1992年 全国的には知られていないが、スカウトの間では評判が高く、ヤクルト、横浜なども外れ1位に予定していた。川越工時代は埼玉のベスト8が最高。社会人入りしてことしが三年目。昨年秋の日本選手権でNTT北陸を完封して売り出し、今夏の都市対抗ではNTT九州に三塁を踏ませなかった。躍動感あふれるフォームからの速球とフォークが武器。球速は最高143㌔だが、初速と終速の差が少ないように、打者の手元で速球が伸びる。「最初から佐藤を1位でいこうとの案もあったように、即戦力期待」と山本監督。176㌢、72㌔。
1位指名の本田技研・佐藤は「指名されて光栄。広島入りを前向きに考えたい」と、控えめながらプロ入りに意欲をにじませた。佐藤は、勤務先の埼玉県和光市、本多技研和光工場でドラフト会議の推移をテレビで見守った。「事前に10球団からあいさつがあった」社会人の好投手。広島の1位指名には「光栄に思っています」と、素直に喜びを口にした。「正直なところ、プロ野球の知識は皆無。どんなチームなのか、まったく分からない」と、戸惑いも。「まだ(1位指名の)実感がわかない」というのが、本音のようだ。午後二時、広島の渡辺スカウトが指名あいさつに訪れた。「即戦力だ。すぐにでもローテーション入りできる」の励ましに、二十一歳の若者は目を輝かせた。プロ球界は「まったく未知の世界」と言うものの、「どこまで通用するか分からないが、入団は前向きに考えたい」と、気持ちは広島入りに傾いている。本田技研は、伊東(ヤクルト)、田村(阪神)ら好投手を輩出している。中里監督は「先輩たちに引けは取らない。立派に通用するだろう」とみる。埼玉・川越工高から入社して三年目の今季は、10勝1敗の好成績。何より「球に伸びがあり、ストレートとフォークで三振が取れる」(同監督)本格派投手である。甲子園経験もなく、五輪にも不出場。全国的な知名度はいまひとつだ。しかし今季、急速に頭角を現した。都市対抗で完封勝ちするなど、スカウト陣の評価は高い。「ピンチになるほど大胆になれる」強気な性格の持ち主。威勢のいい抱負こそ出さなかったが、「与えられた仕事をやるだけ」と、闘志を内に秘めた。