あめ~ば気まぐれ狂和国(Caprice Republicrazy of Amoeba)~Livin'LaVidaLoca

勤め人目夜勤科の生物・あめ~ばの目に見え心に思う事を微妙なやる気と常敬混交文で綴る雑記。
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メソポタミアの流れ弾

2015-02-17 20:27:15 | 日替わりchris亭・仮設店舗
かなり雑食であることは自覚しておりますが、当レビューは「歴史」をテーマとして本を読んでいます。歴史というのは基本的に当時の記録が残っていて初めて成立するもので、それ以前となると考古学の領域。原点にさかのぼるために文字史料のない時代に触れた本もいくつか紹介していますが(『馬の世界史』『』など)、特定の時代の歴史を扱う本としては、このあたりが古さの限度と言えそうです。歴史書籍レビュー、新年一発目の第百十四回はざっと五千年前、現在のイラクあたりへタイムスリップです。


小林登志子『五〇〇〇年前の日常 シュメル人たちの物語』(新潮社)

チグリス川とユーフラテス川にはさまれたメソポタミア、というのは世界史のスタート地点なのでおなじみかと思います。エジプト、インダス、黄河と並び「世界四大文明」の一つに数えられるメソポタミア文明。歴史上、その最初を飾るのが、楔形文字を発明し「後世に記録を残す」ことに初めて成功したシュメール人たちでした(本書では「シュメル」と表記されていますが、この表記揺れの理由については10ページに興味深い記述があります)。

シュメール人は植物の繊維から紙を作る技術を持たなかったので、文字は粘土板に刻み付けるという形で書き残されていました。文字が楔形なのも楔形にしようとしたわけではなく、粘土板に力を込めて彫りこむために自然と楔形になったもの。記録媒体が粘土板だったおかげで5000年の後も腐ることなく残っています。
これらの文字記録を中心に、シュメール人の生活、生き様に迫ろうというのがこの本のコンセプト。5000年前当時に書かれた文章はもちろんですが、シュメール人の後にメソポタミアを支配したアッカド人たちがシュメール人たちに伝わっていた物語をアッカド語で書き残しているので、これも考察の材料になります。

5000年前の全く違う場所に住んでいたとはいえ、同じ人間。例えば子供に長々とお小言をものす父親や、夫婦が離婚する場合の慰謝料といった、随分と馴染みのある光景は随所にあったようです。また、第五章の主役であるシュルギ王は、幼い頃読み漁った寺村輝夫の“王さまシリーズ”に出てくる王様のような憎めなさを感じました。

一方で、「5000年前の日常」といっても文字史料の形で残っているのは王族関連のものがほとんどで、庶民の暮らしについては推測に頼らざるをえません。約240ページの中に情報がぎっしり詰まっているので推測の種はいろいろあるわけですが・・・なかなか想像力の試される読書でした。


修論の追い込みのため、ご無沙汰しておりました。今週より再開いたします。

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