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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

大阪市議会がカジノ誘致の住民投票条例案を維新と公明の多数で否決。自分たちのしたい大阪「都」構想住民投票は2回もしたのに、カジノについては民意を問わずに強行しようとする維新と公明は民主主義の破壊者だ。

2022年02月11日 | 野党でもゆ党でもなく第2自民党の悪党維新

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 大阪市の2・3月議会が2022年2月10日、開会しました。

 市議会の初日に、大阪府と市が誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)の賛否を問う住民投票を行うための条例案を自民党と「自民・市民・くらし」が共同提案し、共産党も賛成したのですが、大阪維新の会と公明党による反対多数で否決されました。

 実は大阪自民もIR誘致の賛否を明らかにしておらず、10日の本会議で賛成討論を行った川嶋広稔氏は建設予定地の液状化対策などに追加経費790億円がかかると判明したことや、地域の合意形成の不十分さなどを挙げ、

「住民投票による判断を最大限尊重する」

「市民の声に耳を傾けるべきだ」

と訴えたのですが、ダメでした。

 

 2月10日には、九つの市民団体が、共同で集めた7万1028筆のIR反対署名を市と府に提出したのですが、カジノに目がくらんだ維新は住民の意向など無視です。

 維新の大西聖一氏は反対討論で

「前提条件が変われば何でもかんでも住民投票をするのか。議会制民主主義の意味が失われる」

とわけのわからない弁明をしたのですが、前提条件が変わったら民意を問うのは当たり前じゃないですか。

 あなたたちは、2015年5月に大阪「都」構想が住民投票で否決されたのに、区割りが変わったとか何とか言って、コロナ第3波が押し寄せてきていた2020年11月にまた住民投票を強行したではないですか。

 

 

 2016年12月22日に大阪市平野区内で行われた説明会で、市民から

「カジノ誘致に税金を使っていいのか」

などと指摘されると、当時、大阪府知事だった日本維新の会代表の松井市長はこう答えたんですよ。

「特定の政党が間違った情報を流布してますけど、これだけははっきり言っときます。

IR、カジノに税金は一切使いません。

民間事業者が大阪に投資してくれるんです」

 

 

 ところが、2025年予定の大阪・関西万博の会場となる大阪市此花区の人工島・夢洲(ゆめしま)の整備について、液状化や土壌汚染などの問題が相次いで明らかになってきました。

 吉村府知事と松井市長は2021年12月にカジノを含む統合型リゾート(IR)の整備計画案の骨子を発表した際、大阪市所有地の液状化防止の地盤改良や土壌汚染対策、地中障害物撤去などに約790億円かかると発表しました。

 そのことが明るみに出ると、松井市長は市税収入がメインの「一般会計」ではなく、市有地の売却、賃貸収入などからなる「公営企業会計」から拠出するため、

「市民負担じゃない」

と強弁しだしたんですが、それも市民の公金で、市民のお金が無くなることに変わりはありません。

 

 そこで、今度は松井市長は、支出するのは土壌改良費だからカジノに公金を使うんじゃないと言い出し、

「IR(そのもの)に対して市が負担するわけではない」

「IRとして(事業者に)長期の定借をしていただく土地に不備があるから、その土地を改良するということ」

と苦しい言い訳を言うんですよ。

 でもとにかく、

「IR、カジノに税金は一切使いません。民間事業者が大阪に投資してくれるんです」

と言っていたのに、大阪市のお金をIRにガンガンつぎ込むことになったのは間違いない事実。

 

 松井市長はカジノの是非を問う住民投票条例案を否決した後、

「あの条例出すならもっと早くに。

 夢洲をエンタメの拠点としたいと、その時から我々IRと言っているんだから、その時にああいう意見を出せば良かったじゃない」

と述べましたが、790億円も土壌改良費にお金がかかり、それが大阪市の予算から出るってわかったのは2021年12月のことですからね。

 それまでこの事実を隠されていた市民が真実を知って住民投票を求めたんですから、「もっと早く」に住民投票の条例案を出せるわけがありません。

 こんな詭弁と詐欺を繰り返す維新と、大阪の衆議院小選挙区4つの議席のために維新に協力し続ける公明党の民意を軽視する反民主主義的態度は許しがたいと言わなければなりません。

