ラッコ庵日乗

「不思議な話」や「ヘンな話」が大好きなラッコ庵の日記。

「本格小説」 水村美苗 新潮社

2010年12月28日 | 本あれこれ
どうしてよりによって、こんな歳末の忙しい時に当たっちゃったんだろう!?
図書館から「予約の本が来ました」というメールを受け取っていってみると、水村美苗の本が3冊も来ていました。

この著者の本を読むのは初めて。
まず薄いほうの「日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で―」(筑摩書房)を読んでみたら、これはこれですごく面白く、是非皆様におすすめしたい本ではありましたが、続いて「本格小説」(というタイトルの小説です)を手に取ってしまったのが運のつき(?)
これが巻を措くあたわずの面白さで、つい読みふけってしまいました。
といっても主に寝床の中で読むだけだし、とても厚い本の二冊組みなので、読み終えるには3日ほどかかりましたけれど・・・。

最初の語り手である「水村美苗」は、著者と名前も同じなら生い立ちもそっくりだけれど、果たして作者本人なのか?なぜ「本格小説」という人を喰った題なのか?というような疑問は置いといて、とにかく物語の面白さに引き込まれました。
戦後すぐからほぼ現代に至る、ある謎の人物の生き様が解き明かされていくのですが、夢中で読み進むうちに、ああ、これはあの有名な世界文学史上の傑作をなぞっているのだなあ、とわかってきます。でも最後にどんでん返しがあるので油断はできません。
長い外国生活の中で、日本語および日本文学と真剣に切り結んできた著者の、慎重に吟味された日本語が魔法のようにイメージを喚起し、それぞれのシーンをリアルにありありと立ち上がらせるのは見事と言うよりありません。

あー、面白かった!