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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

世界の人口が70億人を突破 食糧安全保障の1点だけでもTPP参加はやめるべきだ

2011年10月30日 | TPP参加反対


国連の推計で、世界人口が10月31日、70億人を突破します。

インドに旅行したときに、カルカッタで巨大な電光掲示板があり、なんの数字が動いているのかと思ったらインドの人口数でびっくりしたのを思い出します。

世界人口が10億人を超えたのは、まだインドが大英帝国の植民地だった1804年。その後、30億人に達するまでに155年かかりました。しかし、50億人になったのは1987年で30億人から50億人に達するまでに要した時間は、たったの28年。さらに20億人増の70億人に達するまでに24年しか経っていません。

今後の人口推計(中位推計)では、2050年には93億人に達 し、80年代には100億人を超える見通しです。



この人口の爆発的な増加は地球環境の悪化、エネルギーや資源の乱開発・枯渇といった多様な問題を引き起こすでしょう。

特に、水と食料の問題はすでに世界各地で顕著になり、すでに社会不安や飢餓や紛争を引き起こし、体制変革さえもたらしています。 

世界が直面する人口、食料問題の解決に向け、食料を安定的に生産する食糧安保を、我が国の安全保障問題の中核に据えるべき時です。

(今、地球はこんな感じ。。。。?)

 


地球上には、今現在、人口が1億人以上の国は世界に11カ国ありますが、この中で、飛び抜けて穀物自給率が低い国が日本で、たった28%しかありません。

次に低いメキシコは68%と、それでも日本の2.4倍の水準です。その他の9カ国のうち、150%の米国を筆頭に100%を超えている国が6カ国で残り3カ国も8割を超えています。

日本は実質的には飢餓の危機に直面していると言えます。

(もし国産品だけで三食まかないとしたら・・・という農水省のシミレーション。これはたまらん!)




この爆発的に増える人口に対し、今後の世界の食料生産は決して安心できるものではありません。穀物生産量は需要の増加とともに増加してはいますが、今、現に進行中のタイの洪水のように、近年は異常気象によって世界各地で自然災害が多発し、不安定さを増しています。

昨年にはロシアやウクライナが干ばつ被害を受け、小麦や大麦の輸出禁止や輸出枠の設定などを行ないましたし、オーストラリアでの干ばつや洪水なども発生し、穀物価格の高騰を招きました。

アフリカなどの飢餓も悪化の一途をたどっています。




日本の場合、不作への備えとなる穀物在庫は近年、適正在庫率(年間消費量の17%)は上回っているものの低下傾向にあります。農水省は今年発表した「世界の食料需給見通 し」で、20
20年の穀物在庫率は適正水準を割り込む15%と予測しています。米、小麦、トウモロコシ、大豆といった主要食料の価格は、2008年に比べ3割前後上昇するという試算もあります。

かつてフランスのドゴール大統領は「食料を自給できない国は独立国ではない」と述べ、フランスは今も、100%を超える食料自給率を維持し続けています。日本は食料自給率の向上目標を掲げてましたが、自給率はカロリーベースで40%を切って低下中です。


 

 


ところで、来月11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)を目前に控え、今まさに重要局面を迎えているのがTPP(環太平洋経済連携協定=Trans-Pacific Partnership)です。

 このTPPとは2006年5月にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国加盟で発効し、2010年には当初の4カ国に加え、米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが交渉参加した経済連携協定です。

 このTPPについてはいろいろな議論がありますが、この協定に参加しても「日本の食糧自給率は下がらない」と主張する人はさすがにいません。

もし、日本がTPPに参加すれば食料自給率がさらに低下することだけは、誰も争いようがない紛れもない事実です。



オバマ大統領は昨年1月の一般教書演説で、「今後5年間で輸出を倍増させる」構想を打ち出しました。その柱が韓国などとの二国間貿易協定=FTAやこのTPPなど各国との経済連携です。

TPPでは2015年までに加盟国間の貿易で、農業品、知的財産権、労働規制、金融、医療サービス、工業品などをはじめ、全品目の関税を10年以内に原則全面撤廃することを目標としています。

これに参加すると日本は実質的に関税自主権を放棄することになります。

野田・オバマ日米首脳会談はわずか35分の儀式 普天間基地移設問題に中途半端な「結果」は必要ない




野田首相は、TPPの交渉に参加する意向を固め、11月12、13両日にハワイで開かれるAPEC首脳会議の際に、関係国に交渉参加を伝達する方針です。

政府関係者によると、野田首相は、TPP参加に慎重な鹿野農水相と極秘の会談を重ね、鹿野農水相は、最終的に交渉参加を容認する考えを示唆したといいます。

これを受けて野田首相は、TPP交渉に参加する意向を固め、記者会見などの形で国民に説明し、APEC首脳会議の機会に、シンガポールのリー・シェンロン首相と会談し、参加方針を伝達し、交渉参加は国際公約にするというのです。