 

IR誘致「反対」60% 朝日新聞・ABC大阪府民調査

 

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橋下維新の会の唯一の経済政策はカジノ。その大阪万博・IR予定地の整備費用予算が1年余りで2300億円も上ぶれ。新国立競技場の二の舞!松井市長は税金投入を「市民の負担ではなく投資だ」とギャンブラー発言

【カジノ担当副大臣だった秋元司被告人に一発実刑判決】横浜市民が反対に立ち上がって潰したカジノ(IR)をもし大阪市民が受け入れたら、満天下に恥をさらすことになる。万博とカジノしかない維新に騙されるな。

大阪に対する「愛」がない橋下市長が安倍首相にカジノをおねだりした

橋下徹・松井一郎氏の維新の会 大阪ダブル選挙マニフェストの経済政策がまたカジノ誘致

 

コロナ対策も満足にできんどころか全国最悪なくせに、日本のどこにもないカジノを大阪に作ろうとか、余計なことばっかりすな!

ところで、政局分析に詳しいkojitakenの日記さんが、公明党は国政レベルでも維新の会と結ぼうとしているのではないかと警戒する

維新は「シンシンシン党」(新・新進党)構想を持っているか?

という記事を本日アップされていたんですが、私は利にさとい公明党は大阪では衆院小選挙区のため維新にすり寄り、国政レベルでは自民党とつるんでまだまだ甘い汁を吸おうとしていると思うんですよ。

今、参院選で推薦しあわないぞと公明党が自民党に脅しをかけているのも、有利な条件を引き出す交渉のためのハッタリだと、私はみています。

大阪だけは自民党も中央と違う動きで維新と対立するように、維新登場後の大阪は独特の政治風土なんですよね~

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IR住民投票条例案を否決 大阪市議会、自民が提出

2025年大阪・関西万博の会場となる「夢洲」=昨年12月、大阪市此花区(本社ヘリから、竹川禎一郎撮影)
2025年大阪・関西万博の会場となる「夢洲」=昨年12月、大阪市此花区(本社ヘリから、竹川禎一郎撮影)

自民市議団はIR候補地の人工島・夢洲(ゆめしま)(同市此花区)で明らかになった土壌対策費約790億円を市が負担する方針を問題視。会派として計画への賛否を示さず、住民投票の結果を受けて判断する意向を示していた。

採決に先立って行われた討論では、自民市議団の市議が「住民投票を行い、住民のIRへの理解度や関心を高めるべきだ」と主張した。否決を受け、自民市議団は議会審議で追及するとともに会派内で議論を尽くし、賛否の態度を決めるとしている。

大阪府市はIRの区域整備計画を2月議会に議案として出し、可決されれば4月にも国に提出する構え。

 

 

2022.02.10 18:49 読売テレビ

IR誘致の住民投票条例案 大阪市会で否決


 カジノを含む統合型リゾート=IRの誘致について、賛否を問う住民投票を実施するための条例案が10日、大阪市議会で否決された。

「賛成の諸君の起立を求めます。少数であります。よって議員提出議案第2号は否決されました」

 大阪府と市が誘致を進めるIRを巡っては、建設を予定している「夢洲」での液状化対策などに790億円がかかることが明らかになった。

 大阪市は、全額を負担する方針を決めたが、自民党の市議団などは「多額の費用がかかることに、市民の合意が得られていない」として、住民投票を行うための条例案を提出していた。

 これに対し、大阪維新の会と公明党は「法律に基づいて、市民向けの公聴会を開催している」と反対。市議会で否決された。

 今後、府と市は、議会の承認を得たうえで、整備計画の認定を国に申請する方針だ。

 

