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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

真珠湾攻撃と広島・長崎への原爆投下は等価ではない。

2016年12月27日 | 人権保障と平和

 

 今年、オバマ大統領が広島を訪れ、慰霊をしたのとまるで交換のように安倍首相が真珠湾を訪問し、2016年12月28日に慰霊することが気になってなりません。

 それでは、真珠湾攻撃と原爆投下がまるで等価のようです。

 日本のアジア地域に対する植民地支配と侵略戦争に、アメリカなどへの戦争を含めて、アジア太平洋戦争と呼ぶのが一般的ですが、真珠湾攻撃はアメリカに対する参戦ではあっても、日本の侵略戦争全体を見ればごく一部の戦闘行為にすぎません。

 日米の学者やオリバーストーン監督らが、真珠湾を訪問する安倍首相に対して公開質問状を出した中に

「それなら、中国や、朝鮮半島、他のアジア太平洋諸国、他の連合国における数千万にも上る戦争被害者の『慰霊』にも行く予定はありますか」

とあるのは当然です。

 ですから、アメリカによる広島・長崎への原爆投下は、日本の侵略戦争の中での行為ですから、日本の戦争責任を抜きにして、広島・長崎への原爆投下だけを問題にすることはできません。

 しかし、あえて、アジア太平洋戦争の中で真珠湾攻撃と広島・長崎への原爆投下を切り取って比べてみると、単純に死者数で言うと前者が2400人、後者は1945年内にその100倍が亡くなっています。

 しかも、その後も原爆症で被爆者は病気に苦しみ、また死に続けており、これは国際人道法で禁じられている戦争終結に不必要な苦痛を与えるものです。

 さらに、真珠湾攻撃の場合、あくまでも戦艦などに対する攻撃が主で、亡くなったのはほとんど戦闘員だったのに対して、原爆投下で犠牲になったのはほとんどが無辜の(罪のない)市民であり、これも国際法で禁止されている無差別殺戮です。

 こうしてみると、真珠湾攻撃について国際法上問題なのは戦争開始が宣戦布告をしない前のものだったというのすぎないのに対して、アメリカの原爆投下は不必要な苦痛を与える無差別殺戮として数十万人を殺害した戦争犯罪と言えるものであり、その違法性の大小は比べ物になりません。

 ですから、広島・長崎への原爆投下を持ち出すと、アメリカがリメンバー・パールハーバーというとしたら、死者数だけでも100分の1の、比較対象にもならない軽微な戦闘行為を持ち出して差し引きゼロにしようとする物であって、それこそナンセンスなのです。

 最初に述べた様に、オバマ大統領が広島に来て、安倍首相がハワイに行って、なにか手打ちが済んだような顔をするのは対等な外交とは言えません。

 日本は真珠湾攻撃を含む植民地支配と侵略戦争を真摯に反省し、謝罪しなければなりませんが、同時に広島長崎に対する原爆投下や東京などへの無差別殺戮に対する反省と謝罪をアメリカに求めていくべきです。

 それが真に対等な外交といえるでしょう。

 

 

二日続けて記事を書けて良かったです。我ながらホッとしました。

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安倍首相へオリバー・ストーン監督ら公開質問状「日本が攻撃したのは真珠湾だけではない」【全文】

投稿日: 2016年12月26日 10時48分 JST 更新: 2016年12月26日 10時53分 JST
SHINZO ABE

 

 

 
 

安倍晋三首相がハワイの真珠湾訪問するのを前に、日米の歴史学者ら約50人が12月25日、首相宛てに歴史認識を問いただす公開質問状を発表した。真珠湾だけでなく、中国や朝鮮半島、アジア諸国の戦争犠牲者の慰霊に行く予定があるかなどと質問している。共同通信などが報じた。

質問状を出したのは、映画監督オリバー・ストーン氏や、米プリンストン大学のリチャード・フォーク名誉教授(国際法)、アメリカン大学の歴史学の教授で核問題研究所長のピーター・カズニック氏、哲学者で東大教授の高橋哲哉氏、 放射線防護学者で立命館大学名誉教授の安斎育郎氏(平和学)ら53名。