(美味しい日本米でも、長粒米にはともかく、寿司米にも使えるカリフォルニア米には圧敗するかもしれません。放射能汚染の心配もないし。。。。)




民主党の輿石幹事長のように「(野田首相が11月)11日に日本を離れるのに、10日には方向性が出てないのでは困るでしょ」「APECのあとも国民と議論する時間は十分ある」などと、交渉に参加しても中身が悪ければ離脱すれば良いなどと言う人がいますが、そんな無責任なことをすればかえって国際的な信用を落とします。

交渉途中での離脱など、できるわけもないし、すべきでもありません。それくらいなら最初から交渉に参加しないでおくべきです。

また、日本の工業製品輸出と農水産業とどちらが大切かという人もいますが、今、輸出において最も大事なのは為替、つまり円安誘導であり、TPPに参加したからと言って爆発的に輸出が増えるわけでもありませんし、逆に食糧安保は全国民の問題で、農林水産業に従事する人だけの話ではありません。




アジア太平洋と言っても、世界1位と2位の人口でこれから最も発展する中国(香港を含む)もインドも、アジアの中心である韓国もタイもインドネシアも台湾もフィリピンも参加していないんですから、無理することはありません。

それでなくても東日本大震災と福島原発事故で大打撃を受けた東北地方をさらに痛めつけることにもなります。

TPPは医療、労働など様々な問題点を含む協定ですが、とりあえず、農業、それも食糧安保の1点だけ見ても、絶対に参加すべきではないと考えます。

読売新聞は社説でTPP参加のため土地を奪う目的で、零細農家を補助金の対象から外せと主張する冷血新聞だ

(交渉に参加したが最後、抜けることもほとんど駆け引きすることも出来ないでしょう。アメリカがそんなに甘いわけがない)

 

 

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7 コメント

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基本的な矛盾の解決案を模索しようではないだろうか? (cafe新しいTPP協定参加加盟と農業補助金制度のテーマ )
2011-10-31 07:43:13
 このTPP協定に日本国が参加する加盟問題は、農業関税撤廃の国内自営が廃業の危機に見舞われる一方で、日本国内外の国益問題点として、工業製品の輸出をしなければ通商産業の市場で働く労働力を、維持できない矛盾を生じている。
 しかし、このテーマは、日本の江戸時代攘夷と明治時代開国の矛盾した危機を、如何に克服するかという、政治経済の社会構造改革に係る基本的な課題でもあって、以来、百数十年の歳月を費やして、試行錯誤を続けて来た課題でした。
 1945年の第二次大戦敗戦を迎えて、国連軍のマッカーサー総司令長官の下、米軍の占領下にあって、様々な改革を経て、その後、1973年石油危機にも経済社会制度と経済産業政策の改変を、余儀なくされた。
 明治以来の本件重要課題を、この東北大震災と福島原発爆発事故被曝の国難と併せて、対外外交政策に対応せざるを得ない羽目に陥った時期少壮の新しいテーマである。
 しかしながら、この外交課題に失敗すると、短期的にも、中長期的にも相当程度の損害を、国内外で一般国民が負わねばならないので、右の問題点を良く分析検証して、その抜本的な改革・改善方法と、長期、超長期の立場に立って、その国家的な歴史的利害を推測して、算段することも不可欠な予測的作業である。
 しかし、この計算を中央省庁の間で、大幅な食い違いを発生したので、内閣案とし足して二で割るような、ごまかしを国民へ提示している。
 また、外務省がこのTPPの協議会情報を、参加各国のプライバシイ、情報開示による利害を侵害するなどと称して、実際に入手したデータ資料を国民、マスコミの報道開示としていない。 これは、福島原発事故調査の非開示と同様に、国民の参画を許さない政治家、官僚による、隠ぺい工作となって、秘密裏に決められた後で、国民の負担によって、問題を処理する手口とならざるを得ない。
 このような、やり口を今度も許すのは、今後の短期、中期、長期、超長期に亘る重要なテーマを、国民目線から遠ざけて、利権化する構造的な処理と言えよう。
 オープンなデスカッション、討論の場で、十分に合理的な説明と検討を要する。いかがであろうか?
 
返信する
Unknown (菅原晃)
2011-10-31 20:13:17
自給率なるものは、農水省が、40%になるように、誘導して出した数値です。フロート指標であり、つまり、いかようにでもなる数値です。

 こんなものに左右されるとは、農水省の最大の功績(年間予算5兆円省庁)だと、皮肉をこめて言えるでしょう。

どんな風に、数値は変わるのか?

