安倍政権で起こるリスクとチャンス(1)
~「美しい国日本」で注目すべきこと
長州出身の安倍政権が発足した。先祖が薩摩の小泉さんからのバトンタッチ。またしても薩長かと思うのはわたしだけだろうか。
その安倍政権で気になるテーマが「美しい国日本」「再チャレンジ」と二つの言葉だ。「美しい国日本」は、荒れている日本、また日本人をどのように再生するのか。教育、言葉、考え方、街、国土、行政、国の枠組みなど、幅広い定義から言っているのだろう。
一方、「再チャレンジ」は、いったん破綻したとしても、夢を失うのではなく、再チャレンジができるよう、その機会を平等に与えようとするものだろう。
今の日本は、20世紀の破壊と21世紀の再構築が行われている「時代の交差点」だと、わたしは考えている。交差点はハザード(リスク要因)が多い。したがってリスクが高く事故も多い。それはリスク社会の到来を意味している。そうした意味で、殺人などの犯罪の増加、失業者の増加(最近は少し解消の方向)、自殺者の増加、企業不祥事、企業倒産など荒れた社会が続いてきたことと符合している。安倍政権は破壊と再構築の最終章、仕上げの政権という位置づけだとわたしには見える。
「自民党をぶっ壊す」と出てきた小泉政権が、20世紀の古い日本の体質、枠組みをぶっ壊す。今度は「美しい日本」「再チャレンジ」で再生と再構築。この二人の総理大臣で新しい時代、新しい日本を変革するというシナリオだ。
そこで、この二つのテーマから見える次のリスクとチャンスを考えてみたい。
環境問題がクローズアップ?
「美しい国日本」からわたしが一番感じるもの、それは「環境問題」だ。環境は空気、水、川、湖沼、海、土壌、騒音など幅の広いテーマだが、ここでは土壌問題を考えてみたい。
2002年5月、「土壌汚染対策法」が施行された。工場など使用しなくなった施設が土壌汚染されていないかを行政がチェックし、汚染されている場合は浄化(立ち入り制限、覆土、舗装、封じ込め、除去などを含む)しなければならない。
米国では有名な「スーパーファンド法(1980年施行、1986年修正)」がある。これは汚染された土壌を、汚染責任者が見つかるまで、石油税などから創設された信託基金(スーパーファンド)で浄化費用を立て替える制度。日本の土壌汚染対策法をはるかにしのぐ厳しさがある。それは、汚染にかかわるすべての関与者に費用などの負担をさせようとするものだ。施設所有者、管理者、発生者は当然として、汚染物質の輸送業者、融資金融機関までもが連帯責任を負う。これにより金融機関は汚染するような企業、施設への融資は行わない姿勢となり、企業のリスクが膨らんだ。
わたしは、このスーパーファンド法のような厳しい法律がいつ日本で施行されるのかという点に注目している。
わたしたちリスクマネジメントにかかわる者は、ついつい「もし政権が変わったらどうなるか」「もしこのような法律ができたら」などの仮説を立ててみる癖がある。心配性だからなのではなく、「リスクは未来にしかない」からだ。マクロハザードは自分たちでコントロールできないという特徴を持っているリスク要因だ。したがって未来予測することが求められるということになる。
企業に訪れるリスクとチャンス
そうした意味から、今回の安倍政権の「美しい国日本」の言葉と米国のスーパーファンド法を結びつけて考えてみると大きなテーマになりそうに思える。今回の安倍政権が何年続くかはともかくとして、流れは確実に環境規制強化に動いている。そうした背景から企業は土壌汚染対策をもう一度考えてみていただきたい。
もし施行となれば、使用しなくなった工場跡地だけではなく、使用中の工場までも対象となる可能性がある。その浄化費用の負担は計り知れない。費用だけではなく、工場の営業停止や金融機関の融資引き上げとなれば存続の危機が訪れるかもしれない。
特に大企業ほど広い工場を有している。100坪にかかるコストと、1万坪、10万坪では桁が違う。早くからその費用を予算化し計画的に取り組むことが大事ではないだろうか。新会社法、そして日本版SOXと経営責任が厳しく問われる昨今、CSR、コンプライアンス、内部統制などの面からも積極的な取り組みが望まれるであろう。
ここでのリスクはもうお分かりのように、土壌汚染を引き起こしやすい有害物質を使用している工場(企業)であり、運送、金融業者、さらには工場跡地をマンション、オフィスビルなどで所有(特に2002年5月以前に購入)している人たちとなろう。
チャンスは土壌汚染を浄化する業者と、早く浄化に積極的に取り組んだ企業になるのではないだろうか。
