どシリアスなマヌケの日常

毎日毎日、ストーリー漫画を描き、残りは妄想.,いや構想の日々の日記。

イノセント後編3 妬みの色

2023-01-03 09:42:00 | 日記
大輝は会社の自販機の前にいた。そこにマリがやってきた。
マリはニコニコしながら言った。
「田中さん、お子さんができたんですって?おめでとうございます。」
「ありがとう。この歳から父親だから頑張って働かないと。」と大輝も笑って答えた。

マリは続けて「羨ましい。私はもう自分の子供は絶望的だもの。田中さんは男性だから分からないでしょうけど。私は仕事に生きるしかないわね。」これも笑って言った。これには大輝もフォローしようがない。マリはエリカと同い年だけど独身だ。マリはペットボトルのお茶を買って「奥さんを大事にしてね」と言って「それでは」と離れていった。
大輝から見えるマリの色は、あの不毛な付き合いの頃より更に汚れていた。
仕事はできるが、部下の女子社員に対しての当たりがキツく、常務と不倫して色じかけで役職についたという噂まである。
42歳には見えない。昔から綺麗な人だ。私のように色が見えない男となら、とっくに結婚してて当たり前なのに。でも、あんなに色が汚れている人は幸せになれるのだろうか。私には見えるだけで色を変えることはできない。界だってできないだろう。




長い廊下を総務部まで戻りながら、マリの頭の中は煮えたぎるように嫉妬していた。
常務の愛人なのは事実だった。仕事で上に上がるために付き合っていた。何年経ってもマリの立ち位置が変わらないので「奥さんにバラす」と半ば脅迫して「係長」になった。
それでも、この会社では、課長止まりだろう。
大学時代の女友達。専業主婦の連中の夫は管理職になり始めている。子供は有名中学の受験。習い事が仕事につながったり、趣味で書いてた小説で作家になっているのもいる。最初から仕事志向の独身女は、そもそも就職から女性が不利にならない所を選んで外資や公務員。順調に出世している。ワーキングマザーでも、マリより成功しているのはゴロゴロいる。
他人と自分を比べて自分が上にいないと気が済まないのが泉田マリという人間だった。彼女の「不公平」は彼女が負けていると思った時の口癖だった。

はるもエリカももうすぐ入院する。
界は、相変わらず2人と4人の「お守り」神として家事をしていた。
エリカが「界のお母さん、あかりちゃんはどういうお母さんなの?」と界に聞いてきた。
「母は、エリカも知ってる通り重い心の病気を持っています。でも、調子のいい時は一日中仕事でした。父が補佐をしていました。一番偉いのは母です。優しいけれど、怖いです。本当に怒った時は逆にニコニコしてます。怖いです。」
「あかりちゃんの仕事は何?」「。。。。女王様」「は?それって風俗のじゃないよね?」エリカは意味がわからず、ついそう言った。界は慌てて「滅多なことは言わないでください!私の母の国は高天原です。そう言えば母の本当の名前がわかりますよね。言っちゃあダメですよ。私たち子供には、甘いところも多い母親ですが、女王様の時は違います。」
「じゃあ、界は王子様なんだ」とエリカが言うと「3番目ですけど、そうです。でも、私は経験が浅いのです。奥多摩の神主が義務教育終了みたいなものですから。私たち「在る者」が完全に大人になるには長い経験が必要なのです。」
「修が界をガキって言ったのは外れてなかったんだね」とエリカがズケズケ言うと界は「修は、色ではなく目で見えないものを感じ取ることができる人間です。エリカの顔なんかどうでもいい人。中身しか評価してません。エリカはシャインと同じだと聞いています。シャインにも、もうすぐ会えますね。」と言った。
「うん。帝王切開の日が決まったら知らせるの。そしたら、すぐ来るよ」
「楽しみです。そういえば、はるは?」
「はる姉は、お部屋でお仕事中。」

妊娠37週に入るまでは胎内で育つのが胎児には望ましい。
今は32週。2人のお腹は今にも破裂しそうなほど膨らんでいた。母子ともにトラブルはない。でも、ここから先はわからない。このまま順調でも34週には2人とも入院する。

イノセント後編4に続く