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老朽インフラ 財源含めた維持計画を

2012年12月28日 14時33分36秒 | 診断・長寿命化
 9人が亡くなった中央自動車道の笹子トンネル天井板崩落事故から3週間。各地の古くなったトンネルの安全性があらためてクローズアップされている。

 国土交通省は天井板が同じ構造のトンネルを緊急点検するよう指示した結果、不具合が相次ぎ見つかった。笹子以外でも適切な補修を施さなければ、事故が起きても不思議ではない。

 トンネルに限った話でもない。道路や橋、下水道なども同様である。高度成長期に集中して造られ、老朽化が進むインフラをどう安全に保っていくのか。国や自治体は財源を含めて長期的な維持管理の計画を練るべきだ。

 現状はどうだろう。高速道路の場合、東日本、中日本、西日本の3社が運営する約9千キロのうち、完成後30年を超えているのが4割に上る。

 橋も深刻だ。全国の自治体が管理する橋のうち約6万カ所で補修が必要とされるが、1割しか対応できていない。広島県内でも、県が調査して手当てを要するとした橋の大半はいまだに手つかずだ。

 下水道管は全国で約2割、水門やダムなどの河川管理施設では4割が、設置から30年以上たっている。

 国交省の試算では、老朽インフラの維持管理や補修、更新にかかる費用は今後50年間で190兆円にもなるという。巨額だが、国民の安全を守る投資として、やむを得ない面はあろう。

 ではこれだけの財源をどう捻出していくのか。国債と借入金、政府短期証券を合わせた国の借金残高は1千兆円に迫る。余裕はほぼない。

 公共事業は今まで新規の着工に目が向きがちだった。これからは既存施設の補修を中心に据えるよう、考え方から変えていかなければならないだろう。適切に修繕すれば、インフラの寿命を延ばすことも可能である。

 しかも日本の人口は減少に転じている。とりわけ新規で大型の公共事業は抑制するべきではないか。新たに造れば、その分だけ維持管理コストが発生することも忘れてはならない。

 既存施設の補修も費用を抑える工夫が欠かせない。身近な生活道路については、住民参加型の手法をもっと検討、実践してもよい。ともに汗を流すことは地域づくりにもつながる。

 気になるのは、今週誕生する新政権を担う自民、公明両党の姿勢だ。まず10兆円規模の大型補正予算を編成するというが、肝心の中身は後回しになっている印象が否めない。

 緊急性が高い老朽インフラの補修は盛り込まれる見通しだ。だが各省庁によると、それだけで短期間に10兆円を使いきることはほぼ不可能という。

 いくら景気対策のためとはいえ、ばらまき型の発想ではツケを後世に残すばかりだ。事業の費用対効果や優先順位をしっかり見極めなければならない。

 さらに今後10年間で自民党は200兆円、公明党は100兆円の公共事業を掲げている。防災の観点から新たに整備しなければならない施設は確かにあろう。遅れが目立つ学校の耐震化も最優先で急ぐべきだ。

 暮らしを豊かで安全にするインフラが、国民に危害を及ぼしてはなるまい。その原則を再確認した上で、公共事業の在り方を総合的に考える必要がある。

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