1961年
九回三番からの近鉄の反撃を3人でかたづけた田沢はケロリとした顔。「別にスピードがあったわけでもない。それでいてほとんどまっすぐで勝負したんだからね。あっ、いいコースへはいったと思っても打たれなかったのは近鉄がどうかしていたんだろう」33年6月13日の対近鉄戦に完投シャットアウトして以来約3年ぶりの好投だ。だが野村捕手はこの3安打の好投を「非常にコントロールがよかったな。ぼくが注文したところをはずれた球は5、6球しかなかった。立ち上がりからコントロールがよかったからカーブを投げさせなかったんだ。だいたい田沢はカーブ投手だが、いつまでもカーブばかりにたよっていると進歩がないしね。いいチャンスだと思ってシュートで真っ向からのピッチングをさせたんだ。打たれればぼくの責任にもなるし、田沢にも気の毒なんだが・・・。まあバクチが当たったんだよ」と決してフロックではないとそのピッチングを分析した。それを田沢にいうと「そうか、なんだかいつもとようすが違うと思っていたんだ。でもこれでぼくのピッチングにも幅ができたということになるんだな」といきいきした顔つきになった。田沢が先発するとふしぎにバックが点をとるというジンクスがある。この日も二回に3点をとった。「ぼくはしあわせものですよ。いつもシリに火がついているような気持ちじゃないからね。前半で大きくリードしてくれるほど投手にとって楽なことはない。ことしの8勝のうちほんとうのぼくの力で勝ちとった星は3勝くらいだよ。みんなバックのおかげだ」と低姿勢。「シャットアウト?ええ、もう何年になるかな。とにかくずっとむかしのことのように覚えている。もちろんうれしいね」こんな田沢を中原コーチは「4年くらい前だったかな。正統派の投手として大いに期待もし、事実18勝した。それが肩をこわしてから逃げるピッチングになってしまった。だがまだ田沢は力で押せる投手だ。その点シャットアウトしたということよりも、きょうの内容が非常にうれしい」と喜んでいる。ことしで7年目。「なかだるみの不調をことしこそとりかえしてみせる」と田沢は張り切っていた。
九回三番からの近鉄の反撃を3人でかたづけた田沢はケロリとした顔。「別にスピードがあったわけでもない。それでいてほとんどまっすぐで勝負したんだからね。あっ、いいコースへはいったと思っても打たれなかったのは近鉄がどうかしていたんだろう」33年6月13日の対近鉄戦に完投シャットアウトして以来約3年ぶりの好投だ。だが野村捕手はこの3安打の好投を「非常にコントロールがよかったな。ぼくが注文したところをはずれた球は5、6球しかなかった。立ち上がりからコントロールがよかったからカーブを投げさせなかったんだ。だいたい田沢はカーブ投手だが、いつまでもカーブばかりにたよっていると進歩がないしね。いいチャンスだと思ってシュートで真っ向からのピッチングをさせたんだ。打たれればぼくの責任にもなるし、田沢にも気の毒なんだが・・・。まあバクチが当たったんだよ」と決してフロックではないとそのピッチングを分析した。それを田沢にいうと「そうか、なんだかいつもとようすが違うと思っていたんだ。でもこれでぼくのピッチングにも幅ができたということになるんだな」といきいきした顔つきになった。田沢が先発するとふしぎにバックが点をとるというジンクスがある。この日も二回に3点をとった。「ぼくはしあわせものですよ。いつもシリに火がついているような気持ちじゃないからね。前半で大きくリードしてくれるほど投手にとって楽なことはない。ことしの8勝のうちほんとうのぼくの力で勝ちとった星は3勝くらいだよ。みんなバックのおかげだ」と低姿勢。「シャットアウト?ええ、もう何年になるかな。とにかくずっとむかしのことのように覚えている。もちろんうれしいね」こんな田沢を中原コーチは「4年くらい前だったかな。正統派の投手として大いに期待もし、事実18勝した。それが肩をこわしてから逃げるピッチングになってしまった。だがまだ田沢は力で押せる投手だ。その点シャットアウトしたということよりも、きょうの内容が非常にうれしい」と喜んでいる。ことしで7年目。「なかだるみの不調をことしこそとりかえしてみせる」と田沢は張り切っていた。