私は京都生まれですが、東京暮らしが長いので口調は共通語。「京都人」だと自称すると意外だと言われることが多いです。共通語とは何ぞや、と思いつつ手にとった本が今回の一冊。歴史書籍レビュー第百十九回です。
杉本つとむ『東京語の歴史』(講談社)
当レビュー第十五回で紹介した「憑神」は幕末の江戸を舞台にした小説でした。作者の浅田次郎は東京の下町出身ということもあり、いわゆる「江戸弁」にこだわりのある作家。たとえばエッセイ「方言について」(『勇気凛凛ルリの色 四十肩と恋愛』所収)をひもとけば、彼の「東京方言」についてのこだわりが見てとれます。
それによれば、各地方でそれぞれ多彩な方言が継承されている中、東京方言はなまじ共通語という形に改造されてしまったために失われていったといいます。ではその東京方言とはどんなものだったのか。
この本では、古代から近現代までに至る様々な文献をひもときながら、東京(と現在呼ばれている地域)とその周辺で、それぞれの時代、それぞれの階層の言語世界はどのようなものだったかを分析していきます。
言葉とは時代によって移り変わるもの。逆に言えば、言葉の変化は時代を映す鏡でもあります。東の果ての田舎だった昔から、鎌倉武士の隆盛を経て、幕府の置かれる街となり、首都としての現在に至るまでの、東京という場所の変遷が言葉の向こうに見えてきます。
ただ、あまり読みやすい本ではありません。引用文に傍線を引いて、その部分に解説を加えるという形式がよくとられているのですが、文庫本の小さなページにたくさんの文がまとめて引用されるため、解説を読むたびに前のページへ戻るのを繰り返すことになります。紙幅の問題と作者のこだわりによって引用文は現代語訳や現代仮名遣い表記がされないので、理解がしづらいところもあります。
それを乗り越えて読み込めば面白い記述にもいろいろ巡り合えるのですが、文庫らしいお手軽さはないという印象でした。
生きております。
杉本つとむ『東京語の歴史』(講談社)
当レビュー第十五回で紹介した「憑神」は幕末の江戸を舞台にした小説でした。作者の浅田次郎は東京の下町出身ということもあり、いわゆる「江戸弁」にこだわりのある作家。たとえばエッセイ「方言について」(『勇気凛凛ルリの色 四十肩と恋愛』所収)をひもとけば、彼の「東京方言」についてのこだわりが見てとれます。
それによれば、各地方でそれぞれ多彩な方言が継承されている中、東京方言はなまじ共通語という形に改造されてしまったために失われていったといいます。ではその東京方言とはどんなものだったのか。
この本では、古代から近現代までに至る様々な文献をひもときながら、東京(と現在呼ばれている地域)とその周辺で、それぞれの時代、それぞれの階層の言語世界はどのようなものだったかを分析していきます。
言葉とは時代によって移り変わるもの。逆に言えば、言葉の変化は時代を映す鏡でもあります。東の果ての田舎だった昔から、鎌倉武士の隆盛を経て、幕府の置かれる街となり、首都としての現在に至るまでの、東京という場所の変遷が言葉の向こうに見えてきます。
ただ、あまり読みやすい本ではありません。引用文に傍線を引いて、その部分に解説を加えるという形式がよくとられているのですが、文庫本の小さなページにたくさんの文がまとめて引用されるため、解説を読むたびに前のページへ戻るのを繰り返すことになります。紙幅の問題と作者のこだわりによって引用文は現代語訳や現代仮名遣い表記がされないので、理解がしづらいところもあります。
それを乗り越えて読み込めば面白い記述にもいろいろ巡り合えるのですが、文庫らしいお手軽さはないという印象でした。
生きております。
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