東京地・高裁内の司法記者クラブで記者会見する澤藤先生(中央)。左隣にちゃっかり座っている美男弁護士がわたくしですw
この写真の到着を待っていて記事のアップが遅れました(笑)。
スラップ(Slap)とは英語で平手打ちのこと。
スラップ訴訟とは、恫喝訴訟。
すなわち、社会的な強者が弱者に対して自分に対する不平・不満を言わさないように、べらぼうに高い慰謝料請求訴訟を起こして、口封じをするという訴訟です。
健康サプリメントなどで有名なDHCとその創業者会長である吉田会長から、このスラップ訴訟を仕掛けられたのが、私の尊敬する澤藤統一郎弁護士。
当初2000万円、その後総額6000万円に増額という、有名スポーツ選手や大スターの名誉毀損事件でも聞いたことがないような、目の玉が飛び出るような損害賠償請求裁判を仕掛けられたのでした。
しかし、澤藤先生と弁護団はこのスラップ訴訟を打ち破り、2016年1月28日、またも原告・控訴人DHC・吉田の請求を棄却する、澤藤先生完全勝訴の判決を下したのです!
自分で8億円渡したと手記を書いておいて、それを批判したら裁判を起こすというDHC吉田会長の無茶ぶりがひどい。
この訴訟の概要を、澤藤先生の「澤藤統一郎の憲法日記」から見てみましょう。
『株式会社DHCと吉田嘉明(DHC会長)の両名が、当ブログでの私の吉田嘉明批判の記事を気に入らぬとして、私を被告として6000万円の損害賠償請求の裁判を起こした。
正確に言えば、当初の提訴における請求額は2000万円だった。
不当な提訴に怒った私が、この提訴を許されざる「スラップ訴訟」として、提訴自体が違法・不当と弾劾を開始した。要するに、「黙れ」と言われた私が「黙るものか」と反撃したのだ。
そしたら、2000万円の請求額が、3倍の6000万円に増額された。「『黙るものか』とは怪しからん」というわけだ。なんという無茶苦茶な輩。なんという無茶苦茶な提訴。
一審判決は、
「(澤藤の)本件各記述は,いずれも意見ないし論評の表明であり,公共の利害に関する事実に係り,その目的が専ら公益を図ることにあって,その前提事実の重要な部分について真実であることの証明がされており,前提事実と意見ないし論評との間に論理的関連性も認められ,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものということはできない」。
だから、DHC・吉田の名誉を毀損しても違法性を欠く、として不法行為の成立を否定した。』
「政治とカネ」「規制緩和」「消費者」「サプリメント」「言論の自由」最高のタイミングで明日控訴審判決 -「DHCスラップ訴訟」を許さない・第68弾
さすがにホッとした表情をされる澤藤先生と弁護団と支援者の皆さん。
この日は弁護士会の選挙前で部屋がどこもいっぱいで使えず報告集会ができなかったため、東京高裁内の待合室で簡単な報告がなされた。
人の名誉権は基本的人権ですが、これに対する表現の自由も民主政にとって不可欠な大切な基本的人権です。
そこでこれらの人権の調整を図るのに、刑法はこのような規定をしています。
これは名誉毀損的表現が刑罰に値するかどうかの規定ですが、民事裁判でも役に立つ枠組みとされています。
そして、民事上の名誉毀損による損害賠償が認められるかについて、最高裁は人の社会的評価を下げる「事実の摘示」か、「意見ないし論評」かという枠組みでまず判断します。
同席させていただくのも恐縮するような大先輩の先生方。
ちなみに、お一人目は政治とカネの問題を追及してやまない、落選運動でも有名な、ブログもなさる阪口徳雄弁護士。
お二人目は、差別問題で有名な中山武敏弁護士。澤藤先生も含めて皆さん6~70代の大弁護士です。
たとえば、DHCの吉田会長側は、同人が8億円ものお金を渡辺喜美議員に交付した動機について、澤藤先生が
「吉田嘉明なる男は(中略)自分の儲けのために,尻尾を振ってくれる衿持のない政治家を金で買った」(本件記述①)
「大金持がさらなる利潤を追求するために,行政の規制緩和を求めて政治家に金を出す」(本件記述②)
と推論した記載が、吉田会長の社会的評価を下落させる「事実の摘示」だと主張しました。
しかし、東京高裁は、澤藤先生は吉田会長が自ら週刊新潮で告白した手記をもとにブログを書いたものだとして、
1 それ以外に,例えば被控訴人が独自に入手した情報など,本件手記の記載以外の情報を付加して推論を行ったものではない
2 本件貸付けは,政治の過程における政治と金銭の問題に関係するものであり,国民の立場から重大な関心事になり得ることからすれば,控訴人吉田が本件貸付けに当たり真実どのような動機を有していたかという事実の問題とは別に,前提事実の組合せに対する社会的な評価や推論・解釈ないしこれに基づく議論が存在し得る
として、澤藤先生のブログ記事は、事実の摘示ではなく、意見ないし論評だとしました。
