
いやあ~、まさか主役の3人が幽霊やとは思いもしませんでしたねえ、
似たような趣向の映画は過去にもあったけど、あの時は主人公がそのことに気づいてないという設定で、
そんなんわかるやろどんだけ鈍いねんアホかって呆れてしまいましたけど、
本作では3人はちゃんとそのことを承知してて、しかもそのことは早い段階で観客に明かされて、
そうか、そういうことやったんか、
東京のバスの運転手は不親切なわけやないんや、
広瀬すずが飲み会で会費集める段になるとトイレに隠れるのはドケチやからやないんやなどと、
それまで腑に落ちなかった点が一気に解消されて、それとともに、
彼女たちの心情に深く深く想いを馳せさせられることになって、
もう胸が締め付けられっぱなしでしたねえ。
だって「片思い世界」って、片思いしかできない世界ってことなんですよ。
もうたまらないやないですか。
こんなタイトルで、カワイイ3人が主演で、
お気楽な気持ちで見てみようかなどと思ったところがこんな展開やなんて、
もうホンマに思いがけないことでしたわ。
とはいうものの、本作を気楽に見てみようと思えるようになったのもつい最近の話でして、
まず坂本裕二、
言わずと知れたヒットメーカーの脚本家さんですけども、
トレンディドラマで有名になったもんやから、ああいうのを軽蔑してた学生時代の僕にとっては、
彼のことも軽蔑の対象になってしまって、まあそれは偏見やってのは分かってるんですけども、
ところがそれに加えて、ある雑誌のインタビューでものすごく恥ずかしいことを語ってたんですよ、
もう恥ずかしいというかみっともないというか居たたまれないというか、
あまりにもアレすぎて恐らく本人にとっても一生の不覚というか、
消し去りたい過去の筆頭なんやないかと思うんでここでその内容を記すことはやめておきますけども、
とにかくそんなこんなで彼に対しては長らく悪い印象を抱いてたんですけども、
しかし近年はいい仕事を連発してるんで、こりゃ見直さないわけにはいかんなあなどと、
ちょっと上から目線で思ったりなんかしてるんですけども、それは主演の3人にも言えて、
まず広瀬すず、なんで人気があるのか全然わからんかったんですよ。
ルックスでは姉のアリスちゃんのほうがずっとええやん、それに比べてこんなもっさりした妹が……って、
ずっとそう思ってたんですけどしかし「キリエのうた」を見て初めて、
ああ、こんなええ役者さんやったんやって気づいた次第でして、
それから杉咲花も、お前その顔でよう女優なろとか思えたなあって、
第三者委員会から厳しいお言葉を頂戴しそうなこと思ったりしてましたけど、
「市子」を見てうわあすごいなあって圧倒されまして、
それから「海に眠るダイヤモンド」もよかったし、
そうなるとあのへちゃむくれなところが愛おしく思えてきさえしたりなんかして、
あと清原果耶はとくに悪い印象はなかったけど、
まあそんなこんなでこれが2年前なら果たして映画館に足を運んだかどうかわからないような、
そんな「片思い世界」は幽霊の設定と言いますか、
彼女らの側からは現実の世界に関わることは出来ても、
現実のほうは何ら影響を受けていないという、その塩梅が絶妙で、
広瀬すずがオフィスで大量の書類仕事を片付けたところで現実には書類の山はまったく手付かずやったりする、
しかしそれでも毎朝、普通に目覚まし時計で起きて、
歯を磨いて食事して通勤通学してと日常生活をおくる彼女たちの姿が、
まるでそうすることによって精神の平衡を保とうとしてるかのようでこれまた胸が締め付けられそうになりますわ。
でもそうなると、広瀬すずがスーパーで買い物かごに商品を入れてる場面はあったけど、
支払いはどないしてんねんなってな疑問は湧いてきたりはするんですけどね。
まあそのまま外に持ち出したところで見つかって、若い男性店員からべらぼうに怒られることもないでしょうけど、
そういう設定のあやふやさはこれはもう仕方ないってなもんで、
ちょうど35年ほど前、やはり幽霊の出てくる映画で世界中の観客の涙を誘ったのがあったけど、
あのとき、物には触れへんのに床には立てるんやってツッコんで周りからえらい顰蹙を買ったもんですけど、
そんなこといちいち言うてたらキリがないわけでして、
それは同じ坂本さん脚本の近作「ファーストキス 1ST KISS」にも言えるわけで、