質問状は、1941年12月8日に日本が攻撃した場所について、「真珠湾だけではありません」と指摘。安倍首相は真珠湾攻撃で死亡した約2400人のアメリカ人の慰霊のために訪問することを挙げ、「それなら、中国や、朝鮮半島、他のアジア太平洋諸国、他の連合国における数千万にも上る戦争被害者の『慰霊』にも行く予定はありますか」などと尋ねている。

また、安倍首相が2013年に国会で、「侵略の定義は定まっていない」と答弁したことにも言及。「連合国およびアジア太平洋諸国に対する戦争と、すでに続行していた対中戦争を侵略戦争とは認めないということでしょうか」と問いただした。

以下に、公開質問状の全文を紹介する。


真珠湾訪問にあたっての安倍首相への公開質問状
2016年12月25日

親愛なる安倍首相、
安倍首相は先日、1941年12月8日(日本時間)に日本海軍が米国の海軍基地を攻撃した際の「犠牲者を慰霊する」目的で、12月末にハワイの真珠湾を訪問する計画を発表しました。

実際のところ、その日に日本が攻撃した場所は真珠湾だけではありませんでした。その約1時間前には日本陸軍はマレー半島の北東沿岸を攻撃、同日にはアジア太平洋地域の他の幾つかの英米の植民地や基地を攻撃しています。日本は、中国に対する侵略戦争を続行するために不可欠な石油や他の資源を東南アジアに求めてこれらの攻撃を開始したのです。

米日の開戦の場所をあなたが公式に訪問するのが初めてであることからも、私たちは以下の質問をしたく思います。

1) あなたは、1994年末に、日本の侵略戦争を反省する国会決議に対抗する目的で結成された「終戦五十周年議員連盟」の事務局長代理を務めていました。その結成趣意書には、日本の200万余の戦没者が「日本の自存自衛とアジアの平和」のために命を捧げたとあります。この連盟の1995年4月13日の運動方針では、終戦50周年を記念する国会決議に謝罪や不戦の誓いを入れることを拒否しています。1995年6月8日の声明では、与党の決議案が「侵略的行為」や「植民地支配」を認めていることから賛成できないと表明しています。安倍首相、あなたは今でもこの戦争についてこのような認識をお持ちですか。

2) 2013年4月23日の国会答弁では、首相として「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない」と答弁しています。ということは、あなたは、連合国およびアジア太平洋諸国に対する戦争と、すでに続行していた対中戦争を侵略戦争とは認めないということでしょうか。

3) あなたは、真珠湾攻撃で亡くなった約2400人の米国人の「慰霊」のために訪問するということです。それなら、中国や、朝鮮半島、他のアジア太平洋諸国、他の連合国における数千万にも上る戦争被害者の「慰霊」にも行く予定はありますか。

首相としてあなたは、憲法9条を再解釈あるいは改定して自衛隊に海外のどこでも戦争ができるようにすることを推進してきました。これがアジア太平洋戦争において日本に被害を受けた国々にどのような合図として映るのか、考えてみてください。

1. Ikuro Anzai, Professor Emeritus, Ritsumeikan University 安斎育郎、立命館大学名誉教授

2. Herbert P. Bix, emeritus professor of history and sociology, Binghamton University, SUNY ハーバート・P・ビックス、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校歴史学・社会学名誉教授

3. Peter van den Dungen, Formerly, Lecturer in Peace Studies, University of Bradford, UK, and general coordinator of the International Network of Museums for Peace ピーター・バン・デン・デュンゲン、元ブラッドフォード大学(英国)平和学教員、世界平和博物館ネットワーク総括コーディネーター

4. Alexis Dudden, Professor of History, University of Connecticut アレクシス・ダディン、コネチカット大学歴史学教授

5. Richard Falk, Albert G. Professor of International Law and Practice, Emeritus, Princeton University リチャード・フォーク、プリンストン大学国際法名誉教授

