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カーチュン・ウォン/日本フィルのマラ5

2025年05月29日 | pocknのコンサート感想録2025
5月25日(日)カーチュン・ウォン指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
第410回名曲コンサート
サントリーホール


【曲目】
1.シベリウス/ヴァイオリン協奏曲ニ短調 Op.47
(アンコール)
♪ クライスラー/レチタティーヴォとスケルツォ~スケルツォ
Vn:服部百音
2.マーラー/交響曲第5番嬰ハ短調


日本フィル・サポーターズクラブの特典の招待枠で聴いた演奏会。プログラム前半は、服部百音をソリストに迎えてシベリウスのコンチェルト。これが良かった!服部のヴァイオリンは、出だしから青白い炎が静かに燃えているようで、澄み切った空気のなかの凛とした佇まいを感じさせた。四肢の末端まで神経が行き届いた優美な舞いを見ているよう。柔らかな中に芯のある音の美しさも格別だ。一音一音に思いが込められ、それが滑らかに連なって語りかけてくる。スマートな身体を柔らかくしならせて弾く視覚的イメージとぴったりの音は、集中力を途切れさすことなく、パワーを秘めて北欧の自然の風景の静謐さとともに、そこで育まれた北欧伝説の神秘性や妖しさも伝わって来るようだった。

カーチュン・ウォン指揮の日フィルも、服部と同様の集中力と熱量でヴァイオリンを盛り立てた。均整の取れた響きで豊かな色彩や濃厚な香りを施し、この作品の深い造形美を丁寧かつドラマチックに描いて行った。

シベリウスでの熱くて濃い演奏を聴いて益々期待が高まった後半のマラ5は、大きなスケールで突進する堂々とした演奏ではあったが、もう一つ心に響いて来るものが欲しかった。カーチュン・ウォン指揮の日フィルは、全体が一丸となって重量感のある響きで力強く進んで行った。アグレッシブで真っ直ぐな突進力と共に感銘深かったのは、日フィルの個々のプレイヤーの表現力の豊かさ。冒頭をはじめ、随所で大活躍のトランペットを演奏したクリストーフォリさんの見事なパフォーマンス、ホルン首席の信末さんのひとつのフレーズのなかに施す細やかな表情をはじめ、プレイヤー達の技量の高さが演奏に深い表情を与えた。

けれど、全体から胸にぐっと迫ってくるものが少なかったのはどうしてだろう。演奏が実直過ぎるせいだろうか?マーラーの音楽にはひねくれたところ、一筋縄では行かないところに焦点を当て、もっと情念に訴えてくる演奏が求められるのかも知れない。それでも、フィナーレの最後の畳みかけはハンパなく凄くて、ここはもう無条件に感動、トリハダ立ちまくりだった。最後だけ感動ものの演奏に出逢っても、それだけでトリハダが立ち、夢中で拍手を送る気分になることは珍しい。ここの前から、それなりのメッセージが蓄積されていたのかも知れない。

終演後の聴衆の盛り上がりは、歴史的名演のときのように熱狂的だった(2楽章の後のブラボーは迷惑)。オケが退場した後も多くの聴衆が熱心に拍手を続け、カーチュンさんはコンマスやホルン奏者らを引き連れてステージに戻って来た。いつでもオケと共に歩む態度も好ましい。またカーチュン・ウォンの指揮する日フィルを聴きたい。

カーチュン・ウォン指揮 日フィル(第757回定期) 2024.1.26 サントリーホール
カーチュン・ウォン指揮 東フィル(武満特集) 2022.3.2 東京オペラシティ

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