タイムトラベル物やのにその辺の描写にあやふやなところが多くて、
まあそこに主眼は置いてないんやろから言うだけ野暮ってなもんなんでしょうけど、
でも最後であのカレンダーがめくられてなかったのだけはちょっと解せんのですけども、
いや、あの作品でいちばん気になったのはあのゲームですよ、
三次元四目並べ。
懐かしいわあ、子供のころ家にあってよく遊んだもんですわ。
それが最初のうちはただ画面に映ってるだけやったのが、
最後のほうでは象徴的な役割を果たしててなんか嬉しかったですねえ……って、
それで「片思い世界」に戻しまして、
しかしここでもニュートリノがどーたらこーたらという話が出てきて、
でもその設定がやはりあやふやでようわからん、
そしてわからんだけならまだいいけど、これが物語を展開させる要素としてあまりにも雑すぎる、
FMラジオのあれはいったいなんやったんや、
ひょっとしてあの3人を灯台の上に立たせて夜明けを見つめさせる、
その絵が撮りたかっただけやったんかいなって思えたりなんかして……いや、
まああれも加害者と結びつけるための役割はあったのかもしれませんけどね。
そう、あの3人が幽霊となった原因であるところの、
児童合唱クラブを襲った殺傷事件の加害者である若い男、
刑期を終えて出所し倉庫での作業の職に就いているこの男なんですがしかし、
彼の描写についてが本作の最大の問題点であると思えるんですよね。
杉咲花の母親から刃物を向けられて逆上し、
その刃物を奪って彼女を追いかけまわすその姿はもうおぞましいのひと言に尽きるけど、
果たしてそれでいいんでしょうか。
劇中、深夜テレビに出てくる幽霊に恐怖心を抱きつつ、
リアリティがないとか言ってのける、リアルな幽霊である彼女ら、
でも、あの幽霊もひとりだったからああなったのかも知れないよ、
もしわたしたちもひとりだったっらああなったのかも……などと思いを巡らせていたやないですか。
それをあの加害者の男に対しても向けられなかったんでしょうか。
しかもあの男の描写はどう見ても発達障害があるようで、
それを、車にはねられてもまだ追ってくるゾンビのように、
それこそ深夜テレビの幽霊と同じように描くだけでいいんでしょうか。
彼に対しても何かしらの思いを向けるべきではなかったでしょうか。
それはリアリティのないことかもしれないけど、
そういうところを目指すのが物語の役割ではないでしょうか……などと、
ちょっと手厳しいことを言うてますけど、これも本作のことが好きだから、
いい映画だと思うからこそかえって言いたくなるもんで、ちょうど、
その相手のことが好きだからこそトイレのスリッパをはいたまま廊下に出てきたら注意せずにはいられないようなもんで……って、
それは違うかな、まあとにかく、
終盤はもうとにかく名場面の連続で、
まずは合唱団の練習室、
広瀬すずが幼い頃……そう、
あの事件の当日に書き終えた音楽劇の台本、
それを彼が手にし、読み上げ、
そしてかき抱く……ああもう、
なんてたまらない、まさにべらぼうに泣けるこの場面に続いて、
とどめにコンクール……ところで、
本作の設定を考えたうえでもっとも琴線に触れるのはどこかというと、
突如として凄惨な事件に巻き込まれ幽霊となってしまった3人、
寒さと飢えと、孤独と不安に包み込まれたまだ幼い3人が身を寄せ合うその姿、
もしこれを普通にドラマとして描かれたならあまりに辛すぎて正視できなかったろうけど、
それがコーラスの澄み切った歌声に乗せてカットバックで描かれて、
やがて空き家にたどり着いた彼女らががここを住処と定めて、
心から安らいで子供らしい振る舞いを見せる、
この見せ方がもう本当に抑制が効いていてしかも最大級に心を揺さぶって来て、
そして現在の3人を含む新旧のかささぎ児童合唱クラブのメンバーによる「声は風」、
その晴れやかな歌声はまさにかささぎのように大空に高く高く舞いあがり、
笑顔の戻った彼のピアノもべらぼうに美しく……そしてエピローグ。
次の住処についてあれこれ意見を出す3人、
新居のことは三井のすずちゃんに任せたらええやんなどというくだらないツッコミが浮かびつつも、
とても温かい気持ちになれる「片思い世界」なのでした。
似たような趣向の映画は過去にもあったけど、あの時は主人公がそのことに気づいてないという設定で、
