ラッコ庵日乗

「不思議な話」や「ヘンな話」が大好きなラッコ庵の日記。

源氏物語 A・ウェイリー版(左右社)

2019年09月24日 | 本あれこれ
この本にはいろんな意味でびっくりさせられました。
まず「予約の本が来ました」とのお知らせをもらって図書館のカウンターで受け取ったとき。「何これ?厚い!重い!」685ページ。辞書以外でなかなか見ないわ~。角で叩かれたら死なないまでも怪我くらいしそう…いつも寝転がって本を読む私にとっては凶器です。
でも一番驚いたのは翻訳ですね。
ご存知のようにウェイリー版源氏物語は、百年ほど前にイギリス人のアーサー・ウェイリーが原文を英語に訳したもの。文学的価値も高くヨーロッパ各国語に重訳されて、西欧に源氏物語ブームを起こしたとされる名作です。
それをそれぞれ英文学と仏文学の研究者である毬矢まりえ、森山恵姉妹がさらに日本語に訳し直したものらしいのですが…。
自慢じゃないけど現代語訳を含め「源氏物語」を読み通したことのない私。この本に期待したのは、日本の知識のない百年前のイギリス人読者の目線で読めるエキゾチックな宮廷絵巻的な何か。そして古典に馴染みのない日本人にも近代小説並みにサクサク読みやすいものであって欲しい。
だから登場人物がカタカナ書きで「ゲンジ」「レディロクジョウ」なのはなかなか素敵だし、ウェイリーが読者に分かりやすいように「牛車→馬車」「琵琶→リュート」「数珠→ロザリオ」などと訳したのをそのままにしているのはむしろ大歓迎。ただ「伊勢の斎宮→女神ウェスタの巫女」というのには驚きましたが(^-^;(「狩衣→狩猟用クローク」というのもちょっとビミョー)
でもね、これはどうですか?「エンペラーのパレス」「行幸を祝賀するダンサーとミュージシャン」「コリアのフォーチュンテラー」、、、
何でカタカナ英語で書くかな~?「皇帝の宮殿」でいいじゃん。日本語で書いてよ。ルー大柴かよ~。それなのに行幸はそのままかよ~。
極めつけは「ゲンジのエグザイル」。
念のために説明すると、これ源氏が罪を得て須磨に隠遁したことを言ってるんです。英語のエグザイルの意味を調べてみたら「亡命」とか「流謫」とか出てきますけど、それにしても「ゲンジのエグザイル」って…
源氏がグルグルダンスをしてるところがどうしても頭に浮かんでしまいました。

結局こういう表現が至るところに頻出するのが気になってサクサクとは読めませんでした。翻訳者のセンスの問題かな。あとがきによれば幼い頃から姉妹で百人一首に親しみ、源氏物語を愛読してたそうなんだけど。
この一冊で桐壷から明石まで。薫やら匂宮の「僕は…」という台詞が村上春樹みたい、といわれる宇治十帖までたどり着けるでしょうか。

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