 

松井市長「条例出すならもっと早くに」IR賛否問う住民投票条例案が大阪市議会で否決


2/10(木) 17:55配信

MBSニュース

 大阪府と大阪市が南港の夢洲で開業を目指すIR(カジノを含む統合型リゾート)について、自民党市議団が市議会に提出した住民投票実施のための条例案が否決されました。

 IRについて国は、今年4月28日までに正式に立候補するかどうか決めるよう求めています。大阪では、2月に始まる大阪府・大阪市それぞれの議会で国に提出する区域整備計画の議決が行われる予定ですが、決して順風満帆ではありません。

 1970年代にごみの処分場として埋め立てが始まった夢洲。大阪市は去年12月、IR予定地の土壌汚染対策や地中埋設物の撤去などとして、新たに790億円の費用がかかると明らかにしました。この費用について大阪市の松井一郎市長は市が負担する方針を示しました。

 (大阪市 松井一郎市長 去年)
 「その土地を貸すわけだから、貸す土地を安全で安心な土地にするのは当たり前でしょう。地主として。ましてや我々は行政なんだから」

 これには1月に行われた住民への説明会でも疑問の声が相次ぎました。

 (住民説明会で意見を言う人)
 「大阪の一般会計等々についての圧迫や将来的な収支見通しもありません。市民はカジノによって本当に市民生活が圧迫される可能性がでかいと思っているわけです」
 「土壌改良のために790億円が増加されると。こういうリスクについてはいかに考えているのか?」
 (担当者)
 「収支見込みを港湾局でも算出をしておりまして、資金不足は生じないという結果になっています」

 そして自民党市議団も「民意を問うべき」として、住民投票実施のための条例案を2月10日の市議会に提出しました。しかし維新と公明が反対して否決されました。

 (大阪市 松井一郎市長)
 「あの条例出すならもっと早くに。夢洲をエンタメの拠点としたいと、その時から我々IRと言っているんだから、その時にああいう意見を出せば良かったじゃない」

 一方、条例案を出した自民党は…。

 (自民党大阪市会議員団 北野妙子幹事長)
 「ごく短期間の間に市民の皆さんからずいぶん陳情書が寄せられまして、市民の皆さんが声を上げてくださったことが無駄になったということで大変残念です」

 

 

IR誘致、大阪市異例の負担 土壌対策に790億円 松井市長の意向強く

2025年大阪万博の予定地となっている夢洲=大阪市此花区で2020年11月25日、本社ヘリから

 カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致を巡り、大阪市に新たな費用負担が生じることになった。大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)の建設予定地で、液状化の危険性などが判明し、土地所有者の市が約790億円の対策費用を負担することを決めたためだ。市の内部資料からは、松井一郎市長の強い意向により、市負担が特例的に決まった経緯が見て取れる。IR招致に名乗りを上げた全国3自治体のうち、大阪が異例とも言える巨額の財政措置に踏み込んだ経緯に迫った。

 「これだけ問題がある土地なんだとびっくりしている。これからにぎわいの拠点にするので、安全な土地を提供するのが市の責任だ」。松井市長は10月5日の市議会で、市が対策費を負担する考えを表明し、12月21日の大阪府・市の会合で市負担が正式に決定した。

 IR予定地は万博会場予定地に隣接する49万平方メートル。MGMリゾーツ・インターナショナル(米国)とオリックス連合の事業者が、カジノやホテル、大規模会議場など、延べ77万平方メートルの施設を整備し、2029年秋~冬の開業を目指す。<picture>大阪・関西万博予定地の夢洲(手前)=大阪市此花区で2020年12月2日、本社ヘリから加古信志撮影</picture>拡大

大阪・関西万博予定地の夢洲(手前)=大阪市此花区で2020年12月2日、本社ヘリから加古信志撮影

 市などによると、事業者が20年に行ったボーリングによる地質調査の結果、39地点中24地点で大地震の際に液状化する恐れのあることが判明した。事業者は「万全の対策が必要だ」として、敷地全体の地盤改良を行うよう市に求めた。

