あめ~ば気まぐれ狂和国(Caprice Republicrazy of Amoeba)~Livin'LaVidaLoca

勤め人目夜勤科の生物・あめ~ばの目に見え心に思う事を微妙なやる気と常敬混交文で綴る雑記。
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どこのペテン師のセリフだか知らないけど

2015-03-03 20:41:00 | 日替わりchris亭・仮設店舗
生来のハッピーエンド好きの影響か、比較的重い話題の本は少ないかなと思っている歴史書籍レビューですが、第百十六回は重めの話題を選んでみました。


渡邊大門『人身売買・拉致・奴隷の日本史』(柏書房)

開拓時代の北海道。かつて貧しさのあまり売られた娘が乳飲み子を抱えて生まれ故郷の村に逃げ戻ってきたが、人買いの報復を恐れた村人は誰も娘を助けようとはしなかった。赤ん坊は凍えて死んでしまい、復讐に燃えた娘は「雪夜叉」となった――
少年時代に熱中した漫画の一つ『金田一少年の事件簿』の初期エピソード「雪夜叉伝説殺人事件」に登場する村の言い伝えです。もちろんこの言い伝え自体架空のものではありますが、私にとって「人が売り買いされる」話に触れたのはこの漫画が最初だったかと思います。
今でこそ「人身売買」や「奴隷」なんて言葉は日本とは縁遠いものと認識されていますが、かつての日本ではそれが横行していました。人がモノとして取り扱われた事例を、古代から追った一冊です。

昔の日本にはと呼ばれる奴隷階級と言うべき人々がいました。「」という言葉は中国から律令、すなわち法制度と一緒に輸入したもので、奴隷のような人々は少なくとも卑弥呼の時代から存在したようです。は主人の「所有物」として扱われる一方、に子供が生まれた場合はどうするか、といった規定が事細かに決まっていました。
鎌倉時代にはの売買を仲介する、いわば奴隷商人が登場。『山椒大夫』の世界が展開されていきます。

戦国時代になると、出兵した先で金や食糧を略奪する「乱取り」が常態化しますが、乱取りされるものの中には物資だけでなく人も含まれていたようです。また、ポルトガル人の来航を機に、奴隷として海外へ売り飛ばされる日本人も現れました(ただ、前者は『戦国合戦の舞台裏』で詳しく述べられていますし、後者についても『世界は球の如し』で取り上げられていたので、個人的にはあまり目新しい内容ではありませんでしたが)。

全体的にコンパクトにまとまった本だとは思いますが、トピックが「朝鮮出兵の際に日本に連れてこられた朝鮮人、朝鮮で捕らえられた日本人」までで、江戸時代以降に関する記述は売買春の文脈の中で補足的になされるにすぎません(明治時代の、それこそ『金田一少年』に出てきたような貧苦の挙句の身売りや、あるいは黒岩涙香が指摘した「蓄妾」のような例についての記述はなし)。
あとがきの書き出しが「戦国時代といえば・・・」であること、また作者が『逃げる公家、媚びる公家』と同じであることも考えると、あくまで戦国時代を主軸にした本のつもりで書かれたものだったのかもしれません。その戦国時代についての内容が前述の通り知ったものが多かったので、私にとっては少々食い足りない一冊でした。

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