DHCスラップ訴訟控訴審判決。またもスラップを仕掛けたDHC・吉田の完敗。 -「DHCスラップ訴訟」を許さない・第69弾
「6000万円の請求をされた時には、離婚して、財産分与でお金を持って逃げようかと思いました」と冗談をおっしゃる澤藤先生のお連れ合い。
それもこれも勝ったから言えること。
どれだけご心痛だったことか。DHC吉田会長のやったことは本当に許せません。
次がとても重要な点なのですが、東京高裁は澤藤先生のブログ記事が、公益性があり、違法性はないと判断しました。すなわち、澤藤先生の
「ブログ記事において,攻撃的な表現,控訴人らを嘲笑し馬鹿にする記述,控訴人らに対する敵意ないしは反感に満ちた表現があること」
については、そう受け取られるような部分があることは否定できないが、
「その内容が,政治家への資金提供の透明性を確保し,民主主義の健全な発展のためには,金員の提供を受ける政治家だけでなく,金員を提供する私人についても監視,批判が必要であるということを訴えるもの,サプリメントの販売については,規制緩和の要請があることや,機能性評価が不十分であること,さらに,有害物質の含有や健康被害の例など安全性の問題等があることを指摘するもの,本件訴訟の提起について,経済的強者等が自らの意に沿わない意見について,訴訟により相手方に精神的,経済的負担を負わせ,当惑させ,論評を封じ込める目的で訴訟を提起するという訴権の濫用及び言論の自由に関する主張を行うものであり,いずれも,その内容に照らし,専ら公益を図る目的に出たものと認められるものである」
としています。
私も、安倍首相や橋下元市長らに対して、良く当てこすりのようなことを書いていますが、
「専ら公益を図る目的に出たもの」
である点からは文句なしだと思いますので一安心です。
だいたい、庶民が問題行動を起こした政治家や経済的強者に対して強い表現をするのは当たり前のことで、東京高裁がこの当たり前のことを真正面から公益目的があるとした点に大きな意味があります。
記者の数が少ないのは、全く同じ時間に、甘利大臣が辞任記者会見をしていたからなんですね。最後の最後まで余計なことを!
それにしてもフジテレビや朝日新聞など数社が来てくれていました。
もちろん、インディペンデント・ウエブ・ジャーナルIWJも。
もしかしたら、執念深い吉田会長のことですから最高裁に上告してくるかもしれません。
何しろ、渡辺議員に8億円も出してやるほど、湯水のようにカネがありますから、裁判費用・弁護士費用など気にすることはないからです。
これからは、スラップ訴訟を仕掛けて来た側にペナルティを与える枠組みを考えていく必要があるでしょう。
そして、朗報!
当ブログのオフ会、「万国のリベラルブロガーよ、団結せよ!」企画において、澤藤先生にスラップ訴訟完全勝利記念講演をお願いすることに成功しました!
詳しいご案内はまたいずれしますが、日時は6月4日(土)午後6時から。東京都内で行います。
リベラルブロガーの皆さん、ブロガーになろうかなと迷っておられる皆さん、読者の皆さん。
ぜひ、もう手帳に書いておいて、ふるってご参加ください!
関連記事
DHCスラップ訴訟、被控訴人意見陳述。表現の自由の最高の価値と、それを脅かす金と力の裁判の罪。
澤藤統一郎弁護士に対するDHCスラップ訴訟、12・24東京高裁第1回口頭弁論の法廷傍聴へのお誘い!
前夜[増補改訂版] | |
現代書館 |
安保法案の成立を受け、56頁、約50項目の注釈を追加! (定価は据え置き)
自民党改憲案と現行憲法を、その前文から補則まで徹底的に比較・解説し、そして熱く熱く語り尽くす。権力を縛るはずの憲法を、逆に縛りから権力を解放する方向へ書き改めようとする自民党のトンデモ改憲案は許さない! 安倍首相が目指す「緊急事態条項」。危機を口実に無制限の権力を握った指導者は、原発を抱えて亡国の戦争へと向かうのか!? 安保法案、TPP参加、特定秘密保護法、原発再稼働等と「憲法改悪」「米国の命令」との密接な関わりを約300項目に及ぶ注釈を付け、本気で伝えます!
岩手靖国違憲訴訟 (新日本新書) | |
澤藤 統一郎 (著) | |
新日本出版社 |
岩手靖国訴訟の経過と争点となった理念の解説を、まとめたもの。地方にあって徒手空拳で悪戦苦闘している弁護士の喜怒哀楽や、民主主義擁護のために共同して働く若手弁護士のひたむきな姿を伝える。
「日の丸・君が代」を強制してはならない―都教委通達違憲判決の意義 (岩波ブックレット) | |
澤藤統一郎 著 | |
岩波書店 |
2006年9月、東京都教育委員会による教職員への「日の丸・君が代」強制を違憲とする東京地裁の判決が言い渡された。その判決文を読み、意義を考える。提訴の理由や原告401人にとっての「日の丸・君が代」の意味も語る。
2016年6月4日、澤藤先生とともに大いに語りましょう!
よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!
奥様が心労のせいなのか、もともとなのか分かりませんが、少しやつれているようにも見え、ご家族も大変だと思いました。 裁判絡みで、被告に妻を殺害された岡本?弁護士、オウムに一家拉致され、殺害された坂本弁護士、枝切りバサミで局部を切り落とされた東京の某弁護士
・・・最後のは、関係ないか w 。
美男(!)弁護士を拝見して、私見。
1。 髪があるので若く見える。
2。 なぜ秋元康がここにいるんだ!
3。 メタボ方面、大丈夫ですか?
4。 ブログ村、ネトウヨブログを逆転。
よかった。
5。 メルマガ、準備してますか?
失礼~~!
それに大企業や行政庁等の組織の圧迫感は、相当なもので、私も、自分の業務で、何度も感じたことがあります。
行政庁の業務で調査や現場視察をした折に、相手方の市民は、緊張されていましたからね。
単なる、土地境界の確認であっても、測量等の機材を持った担当者が何人も公用者で乗りつけて図面を片手に調査すると、周辺の人は驚くので普通です。
土地の「境界標」を探していて、ひそひそ話をして私を見て居た人たちもいましたが、何をしているのかが分からなかったようでした。 怖い顔をして地面を睨みつけて歩いていたのですから、仕方ありませんが。
これ等は、笑い話に近いものですが、裁判所から訴状が届いた一般人の心理は、どのようなものか想像に余りあります。
正当な請求であれば、訴訟制度で解決するのも一法ですが、人を脅迫するのが主目的の事件を排除する良い方法は無いものでしょうか。
昔からある手法で、刑事事件に仕立てて、告訴をして相手に心理的圧迫感を与える、というものもあります。
これは、民事事件で自己都合を図る警察利用として、刑事部門では警戒し過ぎる嫌いがありますし、上手く制度設計しないと予想外の利用に使われる恐れがあるのは何でも同じですね。
それはそうとしまして、管理人様は、見るからに弁護士と云うお姿とお顔ですね。 上品な笑顔は、お人柄を表されているようです。 職業が顔を造る、と云うのは本当でしょう。 裁判官は、裁判官らしく、検事は、検事らしく、どうしてもなってしまうようです。
因みに、橋下氏は、一見して弁護士には見えません。 テレビに出ておられた折には、吉本の芸人風でしたが、最近のお顔は、怖いですね。
一方は、余りにも有名な推理小説を連続ドラマ化した「モース警部」シリーズ、もう一方は、「カバナーQC」です。 此処で云う「QC」とは、英国独自の制度である“Queen's Counsel”のことを指しています。
(注)英国では、事務弁護士と法廷弁護士と、弁護士には二種類があり、“QC”とは、法廷弁護士の内の勅選弁護士を指します。
Kavanagh QC Diplomatic Baggage
https://www.youtube.com/watch?v=t44Dh_tKVBI
Inspector Morse The Wench Is Dead | Full Episode
https://www.youtube.com/watch?v=vXaxxPm3DTg
「モース警部」シリーズは、“Last Bus To Woodstock”(ウッドストックへのバス最終便)を読んだのが最初で、これは、新しい推理小説の形だ、と直感しました。
でも、今では、原作よりもテレビドラマシリーズを何度も、何度も見ています。 このテレビドラマのために、舞台となったオックスフォードでは、作品中の現地ツアーもあるそうです。
「モース警部」シリーズでは、警部の独自の推理が鋭くて、原作は、とても面白いのですが、ドラマ化するのには困難があったのかも知れません。 原作者が台本でも協力し、ドラマの原作も書いているので出来たのでしょう。 それにしても、主人公役の故John Thawは良く演じ分けています。
因みに、上に挙げた作品では、古の事件を病床にあって推理のみで解決する警部を描いたものです。 良く映像に出来たと思います。
英国では、警察や裁判所を舞台にした、ドラマ、映画が、沢山あり、俳優は、成りきったように演じる人が多いです。
QCのお姿を拝見していて、ふと思ったのですが、管理人様がお召しになればお似合いではないでしょうか?
QCの正式な衣裳は、下の記事中の写真にあるように、鬘と法服です。
キャメロン首相の兄弟であるアレックス・キャメロン(Alex Cameron)氏が身につけておられるものがそれです。
(注:英語で言うところの“brother”は、兄と弟のどちらをも言いますので、正確には、アレックス・キャメロン氏が兄か、弟かは分かりません。)
TV cameras in a British court for the first time with Cameron's barrister brother taking centre stage
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2482433/TV-cameras-British-court-time.html
おお!
澤藤弁護士の横に半分の管理人様が映っておる!
なんか怖そうである。
コメントを送ろうという気が萎える。
こんな怖そうで立派そうな方に絡んだり、おふざけ仕掛けたりしてたのか・・・
今後は、お真面目なコメのみお送りいたします。
ところで2月に入りましたが、メルマガのお知らせがありません。
当方、読む気まんまん、6000円握りしめて待っております。
(講読料1年6000円と予想)