日日是好日

「アナザー・カントリー」について、実に主観的に書き散らしてます。
たまに身辺の雑記も。

本当に彼女なのか?

2013-10-08 07:18:54 | 源氏物語
浮舟は宇治川に身を投げ、ある尼君に助けられます。

「あさき」では、そうなっている。

でも原作では、尼が拾ったのは、
本当に浮舟なのか?が、
いささかのクエスチョンになっています。

おそらくは浮舟なんだろうが、
でもあるいは、まったくの別人かもしれない。
過去に東国で暮らしたことがあるのだけが共通している、
他の女かもしれない。

このあたりの幻想風味が、
なんともいえません。

だいたいが「源氏物語」は、
人称をはっきり書かないことで有名です。
古文のセンセは「使われている敬語で判断しろ」と言いました。

でもどうしてそもそも紫式部は省略したのか。
紙と墨の節約?
怠慢?

では、ない。

物語を女房(侍女)たちが聞いている。
ある女房は「姫君が昔語りをして、それに同情した公達がよよと泣いている」話だと思う。
他のある女房は「公達が昔の話をして、それを聞いた姫君が同情して泣いている」話だと思っている。
主語を曖昧にすることで、
一巻の絵巻物から、
いくつものストーリーがうまれる。
今みたいに近所の本屋に行けば、
雪崩をうつほどの書籍が積まれている時代じゃない。
紫式部はこうやって、
自分の書いた「源氏物語」に、
何倍もの価値を与えたのではないでしょうか。
(このあたりのテクは、「ぼくの地球を守って」と似てますね)

ちらとメインサイトの話をすると、
私の小説のキャラの半分以上は一人称が「俺」なので、
誰がしゃべっているのかわかりにくいことがあります。
ラノベなら、編集のチェックが入るところだ。

実を言えば、書いている作者でさえ、
誰の発言なのか決めかねることがあるのですよ。
いや、ホントに。

でも、ま、
それはそれでいいのですわ。

オジン源氏

2013-09-27 22:54:42 | 源氏物語
こういう人は多いでしょうが、
私も大和和紀の「あさきゆめみし」を読んでから、
原作の「源氏」を手に取りました。

だから、「あさき」との相違点ばかりが目につくのですよ。

一番驚くのは、
源氏の君が意外ともててないこと。

秋好む中宮からは、「源氏の君の残り香がキモイ」と、
着物の袖であおられている。

明石の君は一度たりとも、
源氏の君を慕う言葉を口にしたことがない。
(ついでに言うと初夜は完全なレイプ)

玉葛の君の時は、
半裸の状態で彼女の傍に横たわって、
うんざりさせている。
こうなると完璧に、セクハラオジンです。

そう。「あさき」と一番違うのが、この玉葛の君です。
原作では、黒ひげの大将との初夜が書かれていない。
いちおう女房が手引きして、その女房が処罰されてもいますから、
「あさき」と似たシチュエーションだったとも思える。

でも、果たして本当にそうか?

原作では、玉葛の君は、たいそう計算高い女と描写されています。
「あさき」では実父の大臣が「大将と結婚するのが一番いい縁だ」と言っていますが、
これは本当は、玉葛の出した結論だったのではないか。
つまり玉葛も黒ひげの大将と結婚したかった。
でも源氏の君や紫の上の手前、自分からは言いにくい。
だから「強引に迫られて仕方なく」という形にしたのではないでしょうか。
女房の一人を、スケープゴートにして。


玉葛の結婚のすぐあとに、源氏の君は女三の宮を娶る。
源氏の君の転落の始まりです。