6. John Feffer, Director, Foreign Policy In Focus, ジョン・フェッファー、「フォーリン・ポリシー・イン・フォーカス」ディレクター

7. Norma Field, Professor emerita, University of Chicago ノーマ・フィールド、シカゴ大学名誉教授

8. Kay Fischer, Instructor, Ethnic Studies, Chabot Collegeケイ・フィッシャー、シャボット・カレッジ(カリフォルニア州)講師

9. Atsushi Fujioka, Emeritus Professor, Ritsumeikan University 藤岡惇、立命館大学名誉教授

10. Joseph Gerson (PhD), Vice-President, International Peace Bureau ジョセフ・ガーソン、国際平和ビューロー副会長

11. Geoffrey C. Gunn, Emeritus, Nagasaki University ジェフリー・C・ガン、長崎大学名誉教授

12. Kyung Hee Ha, Assistant Professor, Meiji University 河庚希、明治大学特任講師

13. Laura Hein, Professor, Northwestern University ローラ・ハイン、ノースウェスタン大学教授(米国シカゴ)

14. Hirofumi Hayashi, Professor, Kanto Gakuin University 林博史、関東学院大学教授

15. Katsuya Hirano, Associate Professor of History, UCLA平野克弥、カリフォルニア大学ロスアンゼルス校准教授

16. IKEDA Eriko, Chair of the Board, Women's Active Museum on War and Peace(wam) 池田恵理子 アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)館長

17. Masaie Ishihara, Professor Emeritus Okinawa International University 石原昌家、沖縄国際大学名誉教授

18. Paul Jobin, Associate Research Fellow, Academia Sinica, Institute of Sociology
ポール・ジョバン 台湾国立中央研究院社会学研究所 アソシエート・リサーチ・フェロー

19. John Junkerman, Documentary Filmmaker ジャン・ユンカーマン、ドキュメンタリー映画監督

20. Nan Kim, Associate Professor, University of Wisconsin-Milwaukee ナン・キム(金永蘭)、ウィスコンシン大学ミルウォーキー校准教授

21. KIM Puja, Professor of Gender History, Tokyo University of Foreign Studies金 富子、ジェンダー史、東京外国語大学教授

22. Akira Kimura, Professor, Kagoshima University 木村朗、鹿児島大学教授

23. Tomomi Kinukawa, Instructor, San Francisco State University絹川知美、サンフランシスコ州立大学講師

24. Peter Kuznick, Professor of History, American University ピーター・カズニック、アメリカン大学歴史学教授

25. Kwon, Heok-Tae, Professor, Sungkonghoe University, Korea 権赫泰(クォン・ヒョクテ)、韓国・聖公会大学教授

26. Lee Kyeong-Ju, Professor, Inha University (Korea) 李京柱、仁荷大学教授

27. Miho Kim Lee, Co-founder of Eclipse Rising ミホ・キム・リー、「エクリプス・ライジング」共同創立者

28. Lim Jie-Hyun, Professor of transnational history, director of Critical Global Studies Institute, Sogang University 林志弦(イム・ジヒョン)、西江大学教授(韓国)

29. Akira Maeda, Professor, Tokyo Zokei University 前田 朗、東京造形大学教授

30. Janice Matsumura, Associate Professor of History, Simon Fraser University, Canada ジャニス・マツムラ、サイモンフレイザー大学(カナダ)歴史学准教授

31. Tanya Maus, PhD, Director, Wilmington College Peace Resource Center, Wilmington, Ohio タニア・マウス、ウィルミントン大学(オハイオ州)平和資料センターディレクター

32. David McNeill, Adjunct Professor, Sophia University デイビッド・マクニール、上智大学非常勤講師

33. Gavan McCormack, Emeritus Professor, Australian National University ガバン・マコーマック、オーストラリア国立大学名誉教授

34. Katherine Muzik, Ph.D., marine biologist, Kauai Island キャサリン・ミュージック、海洋生物学者(ハワイ・カウアイ島)

35. Koichi Nakano, Professor, Sophia University 中野晃一、上智大学教授

36. NAKANO Toshio, Professor Emeritus, Tokyo University of Foreign Studies中野敏男、社会理論・社会思想、東京外国語大学名誉教授

37. Narusawa Muneo, Editor, Weekly Kinyobi, 成澤宗男、『週刊金曜日』編集部

38. Satoko Oka Norimatsu, Editor, Asia-Pacific Journal: Japan Focus 乗松聡子、『アジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカス』エディター

39. John Price, Professor of History, University of Victoria, Canada ジョン・プライス、ビクトリア大学(カナダ)歴史学教授

40. Steve Rabson, Professor Emeritus, Brown University (U.S.A.) Veteran, United States Armyスティーブ・ラブソン、ブラウン大学(米国)名誉教授 米国陸軍退役軍人

