通りすがり

 

哭いている

躰を震わせ　声も出せないキリン

《ようやく　冬が終わった》

 

立ちすくんでいる老人　　

ここは何処なの？

もっともっと生きたかったマエストラ

 

人が流す　あらゆる涙は生ぬるさの源泉

今日も　昨日も　明日も　不測の出来事に怯え

死に満ちている豊饒の海底を見ない

 

光溢れる季節の為に　サンルームで若い芽を育てている寡婦は忙しい

ピーマン、ホウレンソウ、ナス、小松菜、トマト、インゲン・・・・・

寡黙な傍観者は見ているだけ　

 

空色の列車が駆け抜けた祝日

盲目の画家は巨大画布に海を探す

深いのは海では無かったという