(勘助)「リツ・・・香坂殿はのぅ、そなたをもらいたいと仰せなのじゃ」
(虎綱)「はっ・・・いえっ・・・」
(勘助)「このわしから城盗りの奥義を授かりたい、と云うたのぅ」
第1回『隻眼の男』から山本勘助(内野聖陽)を見守ってきた視聴者は、おっさん、そう来たか、と察しがついたでしょうね。
ミツ(貫地谷しほり)という城を護れなかった勘助の悲願が達成されようとしています。
それにしても、たった3話分の登場回数だったのにもかかわらず、ミツの存在は全編に渡って大きく重いものでした。勘助の半生を支配した、と云っていい。
由布(柴本幸)も勘助にとって運命の女(ひと)でしたが、城というよりはミツの身替わり、ミツが生きていたらこうしてやりたかった、こんなわがままも聞いてやりたかった・・・という無念を晴らすための偶像だったような気がします。
だから、時には彼女の心中を酌んだつもりになって迷走し、武田家中すら混乱させ、雪斎(伊武雅刀)には「妄執だ」と一蹴される始末(第40回『三国同盟』)。
その妄執とは対照的な、娘を北条家へ嫁がせる三条夫人(池脇千鶴)の慈愛が表され、勘助にはずっと「宿題」が課されたままになっていました。
そして、偶像崇拝を許してくれた由布が亡くなります。一途に仕えた勘助に、嫁をとれ、と遺言して(第41回『姫の死』)。
(勘助)「かような者に、人を慈しむことなどできましょうや」(第42回『軍師と軍神』)
物語の外で「神の視点」を与えられている視聴者としては、悲しいけれども勘助、ちょっと違うんじゃない、自分のせいで誰かが不幸になるとか死ぬとか、愚か者には天罰が下って滅ぶと信じる長尾景虎(Gackt)とは真逆の方向で、自罰もまた驕りかもよ、と、もやもや、やきもき。
この「宿題」の回答は提出されない、と諦めかけていました。
それが、どうですか。
(勘助)「リツはわしの城じゃ」
(虎綱)「・・・は」
(勘助)「すなわち、リツを見ればわしの奥義がわかる」
少年の頃、勘助と出会い、武田晴信(市川亀治郎)にとり立てられた源五郎(田中幸太朗)は智将・香坂弾正忠虎綱になっても、わからないことはわからない、とはっきり云う聡明さで好感度200%です。
(勘助)「わしの城を、そなたにゆくゆくは護ってほしいと・・・そう云うておるのじゃ。わからぬか」
おお、虎綱に「摩利支天の妻」を娶れ、と云うか。
武家の女(むすめ)ゆえ覚悟はできている、今は生まれて初めて慕った「だんなさま」と2人で過ごしたい、と心をさらけ出した一途なリツ(前田亜季)に惹かれ、虎綱が即断即決でOK!
(勘助)「香坂殿。かたじけない」
と頭を下げる勘助に、
(虎綱)「人を慈しむ心。それこそが山本さまの奥義と心得てございます」
この言葉に勘助の心のドラマが集約され、帰結しました。プチ最終回と云おうか。
いろいろあったけれども、すべてが肯定されました。不思議な表情を浮かべた勘助。印象的です。
それから、日本人に対しても「宿題」を突きつけられたように思います。
あなたは有形無形を問わず、後世に残したいと願う遺産(Legacy)を育んでいますか。
血縁にかかわらず、遺産を受け継いでほしいと願う誰かを知り、育んでいますか。
強烈なボディブローだな、これは。
遺すべき人と物。それがあれば思い残すことはありません。人は板垣信方(千葉真一)のように死ねる。死後も生きていける。
このような大河ドラマを観ることができて幸せです。
(勘助)「香坂弾正。わしのすべてをそなたに託す。死に急いではならぬぞ」
第47回『決戦前夜』。決着しなければならないことを決着してくれてありがとう。これで心置きなく、いざ、川中島へ!
大河ドラマもいよいよクライマックスですねー!
ここんとこ毎回の見せ場に力み過ぎて日曜20:45は肩がコリコリです;
..(+_+)イテテ
ラストに向かって心が通じ合い結集していくのは、撮影現場の雰囲気そのものでもあるのでしょうね。
演技のワクを超えたメッセージが伝わってきます。
最終回を見たらフヌケになりそうでヤバイ予感です。。
が、聞けば再来年の大河であの卯松ぼうやが大活躍とか。(チトちがうか;)
その辺りへの夢も描きつつ、川中島に臨みたいです☆
なぎらさまのシメ、楽しみにしております!
ヾ(キ´▽`メ)ノ
こんばんは。お越しくださり、ありがとうございます。この大河ドラマを45分間、ぐわわっと前のめりで観るのは肩がコリコリですよ・・・ヾ(^^;)ゞ。
山本勘助の慈愛という「宿題」について書きましたが、上杉政虎(長尾景虎)も同じ「宿題」を片づけたのだなあ、と感じました。第32回『越後潜入』で、
「人を慈しんだこともなく、いかにして領民を治めましょうや」
という勘助の問いを全否定し、先週は家臣を鞭でシバき倒した政虎が、
「われ死すとも、わが心がこの地を守ってゆけるよう、われは(人として、人である)己を超えねばなりますまい」
と見事にアップグレードされた答えを出したのでシビれました。これこそ情理を兼ねた真の「軍神」、川中島では存分に毘沙門天ぶりを発揮してほしいです。そして、卯松ぼうやにその心が遺産として受け継がれますように。
そうです、再来年は『天地人』。踏破するぞ、と今から息巻いております。きっと越後まみれになると思います。
おっと、その前に決戦ですね。「出演者ビデオメッセージ」からも役者、現場の心意気が伝わります。
天と地の交わるところに果たして人はなにを視るのか。
2009年へ夢を馳せつつ、フヌケ覚悟で見届けましょう!