左:ラファエレ・カラーチェ(一世)、右:カルロ・ムニエル
マンドリンを弾く人でカラーチェやムニエルを知らない人はよほどの初心者でない限りいないことでしょう。
地味なムニエルに比べて派手なカラーチェの方が知名度が高いかも知れませんが。
ラファエレ・カラーチェ(Raffaele Calace、1863-1934、イタリア)はマンドリンの製作者、作曲家、演奏家、一方カルロ・ムニエル(Carlo Munier、1859-1911、イタリア)はマンドリンの作曲家、演奏家でした。
共にほぼ同時代、日本で言えば江戸末期にナポリで生まれたマンドリンの巨匠で、ムニエルはマンドリンの父と称えられマンドリン教則本の編纂でも知られ、一方カラーチェ製作の楽器カラーチェはマンドリンの三大名器の一つに数えられ特に日本のマンドリニストに高い人気があります。
ラファエレ・カラーチェ一世はカラーチェ家4代目の製作者で、現在は同名の6代目二世とその一人娘である7代目アンナマリアが楽器製作を継承しています。
カラーチェ作曲のマンドリンオリジナル曲はそのほぼ全作品の楽譜をネットからフリーダウンロードすることができます(ここ)。
また日本では今は絶版になっていますがカラーチェの全作品を集めた大作、カラーチェマンドリンアルバム全9巻が1974年から約10年の歳月をかけて発売されました(日比野俊道編、水星社発行、音楽之友社発売)。
カラーチェマンドリンアルバム(第1巻)
ネットとアルバムの1から188までの全作品番号を詳しく比べてみますと両者に相違があるようです。
・ネットのみ欠番の作品番号 :99、100、109、129、158、174
・アルバムのみ欠番の作品番号:77、91、139、159、188
・両方ともに欠番の作品番号 :50、69、82、83、117、153、156
なおネットでは作品1~10はまとめて作品15として掲載されています。
さらに残念なことにこのアルバムには多くの誤植が指摘されており、今日ネットからより原版に近い形で信頼性の高い楽譜が入手できることは有難いことです。
一方ムニエルの作品は作品番号のついている288作品および作品番号のない曲についてネットのIMSLP(国際楽譜ライブラリープロジェクト、International Music Score Library Project)に全部ではありませんが掲載されており、フリーダウンロードすることができます(ここ)。
作品番号のついている曲について5年前の2016年には40作品程度の曲しか掲載されていませんでしたが、現在では80作品と倍増しかなり充実してきた感があります。
マンドリン専門誌、季刊「奏でる!Mandolin」によれば、これは日本人篤志家の方々が未掲載の曲を丹念に調査・収集しアップされてきた地道な成果の賜物とのこと、そのご尽力に頭が下がります。
遺された作品の数としてはカラーチェよりムニエルのほうがかなり多いことがわかります。
カラーチェの曲は弾くのに難しい華麗な大曲が多く、一方ムニエルの曲は教則本を始めマンドリンの手ほどきを目的とした作品が多く、カラーチェの曲に比べて比較的弾きやすい曲が多く見られます。
いずれにしてもこれら両大家の作品は私たちマンドリニストにはまさにかけがえのない大切な宝物であることに違いはありません。
共にYouTubeでも両者の多くの作品を聞くことができます。
関連ブログ:
・マンドリンの父、カルロ・ムニエルの楽譜(2016.01.16)
・カラーチェのマンドリン作品(2011.06.17)