僕はミュージカル映画が大好きでして……といってもこのブログではそんなことほとんど書いてないですけど、
だってこの10年ほどの間ほとんど制作されてないですもんねえ。
まあまったくないわけではないですけど、
フレッド・アステアやジーン・ケリーが大好きというような僕の好みに合うものは皆無と言ってもよくって、
そんななかでも「シカゴ」は好きですけど、あれも舞台は古き良き禁酒法時代、
もう現代を舞台としたミュージカル映画の傑作なんて望むべくもないやろなあって思ってたところに、
ひょっこりと現れたのが「ラ・ラ・ランド」。
なんかふざけたタイトルやなあと思いながらも評判がとてもいいというんで見てみたところ、
まず冒頭から大渋滞の高速道路でのナンバー、
大勢のドライバーたちが屋根に上がって歌い踊るその光景は壮観やけど、
でも僕がミュージカルに求めるのはこういうのよりも、才能のある個人の芸なんですよねえ。
しかしアステアやケリーの後はどうも、それに替わる才能の持ち主が不在なのを群舞でごまかしがちに思えたりして、
まあこれもそんな1本なんやろなあと思ってると、
そんな渋滞のなかで出会うのが本作の主人公とヒロイン。
とは言っても、前が進んでるのに動き出さない車にイライラした主人公がクラクションを鳴らし、
それにヒロインが中指を突き立てて応えるという、ムードもへったくれもないやり取りで、
その後、偶然の再会を果たすもちょうど仕事をクビになったばかりの主人公は、
ヒロインに目もくれずにその場を後にし……と、
この主人公、ライアン・ゴズリング演ずるセバスチャンは古いジャズが好きで、
将来は自分でピアノを弾く店を持つのが夢ではあるけど、
現在は雇われて店長に指定された当たり障りのない曲を演奏する身、
しかし我慢がならずについついアレンジを加えたりしてしまって……と、
この辺のキャラクター付け、それから音楽の好みなんかが好感が持てるんですよねえ。
一方のヒロイン、エマ・ストーン演ずるミアは女優志望で、
ハリウッドのワーナーの撮影所内のカフェで働きながらオーディションを受け続けるけど、
もひとつパッとせず……という、こちらはまあありがちな設定ですけど、
でもそのありがちさが逆に古風に感じられてよかったりする面もあったりして、
でも顔立ちはバッチリ現代的なのとのギャップもまたいいような、ねえ。
いや、往年の大女優でも目の大きい人はいっぱいいるけど、
このエマ・ストーンの目のデカさはゴージャスさよりもクドさが感じられたりして、
日本でいうとNHKの夜7時のニュースに出てる気象予報士の福岡良子さんに匹敵するクドさ、
でもってゴズリングの方もいい顔はしてるけど、ヒゲの生やし方にはやはり気品が微塵も窺えず、
そんな2人のドラマにはアステア=ロジャースのロマンティックさは再現できないやろなあと思ってたら、
やがて更なる偶然の再会を果たした2人は夢を持つもの同士として心が通い合い、
演技の参考になるとかなんとか言って「理由なき反抗」を勧めるセバスチャン、
ちょうどどこどこの劇場でやってるよと見に行く約束を交わし……って、
いまの若い奴らならすぐにネットに上がってるよとか言ってタダで見ようとするやろうところを、
わざわざ映画館に行こうと言うんですよ、いいですねえこの古風さ。
で、なんやかんやあってのグリフィス天文台のシーン、
もうこの頃にはすっかり2人に共感してしまってるところへ来てあのロマンティックな……ああ、
目頭を熱くせずにはいられませんでしたわ、ホンマに。
同天文台が登場する映画として「理由なき反抗」「ロケッティア」と並ぶ名作の誕生と言っても過言ではないでしょう、
異論は一切受け付けません。
さて、そうやって順調に行くかと思えた2人の仲はしかし、
夢を叶えることの苦しさをも分かち合わなければならず、
やがてオーディションに見切りをつけたミアは小さな劇場で一人芝居を公演、
しかし惨憺たる有り様で、しかもセバスチャンは仕事で見に来られず、
その後、口論となったのもその彼の仕事のことが原因で、
あるバンドに加わることになるセバスチャン、それは彼の意に沿う音楽ではなかったけど、
好条件もあって引き受ける彼の姿が、ミアには裏切られたように思えたんでしょうか。
そして彼の元を去るミア、
しかしその後、奇跡が起こり……というお話が、
たっぷりの音楽とダンスに乗せて描かれる素敵な映画なんですけども、
でもその真骨頂は終盤にあるのでした。
まるで「巴里のアメリカ人」かのような、たらればのシークエンス……
そのなんとやるせないことか、なんと切ないことか、なんと虚しいことか。
夢を叶えたその代償として、これほどまでの苦さを味合わなければならないものなのか。
あまりにも居たたまれない、辛くてたまらないこの場面。
しかし……見つめ合い、笑みを交わすミアとセバスチャン。
そこにはやはり夢を追い求めた者同士の共感が満ち溢れていて、
それに納得したのか、最後に小さく頷くセバスチャン……
苦い、あまりにも苦い、
