避難生活を送る人は、「いきなり『2週間後に出ていってくれ』と」、「今ごろ県や市が来て説明会って、遅いやろってみんな言っている」と話す。

戸惑いの心境を明かしたのは、能登半島を離れ、現在、石川県の南部にある加賀市の温泉旅館に2次避難中の被災者だ。

被災者が2次避難先の旅館やホテルにいられる期限は、原則あと1カ月程度。そこで7日、石川県や輪島市などの被災自治体は、今後の住まいに関する説明会を開いた。県職員は避難者を前に、「現在2次避難所となっているホテル・旅館は、今後ほかの予約も入ってきております」と説明する。

石川県南部の加賀市にある温泉旅館「みやびの宿 加賀百万石」には、現在、輪島市や珠洲市からの2次避難者、約350人が身を寄せている。1月22日に取材した際には、避難者は「不自由は全然ないです。お風呂も自由に入れます。快適です」と話していた。

同じ石川県内でも、この宿は地震の被害がほとんどなく、被災者は、名湯として知られる山代温泉で心身を癒やし、食事も朝食のビュッフェをはじめ、3食提供されている。

宿は「できる協力は惜しまない」とする一方で、採算面でのジレンマも抱えていた。

みやびの宿 加賀百万石・吉田久彦社長は採算について、「カツカツですよね、もうギリギリ」と話す。

旅館側の説明では、2次避難先として国や自治体から払われている金額は、1人あたり1日1万円。これに対し、この旅館の平均客単価は1泊2万5000円だという。

こうした中、石川県などは、被災者に対し、3月上旬をめどに、2次避難先から別の仮設住宅などに移ってもらう方針を打ち出した。

期限を区切る背景にあるとみられるのは、3月16日に迫った北陸新幹線の延伸だ。

金沢駅から新たに福井県の敦賀駅まで延伸されることになっていて、停車駅となる加賀温泉駅周辺でも、大きな延伸効果が期待されている。地元住民も「期待は大きいですね。やっぱり東京方面には便利になる」と話す。

被災者のケアと、地元経済の復興という2つの課題の両立が求められる中で、7日に開かれた説明会では、今後、2次避難先からの移動が必要となる被災者に対し、仮設住宅や公営住宅への入居方法などが説明された。

説明会に参加した人は、「わかったことを気づけただけであって、解決策には何にもならない。わたしら(ホテルに)おいてもらえるだけでも助かってるから、そんなに無理は言えない。皆さんで経済を回してもらわないと」と話した。