 市は、液状化対策費を約410億円と算出。ヒ素などが含まれる土壌の改良費や、地中残置物の撤去費も含めた費用を約790億円と見積もり、22年2月の市議会に予算案を提出する。しかし、市が、舞洲(まいしま)など、夢洲と同じ大阪湾の埋め立て用地の販売で、液状化対策費を負担したケースはない。

<picture>IR予定地の液状化対策費負担を巡る大阪市の議論</picture>拡大

IR予定地の液状化対策費負担を巡る大阪市の議論

 なぜ、今回に限って市は負担を認めたのか。意思決定の詳細が、情報公開請求で入手した内部資料で明らかになった。6月29日に松井市長以下、副市長や関係部局の幹部ら約10人が液状化対策費の負担について対応を検討した。夢洲を所管する大阪港湾局は「民間業者の建設費の一部を負担するとみなされ、地盤改良をせずに売却してきた土地との公平性を保てず、住民訴訟で敗訴する可能性がある」との弁護士の意見を紹介。負担するなら、IR実現のための「政策的な観点」で支出するという理由付けが必要との認識を示した。

 一方、IR推進局は「(土地によって)条件に差異が生じることは当然で、住民訴訟で敗訴する可能性があるとは考えられない」とする別の弁護士の見解を示し、土地所有者として市が負担することは妥当とした。

 予定地は市が賃貸借契約を結んで貸し出し、事業者が年間約25億円の賃料を支払う。市が定める事業期間は35年間で、市は計約880億円の賃料収入を見込む。

 両部局の見解を受け、松井市長は「液状化が生じる土地で事業者が施設を建てられないのなら、土地の賃貸借契約が成り立たない。誘致を決めた以上、IRが成り立つ土地を提供するのが市の責務だ」と主張。市負担が決定した。

 どの会計で負担するかについても意見は割れた。IR推進局が「必要に応じた一般会計からの繰り出し」を挙げたのに対し、財政局は「IR事業に一般会計の市税を投入しないのが従来のスタンスだ」と指摘。埋め立て用地の造成・販売の費用や売却益などでやりくりする「港営事業会計」で賄うよう求めた。市民サービス提供のための一般会計から、民間事業の経費を支出することはそぐわないためだ。これに対し、松井市長は「港営会計が破綻しないよう、一般会計で支えていくのが当然必要だ」と強調。最終的には、港営会計での負担を原則としつつ、一般会計からの資金支援も今後検討することで決着した。

内部文書で見える「優遇」<picture>夢洲</picture>拡大

夢洲

 市によると、一般会計から港営会計への資金支援は、旧大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)の破綻処理で、09年に164億円を拠出した一度しかない。市が負担する理由を整理した内部文書では、「夢洲の国際観光拠点形成に資する中核施設」などとIRのメリットを強調、「特別な事情に鑑み、必要な負担を行う」と明記され、優遇ぶりをうかがわせた。松井市長は21日、記者団に、賃料収入などが事業者から見込めるとして、「市民に負担をかけるような形にはなりません」と述べた。

 市議会で質疑をしてきた多賀谷俊史議員(自民)は、IR整備に名乗りを上げた業者がMGMとオリックス連合のグループだけだったため、「市は足元を見られているのではないか」と懸念する。

 市の姿勢を識者はどうみるのか。元神奈川県逗子市長の富野暉一郎・龍谷大名誉教授(地方自治論)は「IRと同等の地盤強度が必要な施設建設について、市の責任で対策費を負担することが前提となり、夢洲全体の投資額が財政を圧迫する恐れがある」と指摘。「事業者の地質調査結果をうのみにせず、専門家に検討を委ねるなど、財政支出を厳格にチェックすべきだ」と強調した。【野田樹】


 ■ことば

夢洲(ゆめしま)