苦くて苦くてたまらなくって、でも身悶えしたくなるほど素敵な「ラ・ラ・ランド」なのでした。
だってこの10年ほどの間ほとんど制作されてないですもんねえ。
まあまったくないわけではないですけど、
フレッド・アステアやジーン・ケリーが大好きというような僕の好みに合うものは皆無と言ってもよくって、
そんななかでも「シカゴ」は好きですけど、あれも舞台は古き良き禁酒法時代、
もう現代を舞台としたミュージカル映画の傑作なんて望むべくもないやろなあって思ってたところに、
ひょっこりと現れたのが「ラ・ラ・ランド」。
なんかふざけたタイトルやなあと思いながらも評判がとてもいいというんで見てみたところ、
まず冒頭から大渋滞の高速道路でのナンバー、
大勢のドライバーたちが屋根に上がって歌い踊るその光景は壮観やけど、
でも僕がミュージカルに求めるのはこういうのよりも、才能のある個人の芸なんですよねえ。
しかしアステアやケリーの後はどうも、それに替わる才能の持ち主が不在なのを群舞でごまかしがちに思えたりして、
まあこれもそんな1本なんやろなあと思ってると、
そんな渋滞のなかで出会うのが本作の主人公とヒロイン。
とは言っても、前が進んでるのに動き出さない車にイライラした主人公がクラクションを鳴らし、
それにヒロインが中指を突き立てて応えるという、ムードもへったくれもないやり取りで、
その後、偶然の再会を果たすもちょうど仕事をクビになったばかりの主人公は、
ヒロインに目もくれずにその場を後にし……と、
この主人公、ライアン・ゴズリング演ずるセバスチャンは古いジャズが好きで、
将来は自分でピアノを弾く店を持つのが夢ではあるけど、
現在は雇われて店長に指定された当たり障りのない曲を演奏する身、
しかし我慢がならずについついアレンジを加えたりしてしまって……と、
この辺のキャラクター付け、それから音楽の好みなんかが好感が持てるんですよねえ。
一方のヒロイン、エマ・ストーン演ずるミアは女優志望で、
ハリウッドのワーナーの撮影所内のカフェで働きながらオーディションを受け続けるけど、
もひとつパッとせず……という、こちらはまあありがちな設定ですけど、
でもそのありがちさが逆に古風に感じられてよかったりする面もあったりして、
でも顔立ちはバッチリ現代的なのとのギャップもまたいいような、ねえ。
いや、往年の大女優でも目の大きい人はいっぱいいるけど、
このエマ・ストーンの目のデカさはゴージャスさよりもクドさが感じられたりして、
日本でいうとNHKの夜7時のニュースに出てる気象予報士の福岡良子さんに匹敵するクドさ、
でもってゴズリングの方もいい顔はしてるけど、ヒゲの生やし方にはやはり気品が微塵も窺えず、
そんな2人のドラマにはアステア=ロジャースのロマンティックさは再現できないやろなあと思ってたら、
やがて更なる偶然の再会を果たした2人は夢を持つもの同士として心が通い合い、
演技の参考になるとかなんとか言って「理由なき反抗」を勧めるセバスチャン、
ちょうどどこどこの劇場でやってるよと見に行く約束を交わし……って、
いまの若い奴らならすぐにネットに上がってるよとか言ってタダで見ようとするやろうところを、
わざわざ映画館に行こうと言うんですよ、いいですねえこの古風さ。
で、なんやかんやあってのグリフィス天文台のシーン、
もうこの頃にはすっかり2人に共感してしまってるところへ来てあのロマンティックな……ああ、
目頭を熱くせずにはいられませんでしたわ、ホンマに。
同天文台が登場する映画として「理由なき反抗」「ロケッティア」と並ぶ名作の誕生と言っても過言ではないでしょう、
異論は一切受け付けません。
さて、そうやって順調に行くかと思えた2人の仲はしかし、
夢を叶えることの苦しさをも分かち合わなければならず、
やがてオーディションに見切りをつけたミアは小さな劇場で一人芝居を公演、
しかし惨憺たる有り様で、しかもセバスチャンは仕事で見に来られず、
その後、口論となったのもその彼の仕事のことが原因で、
あるバンドに加わることになるセバスチャン、それは彼の意に沿う音楽ではなかったけど、
好条件もあって引き受ける彼の姿が、ミアには裏切られたように思えたんでしょうか。
そして彼の元を去るミア、
しかしその後、奇跡が起こり……というお話が、
たっぷりの音楽とダンスに乗せて描かれる素敵な映画なんですけども、
でもその真骨頂は終盤にあるのでした。
まるで「巴里のアメリカ人」かのような、たらればのシークエンス……
そのなんとやるせないことか、なんと切ないことか、なんと虚しいことか。
夢を叶えたその代償として、これほどまでの苦さを味合わなければならないものなのか。
あまりにも居たたまれない、辛くてたまらないこの場面。
しかし……見つめ合い、笑みを交わすミアとセバスチャン。
そこにはやはり夢を追い求めた者同士の共感が満ち溢れていて、
それに納得したのか、最後に小さく頷くセバスチャン……
苦い、あまりにも苦い、
苦くて苦くてたまらなくって、でも身悶えしたくなるほど素敵な「ラ・ラ・ランド」なのでした。