ラッコ庵日乗

「不思議な話」や「ヘンな話」が大好きなラッコ庵の日記。

お嬢様の本気「ロング・ウェイ・ノース」

2019年09月28日 | 映画・ドラマ・マンガ・アニメ
やっと「ロング・ウェイ・ノース」見てきました。恵比寿の写真美術館でしかやってないので、仕方なく重い腰を上げての上京でしたが、私これ好き!見てよかった。

19世紀ロシア貴族の娘サーシャが、北極探検の航海に出たまま消息を断った祖父を探す旅に出る。世間知らずのお嬢様が様々な試練を乗り越え見つけたものは…

ストーリーもキャラクターも演出も、すべてにおいて過不足なく潔い。
輪郭線のない切り絵のようなキャラクターが、一旦動き出すとなんと生き生きとして個性的なことか。平面で塗り分けた風景の色彩の美しさ。海鳥の声、風の音、木造船のきしみのリアルさ。凍った海を行くノルゲ号の過酷な旅はそれだけでも胸を打たれるのに、帆船好きにはたまらないでしょう。
画集とかカレンダーとかがあったら欲しいな。

お嬢様は本気になるとすごいんです。
おすすめ。




源氏物語 A・ウェイリー版(左右社)

2019年09月24日 | 本あれこれ
この本にはいろんな意味でびっくりさせられました。
まず「予約の本が来ました」とのお知らせをもらって図書館のカウンターで受け取ったとき。「何これ?厚い!重い!」685ページ。辞書以外でなかなか見ないわ~。角で叩かれたら死なないまでも怪我くらいしそう…いつも寝転がって本を読む私にとっては凶器です。
でも一番驚いたのは翻訳ですね。
ご存知のようにウェイリー版源氏物語は、百年ほど前にイギリス人のアーサー・ウェイリーが原文を英語に訳したもの。文学的価値も高くヨーロッパ各国語に重訳されて、西欧に源氏物語ブームを起こしたとされる名作です。
それをそれぞれ英文学と仏文学の研究者である毬矢まりえ、森山恵姉妹がさらに日本語に訳し直したものらしいのですが…。
自慢じゃないけど現代語訳を含め「源氏物語」を読み通したことのない私。この本に期待したのは、日本の知識のない百年前のイギリス人読者の目線で読めるエキゾチックな宮廷絵巻的な何か。そして古典に馴染みのない日本人にも近代小説並みにサクサク読みやすいものであって欲しい。
だから登場人物がカタカナ書きで「ゲンジ」「レディロクジョウ」なのはなかなか素敵だし、ウェイリーが読者に分かりやすいように「牛車→馬車」「琵琶→リュート」「数珠→ロザリオ」などと訳したのをそのままにしているのはむしろ大歓迎。ただ「伊勢の斎宮→女神ウェスタの巫女」というのには驚きましたが(^-^;(「狩衣→狩猟用クローク」というのもちょっとビミョー)
でもね、これはどうですか?「エンペラーのパレス」「行幸を祝賀するダンサーとミュージシャン」「コリアのフォーチュンテラー」、、、
何でカタカナ英語で書くかな~?「皇帝の宮殿」でいいじゃん。日本語で書いてよ。ルー大柴かよ~。それなのに行幸はそのままかよ~。
極めつけは「ゲンジのエグザイル」。
念のために説明すると、これ源氏が罪を得て須磨に隠遁したことを言ってるんです。英語のエグザイルの意味を調べてみたら「亡命」とか「流謫」とか出てきますけど、それにしても「ゲンジのエグザイル」って…
源氏がグルグルダンスをしてるところがどうしても頭に浮かんでしまいました。

結局こういう表現が至るところに頻出するのが気になってサクサクとは読めませんでした。翻訳者のセンスの問題かな。あとがきによれば幼い頃から姉妹で百人一首に親しみ、源氏物語を愛読してたそうなんだけど。
この一冊で桐壷から明石まで。薫やら匂宮の「僕は…」という台詞が村上春樹みたい、といわれる宇治十帖までたどり着けるでしょうか。