そんなんわかるやろどんだけ鈍いねんアホかって呆れてしまいましたけど、
本作では3人はちゃんとそのことを承知してて、しかもそのことは早い段階で観客に明かされて、
そうか、そういうことやったんか、
東京のバスの運転手は不親切なわけやないんや、
広瀬すずが飲み会で会費集める段になるとトイレに隠れるのはドケチやからやないんやなどと、
それまで腑に落ちなかった点が一気に解消されて、それとともに、
彼女たちの心情に深く深く想いを馳せさせられることになって、
もう胸が締め付けられっぱなしでしたねえ。
だって「片思い世界」って、片思いしかできない世界ってことなんですよ。
もうたまらないやないですか。
こんなタイトルで、カワイイ3人が主演で、
お気楽な気持ちで見てみようかなどと思ったところがこんな展開やなんて、
もうホンマに思いがけないことでしたわ。
とはいうものの、本作を気楽に見てみようと思えるようになったのもつい最近の話でして、
まず坂本裕二、
言わずと知れたヒットメーカーの脚本家さんですけども、
トレンディドラマで有名になったもんやから、ああいうのを軽蔑してた学生時代の僕にとっては、
彼のことも軽蔑の対象になってしまって、まあそれは偏見やってのは分かってるんですけども、
ところがそれに加えて、ある雑誌のインタビューでものすごく恥ずかしいことを語ってたんですよ、
もう恥ずかしいというかみっともないというか居たたまれないというか、
あまりにもアレすぎて恐らく本人にとっても一生の不覚というか、
消し去りたい過去の筆頭なんやないかと思うんでここでその内容を記すことはやめておきますけども、
とにかくそんなこんなで彼に対しては長らく悪い印象を抱いてたんですけども、
しかし近年はいい仕事を連発してるんで、こりゃ見直さないわけにはいかんなあなどと、
ちょっと上から目線で思ったりなんかしてるんですけども、それは主演の3人にも言えて、
まず広瀬すず、なんで人気があるのか全然わからんかったんですよ。
ルックスでは姉のアリスちゃんのほうがずっとええやん、それに比べてこんなもっさりした妹が……って、
ずっとそう思ってたんですけどしかし「キリエのうた」を見て初めて、
ああ、こんなええ役者さんやったんやって気づいた次第でして、
それから杉咲花も、お前その顔でよう女優なろとか思えたなあって、
第三者委員会から厳しいお言葉を頂戴しそうなこと思ったりしてましたけど、
「市子」を見てうわあすごいなあって圧倒されまして、
それから「海に眠るダイヤモンド」もよかったし、
そうなるとあのへちゃむくれなところが愛おしく思えてきさえしたりなんかして、
あと清原果耶はとくに悪い印象はなかったけど、
まあそんなこんなでこれが2年前なら果たして映画館に足を運んだかどうかわからないような、
そんな「片思い世界」は幽霊の設定と言いますか、
彼女らの側からは現実の世界に関わることは出来ても、
現実のほうは何ら影響を受けていないという、その塩梅が絶妙で、
広瀬すずがオフィスで大量の書類仕事を片付けたところで現実には書類の山はまったく手付かずやったりする、
しかしそれでも毎朝、普通に目覚まし時計で起きて、
歯を磨いて食事して通勤通学してと日常生活をおくる彼女たちの姿が、
まるでそうすることによって精神の平衡を保とうとしてるかのようでこれまた胸が締め付けられそうになりますわ。
でもそうなると、広瀬すずがスーパーで買い物かごに商品を入れてる場面はあったけど、
支払いはどないしてんねんなってな疑問は湧いてきたりはするんですけどね。
まあそのまま外に持ち出したところで見つかって、若い男性店員からべらぼうに怒られることもないでしょうけど、
そういう設定のあやふやさはこれはもう仕方ないってなもんで、
ちょうど35年ほど前、やはり幽霊の出てくる映画で世界中の観客の涙を誘ったのがあったけど、
あのとき、物には触れへんのに床には立てるんやってツッコんで周りからえらい顰蹙を買ったもんですけど、
そんなこといちいち言うてたらキリがないわけでして、
それは同じ坂本さん脚本の近作「ファーストキス 1ST KISS」にも言えるわけで、
タイムトラベル物やのにその辺の描写にあやふやなところが多くて、