 大阪市が1977年に大阪湾で造成を始めた人工島で、総面積は390万平方メートル。廃棄物や海底の浚渫(しゅんせつ)土を使って埋め立てられた。当初は居住地区としての利用が模索され、招致を目指した2008年夏季五輪では選手村の建設計画もあったが、いずれも失敗。これまで3000億円以上が投じられ、「負の遺産」として活用法が課題となっている。大阪府・市・経済界が17年にまとめた構想で、カジノを含むIR誘致を念頭に国際観光拠点を目指すとされた。南側の155万平方メートルは25年大阪・関西万博の会場予定地となっている。

 

 

2022.01.26 06:00 ビジネスジャーナル

大阪IR誘致、29年の開業表明…“巨大な廃墟”の懸念、巨額税金投入の是非

文=編集部


大阪IR誘致、29年の開業表明…巨大な廃墟化の懸念、巨額税金投入の是非の画像1


大阪の夢洲(「gettyimages」より)


 大阪府と大阪市は昨年12月21日、誘致を目指す統合型リゾート施設(IR)の「区域整備計画案」を公表した。2029年の秋から冬ごろに施設を開業したいと考えていることを表明した。開業時期は、これまでは「20年代後半」としか示していなかった。

 25年の国際博覧会(大阪・関西万博)の予定地である人口島・夢洲(ゆめしま)にIR施設を整備する。延べ床面積は約77万平方メートル。カジノのほか国際会議場、展示場といった施設や、客室数で市内最大級の3つのホテル、3500人を収容する劇場などが計画されている。ホテルでは全客室の20%以上がスイートルームになる。 海外の富裕層をターゲットとする。

 大阪IRの事業者は米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスを中核とする共同企業体。初期投資額は約1兆800億円で、半分弱にあたる約5300億円は関係企業による出資で賄う。MGM、オリックスが40%ずつ折半出資し、残り20%は関西企業を中心に20社の出資を仰ぐ。

 20社の合計の出資額は1000億円強となる。岩谷産業、NTT西日本、大阪ガス、大林組、関西電力、近鉄グループホールディングス、京阪ホールディングス、サントリーホールディングス、JR西日本、JTB、ダイキン工業、大成建設、大和ハウス工業、竹中工務店、南海電気鉄道、日本通運、パナソニック、丸一鋼管、三菱電機、レンゴーの20社である。初期投資額の51%にあたる5500億円は融資で調達。すでに三菱UFJ銀行、三井住友銀行から融資を確約する「コミットメントレター」を受け取り、2行を中心に金融機関が協調融資団をつくる。

 大阪IRでは、予定地の周辺でヒ素やフッ素による土壌汚染が確認されているほか、掘削調査で地中に液状化の恐れがある層の存在が判明している。市は汚染残土の処分などの環境対策費として790億円を負担する。財源は起債である。区域整備計画案の骨子では年間来場者数は2000万人。近畿圏の経済効果は年間1兆1400億円と想定。大阪府や市は納付金や入場料などで毎年1060億円の収入を見込む。夢洲周辺の整備や子育て支援などに使うとしている。

 MGMとオリックス連合の共同事業体・大阪IRに小規模出資する20社の名前が具体的に盛り込まれた。関西電力、パナソニック、サントリー、NTT西日本、近鉄など、地元になじみのある企業が参画することで、地元に安心感が醸成されることを期待している。

 住民の根強い反対でIR誘致が中止された横浜市では、地元企業の協力が十分でなかったと指摘されており、大阪府・大阪市は地元企業との連携に力を入れてきた。府・市は両議会で区域整備計画の同意を取り付け、4月ごろに国に認定の申請を行う予定にしている。

和歌山、長崎は厳しい情勢

 政府は21年10月から22年4月までIRの区域整備計画の申請を受け付ける。最大3カ所が選ばれる見通しだが、現在、申請準備を進めているのは大阪府・市、和歌山県、長崎県の3地域のみ。本命視された横浜市は撤退し、東京都は検討作業を休止しており、誘致合戦は盛り上がりを欠く。