本の力

2019年09月22日 | 本あれこれ
偶然見た、ザ・ノンフィクション「半グレ集団を作った男 過去の罪と償いの日々」(フジ)。
中国残留孤児二世として14歳で来日したワン。中学校でいじめられ、言葉がわかればいじめられないだろうと日本語を猛勉強すると、今度は悪口と差別がわかるようになった。
ドロップアウトして半グレ集団「怒羅権(ドラゴン)」のリーダーになり、被害総額10億円にのぼる窃盗を繰り返し、最後には傷害事件を起こして逮捕起訴され懲役13年を求刑された。
法廷でも全く反省の色を見せなかったワンの気持ちを変えた裁判官の一言。
「あなたの愛読書だという『阿Q正伝』を読み返してみました」
そこからワンの過酷な人生を思いやり、更生して人生をやり直すようにという内容だった。
服役中に3000冊の本を読破したワンは、出所後全国の受刑者にリクエストのあった本を送る活動を続けている。受刑者の会費制だが実際に払っているのは1割。あとは寄付などに頼る活動だ…。
聞かなければ、中国生まれだとは全く分からない正確な日本語、豊富な語彙。
本を送るだけでなく、受刑者からの手紙には必ず返事を書き、出所してきた人の面倒も見る。
タイトルからは想像できませんが、本の力ということを考えさせられる番組でした。

今日のみなとみらい

2019年09月20日 | おでかけ記録
桜木町駅前に巨大ラガーマンが出現。
臨港パークのファンゾーンにいってみたけどまだオープンしてなかった。辺りにはラグビーファンや関係者らしい人が結構いました。
大回りして駅に帰ろうとしたら、中央地区にすごいビルが建設中だった。ホテルらしいけど、インパクトのある形でランドマークになりそうですね。窓掃除?のゴンドラが怖い((( ;゚Д゚))) 今日の歩数一万歩越え。

松方コレクション展

2019年09月14日 | おでかけ記録
国立西洋美術館の松方コレクション展に行ってきました。週刊文春に原田マハが連載していた「美しき愚か者たちのタブロー」を読んでいたので、事前学習はバッチリ。
会場にいってみると、終了間近+涼しくなるのを待っていたとおぼしき観覧者(私もそうですが)でなかなかの混み具合でした。
大正~昭和初年にかけて、松方幸次郎が「日本に本物の西洋美術が見られる本格的な美術館を作りたい」という夢を描いて築いた膨大なコレクションの数奇な運命はご存じの通り。
戦後フランスから返還されなかった名品や散逸した作品もできる限り集めたという展示は、見ごたえありすぎでした。
収集順に展示されているので最初は脈絡ない感じですが、徐々に内外のブレインを得て、当時必ずしも評価の定まっていなかった印象派に力を入れ、時に画家本人(モネ)から名品を買い取ったりするところは、原田マハの小説でも読みどころ。
でも、有名な作品を見ると「これ、こないだ大塚国際美術館でみた!」と思ってしまうのはどうなんだろう?これぞ本末転倒(^-^;

あと常設展でやってた「モダンウーマン」展が思わぬ拾い物でした。
タイトルからは想像できませんが19世紀~20世紀初頭に活躍したフィンランドの女性画家の作品ばかりを集めた展示。フィンランドの美術学校はフランス等より早く19世紀半ば(江戸時代だよね)から女性に門戸を開いていて、留学なども奨励したので優れた女性画家を輩出したそうです。(当時の美術学校の授業風景の写真で、女子学生は肩にフリルのついたエプロン?スモック?を着てるのがかわいい)
作品は、時代を先取りするようなモダンな感性が感じられて、どれも好きでした。

世界遺産に指定されたルコルビジェ設計の建物や、屋外のロダンの大作もすばらしい国立西洋美術館。松方コレクション展はあと少しですが、むしろ常設展だけの時にゆっくり訪れたい美術館です。




トールキン 旅のはじまり

2019年09月06日 | 映画・ドラマ・マンガ・アニメ
感想を書こうとしたら、三日前に見たばかりなのにもう記憶が薄れている…
「大丈夫か?私」
という疑いは差し引いても、わりと薄口の映画でした( ̄▽ ̄)
でもそれでいいの。
第一次大戦ソンムの戦いでの悲惨な体験、許されない恋などはあるもののドラマチックとまではいえないトールキンの前半生ですが、バーミンガムの少年時代、オクスフォードの学生時代が丹念に描かれていて、あの時代と場所の気分をこの目で見られてよかった。加えて忠実な従僕の名前がサムだったり、指輪ファンが見れば「あー」と思うところがちょこちょこあって楽しめました。
エディス役の女優さんは、わたし的にはルシアンというよりエオウィンのイメージ。

平日の昼間とあって30人くらいの入りでしたが、その多くがおひとりさまの中高年女性。一人一人に駆け寄って握手したいくらいシンパシーを感じました。