6月1日(日)仲道郁代(Pf)
Road to 2027 高雅な踊り
サントリーホール
【曲目】
1.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第24番嬰へ長調「テレーゼ」 Op.78
2.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第25番ト長調 Op.79
3.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第26番変ホ長調「告別」 Op.81a
4.リスト/メフィスト・ワルツ 第1番「村の居酒屋での踊り」S.514
5.ラヴェル/優雅で感傷的なワルツ

6.ショパン/ワルツ変イ長調「告別」 Op.69-1

7.ショパン/ワルツ嬰ハ短調 Op.64-2

8.ショパン/ポロネーズ 第6番変イ長調「英雄」 Op.53
【アンコール】
♪ ラヴェル/組曲「クープランの墓」~メヌエット
足かけ10年に渡る仲道郁代のリサイタルシリーズ”road to 2027”は8年目を迎えた。今回のテーマは「高雅な踊り」。古来より音楽と密接に関わる踊りに着目して、舞曲の他に、踊りを表現した楽章を含むソナタも取り上げ、踊りを音楽でどう表現するかを追求したリサイタル。
前半はベートーヴェンの中期のソナタが3つ。今回も仲道さんは詳しい楽曲分析を試みた曲目解説をパンフレットに書いて、ベートーヴェンにとっての踊りとは、当時の社会情勢とも連動した、自由や開放を求めて大勢で一緒に行う身体表現と定義した。けれど仲道さんの演奏は「踊り」が強調されるのではなく、思索的な営みがより感じられるむしろ端正な演奏で、感情を強く揺さぶるストレートな訴えは少なかった。
休憩後は舞曲の名を冠した曲が並んだ。こちらは、それぞれの曲に作曲家が刻印した多彩でかつ深いメッセージが伝わり、強く引きつけられた。鬼火が不気味に飛び回り、刹那的な感情がどっと押し寄せた「メフィストワルツ」に続いて演奏されたラヴェルの「優雅で感傷的なワルツ」では、特別な感銘を受けた。
仲道さんは、この作品のバレエ版のためにラヴェル自身が書いた台本を、1曲ごとに朗読してから演奏するスタイルを取った。この作品から、こんなに深くて複雑な人間模様が伝わって来たのは初めてだった。それは朗読の効果とともに、仲道さんがラヴェルの書いた台本から紐解いた、心の中を覗き込んだような作品からの深いメッセージを、演奏として体現したからであろう。台本の最後に出てくる一輪の「赤いバラ」を持って退場する演出も素敵だった。
次に演奏されたショパンの2つのワルツからは、ショパンの底知れない心の闇が垣間見られた。アンコールピースとしてもよく演奏される親しみやすい音楽だが、心の揺れや惑い、ヒタヒタと迫る不安の影が描かれていった。そんな影を纏いながらも、凛とした佇まいを保ってワルツのステップを踏もうとする姿に、リサイタルのテーマの「高雅な踊り」のイメージが重なった。これらのワルツがこれほど哀しく、気高く奏でられるのを聴いたことがあっただろうか。仲道さんの演奏でワルツ全曲を聴きたくなり、更に「踊り」をテーマに選んだこのリサイタルで、マズルカも聴いてみたかった。
プログラム最後の英雄ポロネーズも、勇ましい英雄の姿よりも、芭蕉の「夏草や・・・」の句を思い起こすような、過ぎ去ったものへの郷愁を伝えていた。この曲でいつも気になっていた最後の解決するはずの和音の違和感は、これが実はポロネーズのモチーフの冒頭の和音だったことに初めて気づいたことも収穫だった。
アンコールのラヴェルはスポットライトを浴びたような静謐な佇まいを帯びていた。次のroad to 2027リサイタルシリーズのタイトルは「ラヴェルの狂気」。楽しみだ。
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1.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第24番嬰へ長調「テレーゼ」 Op.78
2.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第25番ト長調 Op.79
3.ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第26番変ホ長調「告別」 Op.81a
4.リスト/メフィスト・ワルツ 第1番「村の居酒屋での踊り」S.514

5.ラヴェル/優雅で感傷的なワルツ


6.ショパン/ワルツ変イ長調「告別」 Op.69-1


7.ショパン/ワルツ嬰ハ短調 Op.64-2


8.ショパン/ポロネーズ 第6番変イ長調「英雄」 Op.53

【アンコール】
♪ ラヴェル/組曲「クープランの墓」~メヌエット

足かけ10年に渡る仲道郁代のリサイタルシリーズ”road to 2027”は8年目を迎えた。今回のテーマは「高雅な踊り」。古来より音楽と密接に関わる踊りに着目して、舞曲の他に、踊りを表現した楽章を含むソナタも取り上げ、踊りを音楽でどう表現するかを追求したリサイタル。
前半はベートーヴェンの中期のソナタが3つ。今回も仲道さんは詳しい楽曲分析を試みた曲目解説をパンフレットに書いて、ベートーヴェンにとっての踊りとは、当時の社会情勢とも連動した、自由や開放を求めて大勢で一緒に行う身体表現と定義した。けれど仲道さんの演奏は「踊り」が強調されるのではなく、思索的な営みがより感じられるむしろ端正な演奏で、感情を強く揺さぶるストレートな訴えは少なかった。
休憩後は舞曲の名を冠した曲が並んだ。こちらは、それぞれの曲に作曲家が刻印した多彩でかつ深いメッセージが伝わり、強く引きつけられた。鬼火が不気味に飛び回り、刹那的な感情がどっと押し寄せた「メフィストワルツ」に続いて演奏されたラヴェルの「優雅で感傷的なワルツ」では、特別な感銘を受けた。
仲道さんは、この作品のバレエ版のためにラヴェル自身が書いた台本を、1曲ごとに朗読してから演奏するスタイルを取った。この作品から、こんなに深くて複雑な人間模様が伝わって来たのは初めてだった。それは朗読の効果とともに、仲道さんがラヴェルの書いた台本から紐解いた、心の中を覗き込んだような作品からの深いメッセージを、演奏として体現したからであろう。台本の最後に出てくる一輪の「赤いバラ」を持って退場する演出も素敵だった。
次に演奏されたショパンの2つのワルツからは、ショパンの底知れない心の闇が垣間見られた。アンコールピースとしてもよく演奏される親しみやすい音楽だが、心の揺れや惑い、ヒタヒタと迫る不安の影が描かれていった。そんな影を纏いながらも、凛とした佇まいを保ってワルツのステップを踏もうとする姿に、リサイタルのテーマの「高雅な踊り」のイメージが重なった。これらのワルツがこれほど哀しく、気高く奏でられるのを聴いたことがあっただろうか。仲道さんの演奏でワルツ全曲を聴きたくなり、更に「踊り」をテーマに選んだこのリサイタルで、マズルカも聴いてみたかった。
プログラム最後の英雄ポロネーズも、勇ましい英雄の姿よりも、芭蕉の「夏草や・・・」の句を思い起こすような、過ぎ去ったものへの郷愁を伝えていた。この曲でいつも気になっていた最後の解決するはずの和音の違和感は、これが実はポロネーズのモチーフの冒頭の和音だったことに初めて気づいたことも収穫だった。
アンコールのラヴェルはスポットライトを浴びたような静謐な佇まいを帯びていた。次のroad to 2027リサイタルシリーズのタイトルは「ラヴェルの狂気」。楽しみだ。
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