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B→C 遠藤真理 チェロリサイタル

2011年12月06日 | pocknのコンサート感想録2011
12月6日(火)
東京オペラシティ リサイタルシリーズ B→C ビートゥーシー[137]
東京オペラシティリサイタルホール

【曲目】
1. バッハ/無伴奏チェロ組曲第2番 ニ短調 BWV1008
2.ドビュッシー/チェロとピアノのためのソナタ
3.デュティユー/ザッハーの名による3つのストローフ(1976)
4.藤倉 大/Dolphins(2010/2011、チェロ・バージョン)
5.ウェーベルン/チェロとピアノのための3つの小品 Op.11
6.ウェーベルン/チェロとピアノのための2つの小品
7.R.シュトラウス/チェロ・ソナタ ヘ長調 Op.6
【アンコール】
R.シュトラウス/万霊節
【出演】
Vc:遠藤真理/Pf:三浦友理枝/Vc:中木健二(4)


2007年の都民芸術フェスティバルの室内楽コンサートで遠藤真理のチェロを初めて聴き、その時演奏したブラームスのソナタにえらく感銘を受けて、このチェリストが記憶に残った。いつかリサイタルを聴きたいという思いが、あれから5年近くも経ってしまったがやっと実現した。

「B→C」のコンセプトに則って組まれたプログラムで気になるのはやっぱり"C"のコンテンポラリーの曲目。ここに遠藤はデュティユーと藤倉の作品を持ってきたが、ゲストのチェリスト中木健二が加わって共演した藤倉の「ドルフィンズ」が面白かった。音のない宇宙空間で、2台のチェロがお互いテレパシーでメッセージを取り交わすように即興的に反応し合う。二人の活き活きした演奏が新鮮な感覚を呼び覚ました。最後、重音のハーモニックスで宇宙空間に放たれた響きも印象に残った。

休憩を挟んで演奏されたウェーベルンは今から100年も前の曲ではあるが、これも"C"の部類に入る新しい響きを感じる。「現代音楽」は多様化すれど、進化していないということか。「3つの小品」は、つかの間の美しい光彩を見ている気分。演奏者には音の出る瞬間から消えるまでの、研ぎ澄まされた感性と技が求められるが、遠藤さんと三浦さんはこの曲を純度の高い結晶に仕上げた。続く「2つの小品」は後期ロマン派スタイルで書かれたウェーベルン初期の作品ということだが、シュトラウスの歌曲を思わせるロマンチックな歌と色彩が色濃く伝わって心を溶かした。

そして、それに続いて演奏されたシュトラウスのソナタは、このリサイタルでの白眉。シュトラウス独特の、広い音域の間を滑らかに行き来する息の長い旋律は、先端までたっぷり養分が行き渡り、すくすくと芽を伸ばし、花を咲かせる植物の成長の様子をハイスピードで見ているよう。華があり、色香があり、むせるほどの若さに溢れている。三浦さんのピアノは、そんな遠藤さんのチェロに養分を与え、光を差し向け、やさしくサポートしつつ、自らも輝いていた。とても雄弁で充実した二人の演奏は、ダンスの優雅なデュオを見ているようにも感じられ、聴きながら自然と「歌」に合わせて体が揺れてしまった。

アンコールで演奏された「万霊節」は、人の声のように温かく柔らかなチェロの音色に釘付けになった。亡くなったひとを想い「この胸に来ておくれ」と哀願する熱い情感に、心を奪われた。最初にやったバッハの無伴奏は、わりとさらりとした演奏だったが、例えば「サラバンド」なんかを、このシュトラウスへのアプローチで演奏すればもっと訴えてくると思うのだが、バッハをそんな風に演奏してはダメだろうか?

いずれにしても、このリサイタルを聴いて、遠藤真理というチェリストへの5年前の好印象が蘇っただけでなく、更なる魅力が増していることを確かめることができた。これから益々楽しみだ。

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