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バッハ・コレギウム・ジャパン 「クリスマス・オラトリオ」

2011年12月04日 | pocknのコンサート感想録2011
12月4日(日)鈴木雅明 指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン
東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリアル

【曲目】
◎ バッハ/クリスマス・オラトリオBWV248~Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅵ部

【アンコール】
バッハ/クリスマス・オラトリオ 第1部~終曲コラール

S:ジョアン・ラン/C-Ten:ダミアン・ギヨン/T:櫻田 亮/B:ペーター・コーイ

日本ではハロウィンが過ぎて11月になるや、町なかは早々にクリスマスの装いになる。いくらなんでも早すぎると思っていたが、今日からは、はやアドベント第2週だ。巷で流れるジングルベルを聴くとなんだか急き立てられる気分で心がワサワサするが、アドベントになるまでちゃんと待ってバッハ・コレギウム・ジャパンが届けてくれたクリスマス・オラトリオは、心をウキウキさせ、温かくしてくれた。

BCJの出す音は、オーケストラも合唱も、鳴るべき音が、鳴るべき時に、選び抜かれた音色とニュアンスで奏でられ、歌われるからこそ、これほど心に真っ直ぐに届いてくるのだろう。指揮者の鈴木雅明のもと、こうした仕事を卓越した腕を持って実現するこの音楽集団は、何の迷いも、虚栄も、下心もなく、ただひたすら音楽とテキストに向き合っていることが、出てくる音からだけでなく、プレイヤーや歌い手たちの各々の表情や体の動き、メンバー同士がアンサンブルで交感している様子からも読み取れる。

このオラトリオは、第1部冒頭合唱に代表される希望や喜びを伝える楽曲と、第2部冒頭のシンフォニアやアルトのアリア等、慈しみ深い愛情を表現する楽曲から構成されているが、BCJは前者を、まばゆい光に溢れた濁りのないクリアな響きで嬉々として表現する。そこには見てくれ的な虚飾は廃され、ストレートな喜びが心に響く。後者は、美しいけれどあくまで純朴で、心温まる優しさに溢れている。シンフォニアで羊飼い達を表すオーボエ群のハーモニーから伝わる、スマートとはいえないが、おっかさんのような親密な愛情!そんな両者の特徴が同時に出ていたのが、アンコールでも演奏された第1部終曲コラール楽曲。トランペットが鳴り響く華やかなオケに対して、慈しみの表情に溢れる温かな合唱がなんと心に沁みたことか。

ソリストもみんな良かったが、最も感銘を受けたのは、福音史家で活躍し、第2部と第6部では名アリアを歌ったテノールの櫻田亮。明晰な発音で朗々と響くレチタティーヴォはまさに福音を告げる声。叙事的でありながら、テキストに応じた節度ある感情移入にも好感を持った。2つのアリアも絶品!大好きな第2部のアリア「急げ、ベツレヘムへ」、美しいフルートのオブリガートと相まって喜びの光に包まれ、柔らかくつややかな美声で伝えられるメッセージと、滑らかで淀みのない、正確なピッチで歌われるメリスマに、極上の世界を見た。

カウンターテナーのダミアン・ギヨンの、真っすぐに心の底まで照らしてくるような歌唱には心が洗われる思いがし、バスのペーター・コーイの、深いところから語りかけてくる歌からは真実の魂の言葉を聴く思いがした。ソプラノのジョアン・ランは、大きな表現力の振幅で物語に命を吹き込んでいた。

イエス・キリストの実際の誕生日というより、一年で一番暗い冬至の時期に希望を見い出せるようにクリスマスが12月25日になったという説があるが、BCJが奏でるクリスマスオラトリオは、僕のようなクリスチャンではない者をも温かく包み、希望の光で照らしてくれる。そんなクリスマス本来の意味を伝え、とりわけ思いやりや希望、癒しが求められている今年のクリスマスをどう迎えるべきかを教えてくれたような演奏会だった。

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