1966年
両翼83・82㍍ー90㍍以上ある他球場より極端に狭い大阪球場は本塁打が出やすい。-南海は過去4年間に351本打ち、被安打は247本。自分は打つが、相手に打たせないのが本拠地で強い理由だ。ビジターにすれば、どれだけ本塁打されないかがカギになる。5回戦の九回、野村に2点本塁打され、完封勝ちは逸したが、それまで南海を完全におさえた嵯峨の投球からそのヒミツをのぞいてみる。まず南海の主軸打者野村への投球を追うとー第一打席(一回二死一塁)は①外角へのカーブ(ストライク)②低めスライダー(ストライク)③スライダー(ボール)④ボールのスライダーで一邪飛。第一打席(四回無死無走者)①外角スライダー(ストライク)②低め直球(ストライク)③スライダーをファウル④低めスライダーを腰をおとして振らせ二ゴロ。第三打席(七回無死走者)①沈むタマ(ボール)②外角スライダー(ストライク)③低めスライダー(ファウル)④外角スライダーで二飛。第四打席(九回一死一塁)は①低めスライダー(ファウル)②外角スライダー(ボール)③外角寄り高めスライダー(嵯峨は直球、野村はスライダーという)を中堅本塁打される。九回の野村に対したときは東映が6-0と大量リードを奪っていた。「つい気を抜いてしまった。外角をねらったのが真ん中中寄りにはいった」(嵯峨)「点が開いたので気を抜きよった。高めにスーッとはいってきた。あそこまでいけば完封をめざして慎重にやらないと・・・」(種茂捕手)というように勝負がきまったあとの雑な投球だ。しかし八回まではスピードがないから三振は少ないが、散発の3安打、南海は打てそうで打てなかった。右翼手として出場した南海・杉山はコーチ兼務の立場から嵯峨をみてこういう。「タマの種類をかえ、スピードをかえ、変化球を多く投げてきた。左打者に対するシュートより右打者に対するスライダーがよかった。ベンチでもこの点を選手に注意したが、どうしても打てなかった」はじめの2打席で2ストライクまで見送った野村は「99%までスライダーを投げてきた。ボールだと思うタマがストライクと宣告される。それでついくさいタマに手が出てしまう」とクビをかしげる。南海の各打者ははじめ嵯峨のタマを待った。一回17球、二、三回20球と三回までに嵯峨は57球も投げた。ところが四回8球、五回4球と投球数が減っている。はやくからヒッティングに出ざるをえなくなったのだ。嵯峨は「ストライクからボールになるタマを振ってくれた」と説明する。昨年の日本シリーズのとき巨人の金田投手が「南海になぜ本格的な投手が出ないのか、この球場に立つとその理由がわかる。狭いからこわくて直球などほうれない。つい低めへ変化球を投げる心理になってしまうんだろう」といったことがある。正確なコントロールと低めへの変化球ー。それをこなせる投手が多くなると南海の勝率はかなり低下するだろう。
両翼83・82㍍ー90㍍以上ある他球場より極端に狭い大阪球場は本塁打が出やすい。-南海は過去4年間に351本打ち、被安打は247本。自分は打つが、相手に打たせないのが本拠地で強い理由だ。ビジターにすれば、どれだけ本塁打されないかがカギになる。5回戦の九回、野村に2点本塁打され、完封勝ちは逸したが、それまで南海を完全におさえた嵯峨の投球からそのヒミツをのぞいてみる。まず南海の主軸打者野村への投球を追うとー第一打席(一回二死一塁)は①外角へのカーブ(ストライク)②低めスライダー(ストライク)③スライダー(ボール)④ボールのスライダーで一邪飛。第一打席(四回無死無走者)①外角スライダー(ストライク)②低め直球(ストライク)③スライダーをファウル④低めスライダーを腰をおとして振らせ二ゴロ。第三打席(七回無死走者)①沈むタマ(ボール)②外角スライダー(ストライク)③低めスライダー(ファウル)④外角スライダーで二飛。第四打席(九回一死一塁)は①低めスライダー(ファウル)②外角スライダー(ボール)③外角寄り高めスライダー(嵯峨は直球、野村はスライダーという)を中堅本塁打される。九回の野村に対したときは東映が6-0と大量リードを奪っていた。「つい気を抜いてしまった。外角をねらったのが真ん中中寄りにはいった」(嵯峨)「点が開いたので気を抜きよった。高めにスーッとはいってきた。あそこまでいけば完封をめざして慎重にやらないと・・・」(種茂捕手)というように勝負がきまったあとの雑な投球だ。しかし八回まではスピードがないから三振は少ないが、散発の3安打、南海は打てそうで打てなかった。右翼手として出場した南海・杉山はコーチ兼務の立場から嵯峨をみてこういう。「タマの種類をかえ、スピードをかえ、変化球を多く投げてきた。左打者に対するシュートより右打者に対するスライダーがよかった。ベンチでもこの点を選手に注意したが、どうしても打てなかった」はじめの2打席で2ストライクまで見送った野村は「99%までスライダーを投げてきた。ボールだと思うタマがストライクと宣告される。それでついくさいタマに手が出てしまう」とクビをかしげる。南海の各打者ははじめ嵯峨のタマを待った。一回17球、二、三回20球と三回までに嵯峨は57球も投げた。ところが四回8球、五回4球と投球数が減っている。はやくからヒッティングに出ざるをえなくなったのだ。嵯峨は「ストライクからボールになるタマを振ってくれた」と説明する。昨年の日本シリーズのとき巨人の金田投手が「南海になぜ本格的な投手が出ないのか、この球場に立つとその理由がわかる。狭いからこわくて直球などほうれない。つい低めへ変化球を投げる心理になってしまうんだろう」といったことがある。正確なコントロールと低めへの変化球ー。それをこなせる投手が多くなると南海の勝率はかなり低下するだろう。