 和歌山県はカナダのクレアベスト・グループを事業者とし、和歌山市の人口島・和歌山マリーナシティへの誘致を目指している。施設の名称は「The PACIFIC」とし、米カジノ大手シーザーズ・エンターテインメントが運営するカジノ施設のほか、1万2000人収容の国際会議場、計2638室の宿泊施設などを備え、27年秋ごろに開業する計画だ。

 初期投資は4700億円。年間来場者約1300万人を見込む。和歌山県に入る入場料・納付金の見込み額は、開業後5年間で入場料が計600億円、納付金が1100億円と想定。ギャンブル依存症への対策費に充てる。和歌山IRは大阪のそれと完全に競合する。「関西にカジノは2つも必要ない」(関係者)ことから、誘致の見通しはかなり厳しい。

 長崎県は佐世保市のリゾート施設ハウステンボスへの誘致を目指してきた。IRの設置運営予定者としてオーストリアの国有企業カジノ・オーストリア・インターナショナルの日本法人(CAIJ)を選定。初期投資額で3500億円、年間来場者840万人を見込む。初期投資費用はCAIJ側が全額用意する。コンソーシアム(共同事業体)を形成して資金を供出することにしているが、パートナー企業のなかに数百億円を捻出できるような大企業は見当たらない。初期投資3500億円の資金調達のめどがたっていないと報じられている。

 IRの旗振り役だった菅義偉前首相のお膝元でもあり、本命視されてきた横浜市が、反対派の山中竹春市長の誕生で一転して撤退を決めた。誘致活動を進めるのが西日本の3地域のみとなり、政府の判断に影響を及ぼすことになりそうだ。

 さらに、猛威を振るう新型コロナウイルスがIR環境を一変させた。コロナ以前につくられた大規模集客施設の青写真や経済効果を見直すことなく突き進めば、IR施設は巨大な“廃墟”になる恐れさえ出てきた。バブル時代に相次いで建設されたリゾート施設に閑古鳥が鳴いたのと同じ轍を踏むことになるからだ。

 withコロナ時代にIRが必要不可欠な施設なのかどうかを十分に吟味しないと「令和の時代の戦艦大和をつくることになる」(関係者)。

(文=編集部)

 

 

大阪市は、カジノを含むIR予定地の土壌対策費790億円を負担すると昨年末に公表した。なぜ例外的に負担することになったのか。その経緯を知る手がかりとなる資料は「黒塗り」になっている。大阪維新の会も強く批判してきた、大阪市の過去の湾岸開発の二の舞にはならないか。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

松井市長は大阪IRがもたらす
「市民へのリターン」を強調するが

 新型コロナウイルスの「オミクロン株」の感染拡大が止まらない中、その発信力で注目を集める大阪府の吉村洋文知事。一連の対応には批判もあるが、それでも人気は絶大だ。ただ、同氏が代表を務める大阪維新の会にとって「大阪都構想」に並ぶ看板政策である、カジノを含むIR(統合型リゾート)を大阪市の湾岸に整備する計画には、暗雲が垂れ込めている。

 大阪維新の会の“国政部門”である日本維新の会の代表で、維新の最高実力者である松井一郎大阪市長は2021年12月、IRの計画地である大阪市南西部の埋め立て地「夢洲」に土壌汚染や液状化の対策が必要であるとし、市の負担額が790億円になると公表した。

 さらに今年1月には、大阪メトロ中央線の新駅を夢洲に設置するための延伸工事の費用が、当初の540億円から、129億円膨らむ見通しであることも判明した。

 維新のキャッチフレーズは「身を切る改革」――。民間の手法を導入して行政コストを削減し、IRなどの成長戦略につなげると訴えてきた。

 松井市長は土壌対策費790億円について、「負担」と報じられたのがよほど気に障ったらしく、この金額が公表された21年12月20日、大阪府立大学の住友陽文教授に反論する形でツイッターに「IRの経済効果は年、1兆2000億円、カジノの負担金は大阪市だけでも毎年550億円、借地料が毎年25億円、これらが市民へのリターンです。これでも市民負担ですか?」と投稿した。