~「美しい国日本」で注目すべきこと
長州出身の安倍政権が発足した。先祖が薩摩の小泉さんからのバトンタッチ。またしても薩長かと思うのはわたしだけだろうか。
その安倍政権で気になるテーマが「美しい国日本」「再チャレンジ」と二つの言葉だ。「美しい国日本」は、荒れている日本、また日本人をどのように再生するのか。教育、言葉、考え方、街、国土、行政、国の枠組みなど、幅広い定義から言っているのだろう。
一方、「再チャレンジ」は、いったん破綻したとしても、夢を失うのではなく、再チャレンジができるよう、その機会を平等に与えようとするものだろう。
今の日本は、20世紀の破壊と21世紀の再構築が行われている「時代の交差点」だと、わたしは考えている。交差点はハザード(リスク要因)が多い。したがってリスクが高く事故も多い。それはリスク社会の到来を意味している。そうした意味で、殺人などの犯罪の増加、失業者の増加(最近は少し解消の方向)、自殺者の増加、企業不祥事、企業倒産など荒れた社会が続いてきたことと符合している。安倍政権は破壊と再構築の最終章、仕上げの政権という位置づけだとわたしには見える。
「自民党をぶっ壊す」と出てきた小泉政権が、20世紀の古い日本の体質、枠組みをぶっ壊す。今度は「美しい日本」「再チャレンジ」で再生と再構築。この二人の総理大臣で新しい時代、新しい日本を変革するというシナリオだ。
そこで、この二つのテーマから見える次のリスクとチャンスを考えてみたい。
環境問題がクローズアップ?
「美しい国日本」からわたしが一番感じるもの、それは「環境問題」だ。環境は空気、水、川、湖沼、海、土壌、騒音など幅の広いテーマだが、ここでは土壌問題を考えてみたい。
2002年5月、「土壌汚染対策法」が施行された。工場など使用しなくなった施設が土壌汚染されていないかを行政がチェックし、汚染されている場合は浄化(立ち入り制限、覆土、舗装、封じ込め、除去などを含む)しなければならない。
米国では有名な「スーパーファンド法(1980年施行、1986年修正)」がある。これは汚染された土壌を、汚染責任者が見つかるまで、石油税などから創設された信託基金(スーパーファンド)で浄化費用を立て替える制度。日本の土壌汚染対策法をはるかにしのぐ厳しさがある。それは、汚染にかかわるすべての関与者に費用などの負担をさせようとするものだ。施設所有者、管理者、発生者は当然として、汚染物質の輸送業者、融資金融機関までもが連帯責任を負う。これにより金融機関は汚染するような企業、施設への融資は行わない姿勢となり、企業のリスクが膨らんだ。
わたしは、このスーパーファンド法のような厳しい法律がいつ日本で施行されるのかという点に注目している。
わたしたちリスクマネジメントにかかわる者は、ついつい「もし政権が変わったらどうなるか」「もしこのような法律ができたら」などの仮説を立ててみる癖がある。心配性だからなのではなく、「リスクは未来にしかない」からだ。マクロハザードは自分たちでコントロールできないという特徴を持っているリスク要因だ。したがって未来予測することが求められるということになる。
企業に訪れるリスクとチャンス
そうした意味から、今回の安倍政権の「美しい国日本」の言葉と米国のスーパーファンド法を結びつけて考えてみると大きなテーマになりそうに思える。今回の安倍政権が何年続くかはともかくとして、流れは確実に環境規制強化に動いている。そうした背景から企業は土壌汚染対策をもう一度考えてみていただきたい。
もし施行となれば、使用しなくなった工場跡地だけではなく、使用中の工場までも対象となる可能性がある。その浄化費用の負担は計り知れない。費用だけではなく、工場の営業停止や金融機関の融資引き上げとなれば存続の危機が訪れるかもしれない。
特に大企業ほど広い工場を有している。100坪にかかるコストと、1万坪、10万坪では桁が違う。早くからその費用を予算化し計画的に取り組むことが大事ではないだろうか。新会社法、そして日本版SOXと経営責任が厳しく問われる昨今、CSR、コンプライアンス、内部統制などの面からも積極的な取り組みが望まれるであろう。
ここでのリスクはもうお分かりのように、土壌汚染を引き起こしやすい有害物質を使用している工場(企業)であり、運送、金融業者、さらには工場跡地をマンション、オフィスビルなどで所有(特に2002年5月以前に購入)している人たちとなろう。
チャンスは土壌汚染を浄化する業者と、早く浄化に積極的に取り組んだ企業になるのではないだろうか。