まあそこに主眼は置いてないんやろから言うだけ野暮ってなもんなんでしょうけど、
でも最後であのカレンダーがめくられてなかったのだけはちょっと解せんのですけども、
いや、あの作品でいちばん気になったのはあのゲームですよ、
三次元四目並べ。
懐かしいわあ、子供のころ家にあってよく遊んだもんですわ。
それが最初のうちはただ画面に映ってるだけやったのが、
最後のほうでは象徴的な役割を果たしててなんか嬉しかったですねえ……って、
それで「片思い世界」に戻しまして、
しかしここでもニュートリノがどーたらこーたらという話が出てきて、
でもその設定がやはりあやふやでようわからん、
そしてわからんだけならまだいいけど、これが物語を展開させる要素としてあまりにも雑すぎる、
FMラジオのあれはいったいなんやったんや、
ひょっとしてあの3人を灯台の上に立たせて夜明けを見つめさせる、
その絵が撮りたかっただけやったんかいなって思えたりなんかして……いや、
まああれも加害者と結びつけるための役割はあったのかもしれませんけどね。
そう、あの3人が幽霊となった原因であるところの、
児童合唱クラブを襲った殺傷事件の加害者である若い男、
刑期を終えて出所し倉庫での作業の職に就いているこの男なんですがしかし、
彼の描写についてが本作の最大の問題点であると思えるんですよね。
杉咲花の母親から刃物を向けられて逆上し、
その刃物を奪って彼女を追いかけまわすその姿はもうおぞましいのひと言に尽きるけど、
果たしてそれでいいんでしょうか。
劇中、深夜テレビに出てくる幽霊に恐怖心を抱きつつ、
リアリティがないとか言ってのける、リアルな幽霊である彼女ら、
でも、あの幽霊もひとりだったからああなったのかも知れないよ、
もしわたしたちもひとりだったっらああなったのかも……などと思いを巡らせていたやないですか。
それをあの加害者の男に対しても向けられなかったんでしょうか。
しかもあの男の描写はどう見ても発達障害があるようで、
それを、車にはねられてもまだ追ってくるゾンビのように、
それこそ深夜テレビの幽霊と同じように描くだけでいいんでしょうか。
彼に対しても何かしらの思いを向けるべきではなかったでしょうか。
それはリアリティのないことかもしれないけど、
そういうところを目指すのが物語の役割ではないでしょうか……などと、
ちょっと手厳しいことを言うてますけど、これも本作のことが好きだから、
いい映画だと思うからこそかえって言いたくなるもんで、ちょうど、
その相手のことが好きだからこそトイレのスリッパをはいたまま廊下に出てきたら注意せずにはいられないようなもんで……って、
それは違うかな、まあとにかく、
終盤はもうとにかく名場面の連続で、
まずは合唱団の練習室、
広瀬すずが幼い頃……そう、
あの事件の当日に書き終えた音楽劇の台本、
それを彼が手にし、読み上げ、
そしてかき抱く……ああもう、
なんてたまらない、まさにべらぼうに泣けるこの場面に続いて、
とどめにコンクール……ところで、
本作の設定を考えたうえでもっとも琴線に触れるのはどこかというと、
突如として凄惨な事件に巻き込まれ幽霊となってしまった3人、
寒さと飢えと、孤独と不安に包み込まれたまだ幼い3人が身を寄せ合うその姿、
もしこれを普通にドラマとして描かれたならあまりに辛すぎて正視できなかったろうけど、
それがコーラスの澄み切った歌声に乗せてカットバックで描かれて、
やがて空き家にたどり着いた彼女らががここを住処と定めて、
心から安らいで子供らしい振る舞いを見せる、
この見せ方がもう本当に抑制が効いていてしかも最大級に心を揺さぶって来て、
そして現在の3人を含む新旧のかささぎ児童合唱クラブのメンバーによる「声は風」、
その晴れやかな歌声はまさにかささぎのように大空に高く高く舞いあがり、
笑顔の戻った彼のピアノもべらぼうに美しく……そしてエピローグ。
次の住処についてあれこれ意見を出す3人、
新居のことは三井のすずちゃんに任せたらええやんなどというくだらないツッコミが浮かびつつも、
とても温かい気持ちになれる「片思い世界」なのでした。

ランダムにプレゼントされるの、2回とも三井のすずちゃんやったわ。
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