 

土壌対策費790億円に加え地下鉄分も負担
“政治主導”で一般会計による穴埋めが決定

 府・市IR推進局の資料によると、IR施設の運営による近畿圏での経済波及効果の見込みは年間1兆1400億円、カジノ運営業者から府と市に毎年入る納入金と入場料の推計額は、それぞれ530億円だ。数字が微妙に異なるが、松井市長はこれらの数字を挙げたとみられる。

 市が負担を決定した経緯を報じた毎日新聞の記事によると、21年6月に松井市長ら市の幹部が出席した会議で、港営事業会計を所管する市の大阪港湾局が、民間企業であるカジノ事業者の建設費用を市が一部負担するのは住民訴訟の対象になる恐れがあるとの弁護士の指摘を紹介。一方でIR推進局が市の負担は妥当とする弁護士の見解を示した。

 最終的に土壌対策費790億円は、市債を発行し、一般会計ではなく、港湾地域の倉庫の利用料や土地の賃料などで成り立つ港営事業会計から返済されることになった。

 なお前述の松井市長のツイートの通り、カジノ事業者らから港営事業会計に支払われる賃料は毎年25億円で、35年間の定期借地契約で得られる収入は単純計算で875億円となる。ただ、土壌対策費790億円との差はわずか85億円。さらに前述の大阪メトロ延伸の追加費用の一部も、港営事業会計で負担することとなっている。

 一般的に港湾や埋め立て地の開発で必要となる土壌汚染対策や地盤改良などの工事は、計画時はその規模を見通しにくく、工事を進めるほど費用が膨らむことが多い。東京・築地から18年に移転した豊洲市場で大問題になったのがいい例だ。夢洲での工事費用が今後さらに膨らめば、想定される賃料収入を上回ってしまう恐れがある。

 6月のこの会議の場で松井市長は「港営事業会計が破綻しないよう、一般会計で支えていくのが当然必要だ」と述べた。これで、市民からの税収などで成り立ち、福祉、教育、土木など市民サービスのために支出する一般会計で港営事業会計を穴埋めすることとなった。財政局が難色を示したが、“政治主導”だったようだ。

カジノ事業者に足元を見られた?
再募集前の会議資料は「黒塗り」

 カジノ運営を担う事業者の中核となるのは、米カジノ大手のMGMリゾーツ・インターナショナルの日本法人とオリックスの2社だ。19年12月に始まった事業者の募集に唯一、この2社の企業連合が応募して、21年9月に決定した。

 事業者の募集は、夢洲の土壌汚染が判明してから21年3月に再度実施され、その際の募集要項には以下の文言が追加されていた。

 IR施設を整備するに当たり支障となる地中障害物及び土壌汚染等に起因して設置運営事業者の負担が増加すると見込まれる場合は、設置運営事業者の施設計画や施工計画等を踏まえ、対応方法等について事前に協議の上、大阪市の設計・積算基準等により、大阪市が当該増加負担のうち妥当と認める額を負担するものとする。詳細については、事業条件書等において示す。

 大阪市はこれまで、夢洲と同様の咲洲(さきしま)や舞洲(まいしま)といった埋め立て地を売却したり賃貸したりする際、土壌汚染対策などの費用を市が負担しないことを原則としてきたが、夢洲のIRをめぐっては、これが例外的に放棄された形だ。なぜか。

