イギリス議会下院には多くの議員があつまりゼレンスキー大統領のビデオ演説を見守りました。

ゼレンスキー大統領:
「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ。これはシェークスピアの問いかけだ。我々は15日間、この質問を投げかけられてきた。だが今わたしははっきりと答える。生きるべきだ」

またイギリスのチャーチル首相が1940年にナチスドイツと戦った際の議会演説での「我々は海岸で戦う」という一節を思い起こさせる「我々は森で、平原で、海岸で、そして通りで戦う」とのフレーズを述べて、徹底抗戦の意思を強調、議員たちから盛大な拍手を受けました。

一方でゼレンスキー大統領はイギリスを始め各国にロシアへのより強い制裁を求めたほか、飛行禁止区域の設定も念頭に「ウクライナの空の安全を確保してほしい」と訴えました。

 

 

ゼレンスキー大統領「空域閉鎖を」 カナダ議会で演説

ウクライナ侵攻
2022年3月16日 1:37 (2022年3月16日 2:13更新) 日本経済新聞

ゼレンスキー氏は15日、カナダ議会のオンライン演説で「ロシアを止めるためのさらなる行動」を求めた

【ニューヨーク=白岩ひおな】ウクライナのゼレンスキー大統領は15日、カナダ議会下院でオンライン演説し「ロシアのミサイルと飛行機から我々の領空を守ることがどれだけ重要か理解してほしい」と語り、北大西洋条約機構(NATO)諸国にウクライナ上空に飛行禁止区域を設定するよう求めた。「ロシアの脅威から欧州とウクライナを守るため、ロシアを止めるためにもっと行動が必要だ」と述べた。

「午前4時にひどい爆発音で目を覚まし、空港や数十の都市が破壊される音をあなたやあなたの子どもたちが聞くのを想像できるだろうか」。ゼレンスキー氏が演説冒頭、こう語りかけると熱気に包まれた議場は静まりかえった。「97人の子どもが殺されたんだ」

「空域を閉鎖してほしい。空爆を止めてほしい。これを実現するまで、あと何発の巡航ミサイルが私たちの都市に落ちなければならないのか」と呼びかけた。飛行禁止区域の設定をめぐり、カナダのトルドー首相は「ロシア機を撃墜するためにNATOの飛行機をウクライナに送れば、NATOを直接紛争に巻き込むことになる」として応じていない。

ゼレンスキー氏はカナダを含む各国の支援や制裁は「残念ながらこの戦争に終わりをもたらせていない」と指摘。「NATO加盟を目指す私たちに明確な返答も聞こえてこない」と不満を漏らした。「制裁を強化し、ロシアが戦費を1ドルも手にしないようにできる」とも述べた。

トルドー首相は「世界中の民主主義国家は、あなたが私たちのチャンピオンであることを幸運に思っている」と賛辞を送った。「プーチン(・ロシア大統領)の人命に対するあからさまな無視は絶対に容認できない」と非難した上で「ロシアに対し、民間人を標的にした不当な戦争をやめるよう要求し続ける」と強調した。

ゼレンスキー氏の演説直後、立ち上がって拍手を送るトルドー首相と与野党議員ら(15日、オタワ)

約12分間にわたる演説後、議員らはみな立ち上がり、ゼレンスキー氏に数分間にわたり拍手を送り続けた。演説後、声を震わせ、涙ながらにウクライナへの支援を呼びかける議員の姿もあった。

カナダ政府は15日、演説に先立ち、プーチン大統領のウクライナ侵攻を支持し手助けしたとされるロシア政府関係者ら15人を対象にした新たな制裁を発表した。ジョリー外相は「プーチン大統領は無意味な暴力を直ちにやめ、軍を撤退させることでそれを終わらせるという選択もできる」と述べた。「ロシアの指導者が軌道修正しなければ、さらなる行動を取ることをちゅうちょしない」と訴えた。

 

 

 
 

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は16日、アメリカの連邦議会でビデオ演説を行った。ロシアの侵攻を2001年の米国同時多発攻撃などになぞらえ、軍事支援の拡大を訴えた。

ゼレンスキー氏は演説で、アメリカの議員らに1941年の真珠湾攻撃や2001年9月11日の攻撃を思い出すよう促し、「同じことを私たちの国は毎日、毎晩、もう3週間経験している」と述べた。

また、公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング牧師の有名な演説を引用。「私には夢がある。この言葉は皆さん一人ひとりが知っているものですが、今日私は、私には必要なものがあると申し上げます。私は空を守る必要があるのです」と述べ、アメリカと北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し、ウクライナ上空を飛行禁止区域にするよう再度要求した。

演説の途中では、ウクライナの都市へのミサイル攻撃や、それによる死者や負傷者を映した生々しい映像を公開した。

最後にはジョー・バイデン大統領に英語で語り掛け、「あなたは一国のリーダー、偉大な国のリーダーだ。世界のリーダーにもなってもらいたい。世界のリーダーであることは、平和のリーダであることだ」と締めくくった。

ゼレンスキー大統領の議会演説から数時間後、ホワイトハウスは8億ドル(約950億円)規模の武器供与追加を発表。アメリカのウクライナ支援はこれで10億ドルに達した。追加供与される武器には、携帯型地対空ミサイル「スティンガー」800基、対戦車ミサイル「ジャヴェリン」基、AT4携行対戦車システム6000基、戦術ドローンシステム100基、グレネードランチャー100門のほか、ライフル銃5000丁や機関銃400丁、ショットガン400兆、砲弾、ボディアーマー(全身防護服)2万5000個、ヘルメット2万5000個などが含まれる。

演説の後、ナンシー・ペロシ下院議長は、ウクライナ大統領から話を聞けたことは「特に光栄なこと」であり、アメリカの「勇気を持って民主主義を守るウクライナの人々への支援は揺るぎない」とツイートした。

BBCのアンソニー・ザーカー北米記者は、ゼレンスキー氏はウクライナの状況を、文字通りにも比喩的にも、外国の聴衆が理解できるよう訴える方法をつかんでいると解説。

キング牧師などを引用し、戦場の映像を挟み、最後には英語で欧州や世界の価値のために戦っていると訴えることで、アメリカや同盟国は「ノー」と言い難くなると、ゼレンスキー氏は期待しているのかもしれないと報じた。

ゼレンスキー氏は9日にも、イギリス下院にビデオリンクで演説を行い、ウィンストン・チャーチル元英首相の言葉を引き合いに、「我々は降伏せず、負けず、最後までやり抜く」と述べた。