司法関係の委員会で案を練って、理事会かなんかで承認を取ったと思いますね。

つまり、会長個人の問題ではなく、日弁連執行部の問題なのです。
返信する

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