41. Sonia Ryang, Director, Chao Center for Asian Studies, Rice University ソニア・リャン、ライス大学(テキサス州)チャオ・アジア研究センターディレクター

42. Daiyo Sawada, Emeritus Professor, University of Alberta ダイヨウ・サワダ、アルバータ大学名誉教授

43. Mark Selden, Senior Research Associate, East Asia Program, Cornell University マーク・セルダン、コーネル大学東アジア研究プログラム上級研究員

44. Oliver Stone, Academy Award-Winning Filmmaker オリバー・ストーン、アカデミー賞受賞映画監督

45. Tetsuya Takahashi, Professor, University of Tokyo 高橋哲哉、東京大学教授

46. Nobuyoshi Takashima, Professor Emeritus, the University of Ryukyus 高嶋伸欣、琉球大学名誉教授

47. Akiko Takenaka, Associate Professor of Japanese History, University of Kentucky竹中晶子、ケンタッキー大学准教授

48. Wesley Ueunten, Associate Professor, Asian American Studies Department, San Francisco State University ウェスリー・ウエウンテン、サンフランシスコ州立大学アジア・アメリカ研究学部准教授

49. Aiko Utsumi, Professor Emeritus, Keisen University内海愛子、恵泉女学園大学名誉教授

50. Shue Tuck Wong, Professor Emeritus, Simon Fraser University シュエ・タク・ウォング、サイモンフレーザー大学(カナダ)名誉教授

51. Yi Wu, Assistant Professor, Department of Sociology and Anthropology, Clemson University イー・ウー、クレムゾン大学社会学・人類学部助教授

52. Tomomi Yamaguchi, Associate Professor of Anthropology, Montana State University 山口智美、モンタナ州立大学人類学准教授

53. Lisa Yoneyama, Professor, University of Toronto リサ・ヨネヤマ、トロント大学教授

**********************************************************
Those whose signatures arrived after we released the letter. 発表後に署名が届いた人たちをここに記します(到着順)

Jenny Chan 陳慧玲, Assistant Professor of Sociology and China Studies, Department of Applied Social Sciences, The Hong Kong Polytechnic University 

Matthew Penny, Associate Professor, Concordia University (Canada

 
Peace Philosophy Centre: オリバー・ストーン監督、米日韓加中英豪沖台の専門家など53名 真珠湾訪問に際し安倍首相の歴史認識を問う Oliver Stone and internatonal scholars and activists send an Open Letter to Prime Minister Abe on the eve of his Pearl Harbor visitより 2016/12/25)

 

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私には (リベラ・メ(本物の))
2016-12-28 08:32:17
“私には”安倍総理が、“オバマ大統領が広島に来てくれたから”真珠湾に行ったとしか思えないのです…。
返信する
Unknown (なな)
2016-12-28 15:31:56
>ランキングも上位返り咲きを狙って

と記事中にありましたが、こちらのブログでもよく引かれている歌みたいに

「もともと特別なオンリーワン」な人による
「もともと特別なオンリーワン」なブログ

なのですから、いいんじゃないですか?ランキングなんて?などと考えました。

ランキング上位でなくても、良記事がたくさんの良ブログもたくさんありますし。

これからもご無理のない「もともと特別なオンリーワン」なペースで!(えらそうに聞こえたらごめんなさい)
返信する
相殺されない (cpd )
2016-12-28 17:50:34
なるほど、広島・長崎への原爆投下および東京などでの無差別殺戮と、真珠湾のことは、数の問題ではなく本質的に相殺されるものではないということ、とても理解しやすいです。
時々、まれにひょっこり現れる私の存在をおぼえていらっしゃらないでしょうが、お世話になっております。来年も、お世話になります。
返信する
当然ながら (時々拝見)
2016-12-29 14:20:30
偽右翼のバイコク系の人って、こういうこと言いませんね。
 詭弁を弄するなら、イスラエルが隣国を宣戦布告なしに爆撃したように、日本にとっての重大な脅威だったので、真珠湾攻撃は、現在でも認めらる行為とも言えるくらいなんですが。

 息長くブログ継続を。
返信する
稿を分けました。 (時々拝見)
2016-12-31 10:06:38
 広島・長崎の一般市民への原爆投下は人間とその集合体である人類に対する犯罪である。
返信する

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