 唯一の応募事業者だったMGM・オリックス連合と市とのやり取りが要因となりうるが、それが一体どのようなものだったのか、今なお明かされていない。

 自民党大阪府連は都構想やIRをめぐって、維新と激しく対立してきた。大阪市議会自民党の川嶋広稔議員は21年12月24日、市当局から興味深い資料を受け取った。

 21年3月の追加募集の前の2月12日、夢洲の整備計画の修正案を協議した市の「戦略会議」の資料提供を市当局に求めたが、松井市長ら出席者と概要以外の記述が黒塗りにされていた(下写真)。戦略会議黒塗り資料開示された戦略会議は全7ページのうち、1枚目の後半以降がすべて黒塗りだった 写真:川嶋大阪市議提供 拡大画像表示

 

川嶋市議はダイヤモンド編集部の取材に「MGM・オリックス連合側から市に対し、土壌汚染対策などの費用負担の要求があったのではないか。黒塗りの資料にはその内容が記されている可能性がある。どうしてもIRを実現したい市側が、唯一の応募者に足元を見られ、いいようにされているのではないか」と指摘する。

 それでも年間530億円という「リターン」が府と市にそれぞれもたらされるからいいではないか、というのが松井市長の言い分だ。では、その根拠を検証してみよう。

府と市の収入は「コロナ収束が前提」
維新の看板政策、WTCの二の舞に?

 530億円のうち府と市への納入金は、事業者が得る粗利の15%。入場料も当然、入場者数に左右されるので、彼らの事業が不振になれば、府と市の収入も減る。コロナ禍でMGMら世界のカジノ大手が大打撃を受け、大阪・ミナミの商店街を埋め尽くした中国系インバウンド観光客が消え去ったことを考えれば、決して安定した収入とは言えない。

 市IR推進局は取材に対し、これらの見込み額の試算には外国からの来訪客の影響も含んでおり、コロナ禍が今後収束していくことを前提としていると説明した。現在まさに進行している事態の教訓が生かされていないのである。

 かつて大阪湾岸では、市が超高層のワールドトレードセンタービル(WTC、現大阪府咲洲庁舎)を建設したもののテナントが入らず、第三セクターである運営会社が破綻。09年に一般会計から港営事業会計に164億円を拠出して支援した。大阪市民にとっては実に忌まわしい記憶だが、もし夢洲の土壌改良工事で港営事業会計を穴埋めすれば、この時以来の悪夢となる。松井市長がいかに「リターン」を強調しようとも、資料を黒塗りにするようでは、あまりに説得力を欠く。

 橋下徹元大阪市長ら維新はもともと、こうした行政の乱開発の失敗を強く批判して大阪の有権者に浸透。今や地元民放テレビ局の番組に吉村知事らがたびたび出演する人気ぶりで、昨年10月の総選挙では、大阪府内の全選挙区で候補者が当選するほど盤石な地位を築いた。

 ちなみに橋下氏は府知事時代に「増税よりカジノ。収益の一部は教育、福祉、医療に回す」と豪語した。だがコロナ禍で医療の危機は目下、継続中であり、それは維新の行政改革による医療や保健所機能の低下が一因と批判されている。

 コロナ禍初期の20年4月、橋下氏はツイッターで「僕が今更言うのもおかしいところですが、大阪府知事時代、大阪市長時代に徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させているところがあると思います。保健所、府立市立病院など。そこは、お手数をおかけしますが見直しをよろしくお願いします」と言及した。

 挙句、IRへの「投資」が市民負担に転じれば、WTCの二の舞となり、大阪市政に新たな負の遺産を作り出すことになる。後になって「見直し」をすることはできない。

【訂正】記事初出時より、以下のように修正しました。
1ページ目3段落目:127億円膨らむ見通しであることも判明した。→129億円膨らむ見通しであることも判明した。
(2022年1月21日14:48 ダイヤモンド編集部)
 

 

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1 コメント

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Unknown (真実のブログ応援したい)
2022-02-15 00:03:48
良かったー。ほんとうによかったー。
カジノは日本人のためによくない。ラスベガスでボロ負けして会社に大迷惑掛けた御曹司いたじゃないですか?自分が大事なら全員反対するべきですよね。
これで支持率下がるでしょ?維新ってつめが甘いのでしょうか?
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