(1)供給量をかえると

 厚労省(05年版『国民健康・栄養調査』)による、「実際の自給量/摂取量」にすると、農水省の2015年度目標の45%を軽く超える、53%になります。

 農水省の想定する一人当たりカロリーは2473キロカロリーで、日本人の実際の摂取カロリーは、1904キロカロリーです。2473なんて、摂取していません。

 この差は、廃棄物(コンビニやスーパー、レストラン、家庭、ホテルetc)なのです。廃棄物を含めて日本人は2473必要で、そのうち1012しか自給していない=40%と言うものです。

(2)市場取引分しかカウントしない

 マンションのベランダや、家庭の庭で「プチトマト」や「葉物野菜」を育てる、あるいは「農地」を借りて、週末に土いじりをする。自分で育て、自分で食べる。近所におすそ分けする。定年退職した人が実際にやっています。

 これは、一般的にすばらしいとされていることです。土いじりをすることで、身体感覚、労働観、自然との接し方などを学ぶことが出来ます。まさに「自給」です。

 ところが、「家庭菜園」が増えれば増えるほど、「カロリー自給率」は低下します。市場を通さない=あくまで自家用というのが、家庭菜園の条件=農地転用条件だからです。

 農水省は、ますます増えている家庭菜園を「自給」と認めないどころか、増えれば増えるほど「自給率」が下がるという、カラクリ計算をしています。

 自給1012キロカロリーに含まれないもの

①200万戸の農家・兼業農家・家庭菜園の、自家消費分(市場に出さないもの)は含まない
②農作物のうち、2~3割を占める、規格外や、価格下落を防ぐための廃棄物は含まない


 これらを含めると、「実際の自給量/摂取量」は60%を超えます。

 だから、「自給率を上げる」ためには、「家庭菜園禁止」にしないといけません。ばからしくて、お話になりません。

(3)生産額自給率

 2007年、生産額でみると、国内自給率は、66%になります。国産(10兆37億円)/総供給(15兆941億円)です。1位米国、2位フランスに次いで、世界3位になります。

 とにかく、「自給率」なる指標に全く根拠はなく、しかも、食料は「余っている」のです。だから、問題になるのです。

 どこかが足りない(例えば日本のエネルギー)のなら、輸出国は増産し、皆万々歳で、貿易の問題にすらなりません。

 どこも「余っている(簡単に増産できる)から、WTOで常に「問題」になるのです。「足りない国」があるのなら、問題になるわけがありません。

 とにかく、自給率については、ここに書ききれないほど、問題だらけです。

 詳しくはブログ『高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門』http://abc60w.blog16.fc2.com/カテゴリ:農業自給率アップは無意味を参照下さい。


返信する
左の矛盾 (あそ)
2011-11-01 01:49:17
どうすんすか?放射線汚染で農作物やばいっておっしゃってるのに自給率あげろって。

大丈夫ですか?このまま勝てますか?心配です。

あといまの農業政策どう考えてるのか是非拝聴したいです。
返信する
食べるものがなくなるなら (太郎)
2011-11-01 18:08:29
つくるという選択肢はないのでしょうか?
返信する
食料安全保障について一言言いたい (都市部の人間)
2011-11-02 00:19:22
私はこのblogで菅原さんのblogを知り、食料自給率がいかに意味の無いものか勉強させていただきましが、
残念ながら管理者の宮武さんはまったくご覧になっていないようですね。
戦後の食料難を経験した祖母は、
農家の人は農作物を売りしみしたと言っていました。
いざとなったら同じ日本人だからと言って安心できるものではありません。
都市部の人間の一人としては、むしろ、いろいろな国と仲良くして食料供給の選択を増やして欲しいと思っています。
穀物は50%程が家畜の餌となっており、
先進国の人間が肉を食べることをやめれば
今でも100億人くらいの
食料は賄えると考えられます。
購買力のある日本で食料安全保障なんてナンセンスで、国家レベルの食料危機なんて幻想にすぎないと思えますね。
購買力が無く飢餓に苦しむソマリアの
食料自給率はきっと高いのではないでしょうか。

返信する
w安保について (高橋一郎)
2011-11-09 11:56:33
この論文はあまり根拠がどこまでただしいのかTPPがわが国の農業危機をまねくといったぐたいてき根拠なり説明が詳しく説明されていないと思います。今後の農業政策こそしっかり考えていこうというのなら、分かりますが、いま少しはっきり分かりません。
返信する
自分さえ良ければ・・・ (交通人)
2013-01-13 09:30:31
の精神が蔓延しているように思う。

瓦礫しかり、、、TPPしかり、、、

貧しい国では、農作物を作っても高く(生活ができる金額で)買ってくれる相手がいません。

我々、先進国が貧困国から買ってあげなければ、彼らは作っても意味がないのです。

こういうことを言うと、「日本の農家がどうなっても良いんですか?」とよく聞かれます。

そういう時は、「貧困国の農家がどうなっても良いんですか?」と言い返します。

日本の農家については、政府が補償すれば良いのであって、他国の農産品を締め出すのは間違いです。

人間っていうのは正直な生き物で、余裕があるときは優しくできるのに、余裕が無くなると急に冷たくなる。

こんな時代だからこそ、【国家】で固まらず【人間】で固まるべきだと思います。

※ ちなみに医療(命)に関しては、【聖域】であり譲ってはいけません。
返信する

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